カテゴリ「2000年代‏‎」に属する投稿[26件]

原題:Shattered Glass
94分

 若くして売れっ子記者として活躍するスティーブン・グラスは、堅苦しくなりがちな雑誌で面白い記事を量産していた。誰もが尊敬し、編集長や同僚までも彼の記事を期待するほどだったのだが、ある記事がきっかけとなり彼の記事は創作ではないかと疑われてしまう。スティーブンは関係者の情報を渡し、身の潔白を証明するのだが……。

 本作は実際に捏造記事を特大ニュースかのように書いては評価を得ていた記者、スティーブン・グラスを映画化したものである。正直な話、彼は最初から最後まで怪しい人物だ。本人は上手く振る舞っているつもりなのかもしれないが、あまりにも雑で考えなしの阿呆としか言えない。同僚たちはなぜ一度も疑わなかったのだろうか。

 大スクープをどこからともなく入手する天才記者の割にどうも薄っぺらく、そんな人物を無条件に信用する彼らは果たして被害者だろうか。記事を裏付ける調査すらも怠り、たった一人の文章を全面的に信用してしまうというのは職務放棄に他ならない。正しい記事を届けるのが記者の仕事だとすれば、彼らも共犯者といえよう。

 これといった捻りもなく、詰めの甘い嘘吐きが大きな嘘を吐いて失脚するだけの映画になっていた。頼りない新編集長が誰よりも真面目で熱意もあった点については意外性もあったが、それだけである。邦題を見て思う。彼は天才か? むしろ馬鹿ではないか? もっと大胆で知的な内容を想像していたせいか、非常にがっかりした。

〔 643文字 〕 編集

原題:Ocean's Thirteen
122分

 彼らはそれぞれの生活を送っていたのだが、彼らにとって大切なある人物が騙されてしまう。そのせいでその人物は立場を失い、心身も害してしまった。ホテル王のバンクへの報復を誓い、再びオーシャンズが集結する。確固たる地位を確立したバンクを失墜させてついでに巨額な報酬もゲットすべく、オーシャンズは大掛かりな準備を開始するのであった。

 初代は私怨が大きな目的で、続編はゆすられて仕方なく。そして本作では仲間のためにオーシャンズが活躍する。内容としては初代に近く、一つの大きな計画が描かれる。やはりちまちまとした犯罪よりはこちらの方が見応えもあり、盛り上がる。集大成といった作りで良かったものの、これで終わりかと思うと寂しくもあった。

 オーシャンズらしさは十分あり、登場人物の細かい繋がりなんかに興味がなければ11から13を観れば良い気もする。しかしこの二つを観てから12を観るのもそれはそれで微妙なので、多少合わなくとも順番に観ていった方がいいだろう。物足りないだけで全く面白くないわけではなく、それなりに楽しめるのは間違いないのだから。

 ただ本作は様々な人物が出てきた割に前作のキャストが欠けており、あの人たちはどうなったの? 今は何をしてるの? と思いもする。その辺りは打ち切り漫画のようでどうにかして欲しかった。けれども彼らは有名人なわけで、ちょい役で出して高額なギャラを持って行かれるのも困る。それではその人たちの方がオーシャンズ以上の泥棒になってしまうのだ。

 色々とやらかしながらもうまくいくというストーリーはもはや王道を通り越してテンプレではあるが、キャラクターが立っていたり成長が見られたりと様々な目線から楽しめる。といっても初代の焼き増しという印象は拭い去れず、名作にまではなりきれない。だがもしシリーズではなく一本の映画であれば、その時は名作と呼ばれていたのかもしれない。#オーシャンズシリーズ

〔 845文字 〕 編集

原題:Ocean's Twelve
125分

 うまく大金を手にしたオーシャンズ一行ではあったが、何年も経ってからあの時の犯行が彼らによるものだと判明してしまう。盗まれた金は保険でカバーされているにも関わらず、オーナーのベネディクトは盗んだ金と利子を期限内に払えと迫ってきたのだ。しかし大金が残っているはずもなく、再び彼らは組んでこそこそと金を稼ぐ羽目になるのであった。

 前回に比べると泥棒の規模は小さくなっており、大掛かりな作戦もない。雰囲気もよりコメディ感が強まっている上にメタフィクションや大物ゲストの存在もあり、ファンを楽しませるための続編といった印象が強い内容となっている。それ自体はいいのだが、コメディに舵を切ったせいか個々のプロフェッショナル要素が減り、小者集団のようでもあった。

 これぞ金をかけた娯楽映画といった作りなのだが、海外ドラマでシーズン中盤辺りの話を見ている感覚が強く、一体いつになったらその凄い腕を発揮してくれるんだ? と焦らされるのも事実。やっと動き出したかと思えば再び物語は停滞し、ようやく大きな展開を見せるかと思えばあっさりと終わり、実はこんなことをしていましたと事後報告。がっかりである。

 序盤から中盤にかけてのちょっとしたやりとりも、それぞれのキャラクターを楽しむという目的で見れば価値もある。だがこれは犯罪者集団が凄いことをやらかす映画だと思っていたのだ。その大犯罪がダイジェスト形式ではいくらか不満も残る。ファンには良くて、まあ面白い。しかし物足りなさが後に残る。続編を見たくもなるがその程度。あまりオススメはできない。#オーシャンズシリーズ

〔 709文字 〕 編集

原題:Ocean's Eleven
116分

 服役を終えたオーシャンは、仮釈放中にも関わらず大胆かつ緻密な大犯罪を実行しようと考える。しかし一人ではどうしようもないため、次々と様々な犯罪者を集めて虎視眈々と準備を進める。各計画ごとに適した人材を配置し、後は実行の日を待つのみ……だったが予想外のアクシデントも発生してしまった。それでも彼らは半ば強引に予定通り計画を実行に移すのであった。

 かなり古い映画の『オーシャンと十一人の仲間』をリメイクした作品で、この作品自体ももう今となっては二十年前の旧作となる。それゆえにどちらを先に観るべきかと悩みもした。先に本作を見ればオリジナルが物足りなくなるかもしれないし、オリジナルから観ようにも今となっては退屈かもしれない。とまあ悩みに悩んで気付けば数年の月日が経っていた。

 このままだと一生観ないだろうと判断し、とりあえず本作を選んだ。主要なキャストに好きな俳優が集中していたのが決め手になったのである。それで実際に観た感想はというと良かった。それぞれが持ち味を発揮して活躍するのは『メジャーリーグ』のようで、
完璧な犯罪を見せつけられる知能ドラマとは違った方向で楽しめた。

 残念ながらあっと驚く要素は少なく、カメラの使い方なんかも仕掛けにすぐ気付いてしまった。知能犯罪ではあっても、それは大胆だから気付かれにくいというものばかりで、もし被害者連中に一人でも賢い人物がいれば、ここまでスムーズには終われないだろう。爽快感と達成感はあるが、オチは弱い作品だったように思う。

 様々な要素が何回も出てきたせいでインパクトが弱くなってしまった気もするが、十分面白いのは間違いない。ただこういうストーリーだと大事な要素は出し惜しみしてくれた方がいい。これまた古いが『スティング』を観た時はしてやられたと感心したものである。とはいえ今から続編が楽しみで、明日には観てしまいそうなほどだ。はてどうしたものか……。#オーシャンズシリーズ

〔 850文字 〕 編集

原題:Diary of the Dead
95分

 なんとなくロメロ強化週間という感覚で立て続けにロメロ作品ばかり観ているのだが、こちらはなんとドキュメンタリータッチ。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト 』に『テイキング・オブ・デボラ・ローガン 』と私のレビューでは迷作ばかりの表現手法となっている。突如発生したゾンビと人間の愚かさ。毎度お馴染みのテーマがこれまでとは異なる描写で楽しめるようになっていた。

 カメラ越しに化け物と対峙する映画といえば『REC /レック』辺りが目立つだろうか。あちらはカメラを効果的に使っていて、続編では妙なことになってもいたがカメラとホラーの組み合わせとしてはよかった。本作はホラーとして楽しめるかどうかは正直微妙で、カメラ越しの映像作品やホラー作品といったカテゴリーで比較すると負けてしまっているように感じた。

 だがそこはロメロ。中弛みしやすいこのジャンルでもゾンビ映画らしさは健在であり、睡魔に襲われてしまう機会は少ない。どうして撮影を続けるのかという理由一つをとっても、彼らの行動原理にそれなりの設定が用意されている。それでいて映画を通して伝えたい核が定まっているおかげで、軸がぶれずに映像作品としてまとまっていた。

 ロメロはきっとこう言いたいのだろう。ゾンビなんかよりも人間の方がよっぽど化け物だと。伝えたいものだけ伝えたって駄目なんだと。真っ先にゾンビの異変を伝える存在が彼らなのは職業からしても自然で、いきなり犠牲になってしまう存在なのも彼らがそういう職種でそういう仕事をしていたからだ。ロメロは糞を捻り出した本人に糞を投げつけたに過ぎない。

 ストーリーは欠けているかもしれないが、このジャンルで妙にストーリーがあってもフィクション要素が強くなってしまう。監督のファンであろうとなかろうと好き嫌いが分かれる映画だろう。出来に不満を抱えて、監督の名前を間違えたまま連呼するレビュアーが現れるのも致し方ない。なにせ本作の題材は恐怖ではない。人間の醜さと愚かさだ。期待のベクトルが違うのである。

 カメラマンの報道精神が嫌いな人もいるだろう。主要キャラが死んでもそこまで感情移入できず、モブの一人が死んだ程度の感覚しか覚えない人もいるはずである。彼らは映画の主演ではあるが、事故現場でスマートフォンのカメラを向ける人々と何ら変わりないのだ。淡々と迎える世紀末を傍観する人類と、それを眺める視聴者。娯楽映画かは悩むところだが、嫌いじゃない映像作品だ。

〔 1067文字 〕 編集

原題:Land of the Dead
93分

 ロメロが随分と久しぶりに撮ったゾンビ映画。当然のように世界はゾンビで溢れているものの、生き残っている人間もそれなりに頑張っている。ある程度の戦力は確保しているのだが、残念なことに人間は油断してしまう生き物なのだ。うっかりピンチになっては死を招き入れるそんな世界で、チョロやライリーといった傭兵たちはそれぞれの目的を達成すべく、己の意思で突き進んでいく。
 構成としては割と単純で、ゾンビのいる世界でも未だに存在する人間社会のいざこざが物語に大きく絡んでくる。各々の力が弱ければ、ゾンビという共通の敵だけを相手にしたのかもしれない。ただそれでは物語の深みもなく、退屈なシーンばかりになるだろう。ゾンビが居ようと居まいと人間は人間で、自分勝手な生き物。ロメロは毎回そんなことを伝えてきている気がする。
 主役の一人であるジョン・レグイザモは『ER緊急救命室』のクレメンテ、サイモン・ベイカーはといえば『THE MENTALIST メンタリストの捜査ファイル』のジェーンと個人的に好きな海外ドラマで印象に残っているキャストだったのが印象的だ。といってもそれは本編とは何の関わりもなく、もし彼らのファンでゾンビ映画を普段観ない人なら楽しめるだろうという程度だ。
 ホラーやゾンビ映画としては十分満足出来るだろうし、ロメロっぽさも感じられる。だが新鮮味はそこまでなかった。よくある映画にロメロの味付けが加わった程度であり、彼のゾンビ映画を観たいというファン向けの作品に終わっていた。ロメロ作品にありがちな力で引き裂かれるシーンなんかは特にそうだと思う。
 映画としての面白さはある。様々な要素で楽しめるのも確かだ。だがもう一捻り何かが欲しかった。

〔 757文字 〕 編集

原題:Get Smart
110分

 スパイ組織で働くマックスウェルは優秀な分析官だ。彼はサポートとして欠かせない存在で頼りにもされているが、現場で活躍するエージェントへの憧れを持っていた。その為の昇格試験も受けており、ようやく昇格試験で受かったのだが分析官として優秀すぎたせいで昇格が見送られてしまう。ところがとある事情から急遽エージェントとして現場に出ることとなり……。

 新米スパイが活躍する映画といえば『SPY/スパイ 』がある。あちらのスーザンは見た目からしてスパイっぽくないが、こちらのスパイ(マックス)は見た目だけなら007シリーズのジェームズ・ボンド役に居そうな雰囲気はある。元々太っていたせいで昇格試験の実技で躓いていた辺り、太ったまま機敏に動けるスーザンの方が実力は上かもしれない。

 主演のスティーヴ・カレルも魅力的ではあるが、相棒でヒロインを演じるアン・ハサウェイはもっと魅力的だ。スパイとしての活躍ぶりにはもちろん、その美貌にも目を奪われる。特に潜入任務での外見は髪型から服装に至るまで何もかもが自分好みで、珍しく何度かシーンを巻き戻してしまった。これからもそのシーンだけは何度か見返してしまいそうなくらいである。

 肝心の内容もコメディ要素の強いスパイ映画ということで、所々下ネタなんかも挟みながらちょっとした笑いとアクションを楽しめるのがいい。これといった捻りはないものの、スパイ映画に求めるギミックや裏切りといったものは十分に含まれており、アン・ハサウェイとスパイ映画が楽しみたい人には良いだろう。他の人はどうだか知らないが、私にとってはバランスの良い作品だった。

〔 712文字 〕 編集

原題:Snatch
104分

 あるところでは鮮やかな手口で見事に犯罪をこなす強盗団が居た。またあるところでは素人集団の強盗団がやらかしていた。そしてまた別のところでは恐ろしく強いボクサーがボクシングをしていた。様々な連中が絡み合い、それぞれが自身の目的を果たすために協力し、裏切る。とてつもなくでかいダイヤモンドは血生臭い世界で生きる彼らの世界を映し出す。

 各キャラクターの名前を覚えきる前に気付けば終わっていたような映画だった。こういう映画が好きだという人の気持ちも分かる。だが私には合わなかった。面白い面白くないという話ではなく、2クールのアニメを総集編として再編集したような感覚が強かったのである。それも緩急が極端で、そこに時間を割いてそこは短く済ませてしまうのかと思ってしまうような場面もあり、スピーディーかつ独特なテンポに馴染めなかったのだ。

 キャストは豪華だしグロさは少ないがスプラッター要素もある。おまけに犯罪やコメディまで付いてくる。私の好きな要素がここまで入っていて、ストーリーの流れやラストも嫌いではないのに合わなかった。自分でも不思議である。群像劇も嫌いではないのに何故だろう。自分にとって魅力的なキャラクターが少なかったのかもしれない。だがその程度で大きく変わるとも思えず、やはり面白いんだろうけど合わなかったの一言に尽きる。

 好きなシーンはどこかと聞かれたらぐだぐだな強盗シーンで、好きなキャラクターを挙げるとしてもそこに居た彼らだろう。もしかすると私はパルプ・フィクションのような映画だと思っていたのかもしれない。だからすんなりと進むストーリー展開が物足りず、彼らが関わり合うことで起きる影響も微々たるものに見えてしまったのだろう。映画通なら好きかもしれないが、単なる映画好きの私としてはなんともいえない映画だった。

〔 785文字 〕 編集

125分

 家族で引っ越し先へと向かう車の中で、千尋は不満げな表情を浮かべていた。人生で初めて貰った花束。それはとても嬉しかったのだが、引っ越しでお別れになってしまうからという理由で貰ったことが不満だったのだ。引っ越したくもなかったのに引っ越す羽目にもなれば、不満を抱えてしまうのも仕方ない。それでいて両親はやけに好奇心旺盛で、ふと目に入った古い建築物に興味を示してしまう。まさかそれが冒険の始まりになるとも知らずに……。

 これまた少し前にあった、大勢の人が観ている割に観ていなかった映画。様々なメディアで何度も目にしている人も多いだろうが、それでもネタバレに配慮したレビューをする。ついでに評価も先に書いておこう。名作だ。好き嫌いはあるだろうが、これを駄作だの迷作だのという人はそう居ないと思う。日本人による日本を舞台にした日本らしいファンタジー。少女の成長と冒険も描かれており、よくできたアニメである。

 作中の登場人物で常識度ランキングのようなものを実施すれば、千尋の両親はきっと下の方に居るだろう。二人はなかなかにクレイジーで自由だ。よくこんな両親から千尋のような子が育ったものだと驚く。といっても千尋がまともかといえば少し疑問も残る。一言で言えば両親は食欲旺盛な豚だ。食材に大人を刺激する香りや味が含まれていたのかもしれないが、それでもまともな大人は無許可で料理に手を出さない。

 そんな両親の食欲だけは継いでしまったのか、千尋も得体の知れないものを食べようとする辺り片鱗がある。よく分からないものを手にして、それはきっとなんだかよく分からないけど良いものだと思える頭も凄まじい。だが千尋は子供である。大人ほど経験もなく、直感を重視してしまうことだってあるだろう。その点を踏まえても団子を喰らい、喰らわせるというパワープレイは両親に負けないクレイジーっぷりだ。

 そして本編はもちろん、サイドストーリーも魅力的だ。素人童貞が初めての風俗で嬢に優しくされて、貢ごうとする。しかしなかなか喜んでもらえずどうしたものかと悩む。ついには他の従業員に当たり散らして嬢にまで怒りをぶつける。しかし嬢は偽りの優しさをみせずに心から向き合う。その結果、素人童貞はオタクには優しいギャルから必要とされて、自分の生き甲斐を見つける。実にいい話だ。これは単なる比喩だが、大体は合っている。

 最後の最後で酷い比喩を書いてしまったが、終始楽しむことが出来た。なんとなく『いのちの名前』はいつどこで流れるんだろうと思っていたら最後まで流れなかったのが残念だが、元々歌詞はないもので作品を彩るテーマソングとのことで納得した。個人的には『いつも何度でも』よりも好きなだけに勿体ないと思いもしたが、随所でこちらが流れても違和感が強そうだ。今さらだが、観ていない人には是非観て欲しい作品である。

〔 1201文字 〕 編集

原題:The Amityville Horror
90分

 どこかから聞こえる声に導かれて、その男は自宅で家族を惨殺してしまう。それから月日が流れ、事件現場となった豪邸をある一家が購入する。住み始めた直後から不思議な現象は起きていたが、ジョージとキャシーは現実に目を背けながら新たな生活を送っていた。しかし狂気はじわじわとジョージの心を蝕んでいくのであった……。

 1979年に公開された作品のリメイクであり、実際に起きた殺人事件を基にしている。といっても実際はここまでオカルティックな出来事はなかったらしく、そういうことにしたかった殺人鬼や監督の思惑でなんでもありなホラーに仕上がっている。ホラー映画だからと受け入れれば気にもならないが、これで現実がどうのと言われたら興ざめだ。

 ホラー映画に必要なものが意表を突いた演出やスプラッター要素に未知の恐怖だとしたら、この映画は一定値の評価を得るだろう。だがそれまでだ。終盤の展開は妙に急ぎ足で、急に映画のエンタメ要素を見せつけられるのもよく意味がわからない。静かに足下から静かに歩み寄るホラーなのか、ひたすらドッキリで驚かせるホラーなのか。監督は一体どういう映画にしたかったのか。私には理解できなかった。

 ホラーにエロは付き物だが、本作におけるエロ要員と思われるベビーシッターのリサもすぐに居なくなってしまう。その家は何かおかしいと説明する役割と、実際におかしいんだと伝える役割としては価値もあったが、彼女である必要はなかった。監督がおねショタのようなものを撮りたかっただけじゃないかと勘ぐってしまうほどだ。もっと扇情的なシーンを入れるか、いっそ出さないでほしかった。

 静かなままぞっとする映画で終わらせるか、中盤からあの激しいシーンの連続にしていれば佳作にもなったかもしれない。ところがそうはいかなかった。途中から監督を交代したかのような変化に戸惑うばかりで、ジョージの葛藤は説明不足だわピンチらしいピンチは少ないわで物足りなかった。こういう映画を作れば客は満足でしょ? という驕りで作られたかのような感覚もあり、消化不良の一言に尽きる。

〔 909文字 〕 編集

原題:A.I. Artificial Intelligence
146分

 未来の世界ではロボットが一般的となり、社会に溶け込んでいた。ある製造会社で働く家庭にも最新の少年型ロボットが送られることになり、その夫婦は戸惑いつつも彼――デイビットを受け入れる。しかし本当の息子が不治の病から快復し、お互いに母であるモニカの愛情を欲するようになる。より人間らしさを追求した結果の行動ではあったが、人間らしくなるにつれてトラブルにも巻き込まれやすくなり、棄てられてしまうのだった。

 人間となって人間のように愛されたいロボットがどうやったら人間になれるのかと考え、行動する。ロボットを題材として扱う作品としては普遍的なテーマではあるが、退屈でありきたりな展開はそう多くない。眠たくなるようなシーンは序盤程度で、人によっては試練のようにも思えるだろう。けれども序盤のシーンを乗り越えれば後は目まぐるしく移り変わる映像や展開を楽しめる。

 キューブリックらしい内容は個人的にも嬉しいのだが、監督はスピルバーグ。だからか所々の表現はマイルドになっている気もするし、映像の美しさも若干物足りなく感じる。映像も演出も悪くない。名作だと断言もできる。だが違う。私が求めているのはキューブリックが撮ったA.I.だった。しかし彼じゃなかったからこそ、多くの人から好かれる映画にもなれたのだろう。彼の才能を知らしめる作品としての価値は高い。

 登場人物自体はそれなりなものの、主要人物は少ない。セクシーでキュートなジュード・ロウが演じるジゴロ・ジョーが目立つせいか、登場人物(どちらも人間ではないが)は2人だけだったんじゃないかという気さえする。それでも飽きずに見ていられるのは監督の実力だろう。キューブリックじゃないのは残念だが、代わりに監督をしたのがスピルバーグで良かったと言える。愛について思うところがある人にぜひ一度観て欲しい。

〔 814文字 〕 編集

原題:El laberinto del fauno
119分

 軍人に囲まれてどこかへ向かう少女と身重の母。そんな状態で荒れた道を進んだせいだろう。母は気分を悪くして車を止めさせる。少女――オフェリアは車中で夢見がちな本を母から馬鹿にされたこともあり、車を降りた後も不満げに辺りを見回していた。そこで足元にあるものに気付き、それをある場所へと戻した。すると妙に大きく存在感のある虫が現れ、オフェリアは驚く。しかしその場では特に何も起こらず、再び車へと戻り目的地へと向かうのであった……。

 正直に話すと私はファンタジーをあまり観ない。別に嫌いではないのだが、他に観たい映画があればそちらを優先してしまうのだ。それというのもどちらかといえば本作の母親に近く、あらゆるものを空想よりも現実を重視して判断してしまうせいである。ゲームだと気にせず買うが、映画は2時間程度の時間に全力を注いだ究極の作り物だと考えており、ファンタジー映画は作り物の中の作り物という感情を抱いてしまうのである。

 ただの偏見には違いないが、そんな私でもふとファンタジーに興味を抱く瞬間はある。美しい映像や魅力的なキャラクター。そして凄惨な表現。本作にはその要素が全て含まれていた。3DCGがお粗末(時代を考えれば仕方ないのかもしれないが)なのは気になるが、全体的に好みではあった。ただ、それでも名作とは言えなかった。オフェリアの扱いがどうもご都合主義というか、演出にしても説明不足な印象を受けたからだ。

 彼女の気力や豪胆な性格は場面によって変わっているように見える上に、ピンチを招いてもよく分からないチャンスを与えられる。作中屈指の悪人についてもそうだ。彼は警戒心があるのかないのか。短いシーンで変化に気付き、何も怪しまずに手を伸ばす。よくそれまで生きながらえてきたものだと感心する。尊敬はできないが。

 内戦だのダーク・ファンタジーだのと作風やテーマ、表現のせいで単なるファンタジー好きにはオススメできないが、普段から血にまみれた作品を観ている層にはオススメできる。その傷で断面も生々しいのになんで血が止まってんだ、針くらいで急にガーゼを染めるほどに出血するのは何故だ! と突っ込みたくなるシーンもあるが、十分面白い映画だった。細かいことは考えず、映像に酔いしれよう。

〔 986文字 〕 編集

原題:Yes Man
104分

 自ら退屈な日々を選択するかのようにノーと言い続けたカールが怪しいセミナーに参加し、今度はなんでもかんでもイエスと言うようになる。たったそれだけで人生は大きく変わり、様々なチャンスに恵まれる。しかしいつまで経ってもそれで通用するとは限らず、カールはイエスが引き金になってピンチも迎えてしまい……。

 ノーと言えない日本人という表現がある。これは心優しいのか自分の意思というものがないのか、知らず知らずにイエスマンになっている日本人の国民性を現したものだ。ノーと言える外国人が日本人さながらにイエスと言えばどうなるか。その模様を描いたのがこの映画だろう。彼の場合は極端だが、まあこんなものかもしれない。

 率直な感想としては、こんな展開あり得ない。しかし本当にそうだろうか。自分の常識というものに囚われてはいないか。あり得ないとは言ったが、どれも不可能というほどではなかった。運良く偶然が重なれば昇進もするだろうし、運悪く偶然が重なれば警察に睨まれることだってあるだろう。これは一つの可能性を描いた映画なのだ。

 人生が失敗続きで何もかも上手くいかない。何の意味も見出せない日々を過ごしていれば死にたくもなるだろう。そんな人生を変える切っ掛けがカールにとってのイエスだった。言葉一つ、行動一つ変えてみれば世界が変わる。怪しいセミナーじみてはきたが、そういう人生の変え方について教えてくれるのが本作である。

 人生が上手くいっている人からすれば、本作は退屈な映画にもなりえる。なにせ退屈な人生からようやく抜け出して、これから面白くなっていくというところで映画は終わってしまうのだから。何か思うところがあって考え方を変えたいという人にはいいだろう。良い作品だが、打ち切りのような印象もあるのが少し残念なところだ。

〔 795文字 〕 編集

原題:The Hangover
108分

 結婚式を控えた男とその友人たち。彼らは独身最後の夜を楽しむためにラスベガスでバチェラー・パーティーを行う。パーティーは大いに盛り上がり、素晴らしいひとときを過ごした……のかどうかも分からぬままに夜が明けると、そこに花婿の姿はなかった。何があったのか考えようにも部屋の中は荒れ放題。トイレには虎が居るわ赤ちゃんが泣いているわで何が何だか分からない。謎と赤子を抱えたまま、彼らは花婿を探すのだった。

 二日酔いで登場人物たちの記憶ははっきりしないまま、一体何があったのかをひたすら調べ回る。終始それだけの映画である。記憶を探る映画といえば何らかのサスペンスやミステリーを想像してしまいがちだが、この映画にそんなものはない。ふざけた大人が暴れ回るだけだ。下ネタに抵抗がなければ気楽に楽しめるコメディ映画で、それ以上でもそれ以下でもない。ピンチを迎えてもあっさり解決するからはらはらもしない。

 息を呑みながらこれからどうなるんだろう、という楽しみ方を求めている人には全く薦められないどころか止めておけとも言いたくなる。身も蓋もない言い方をすればこの映画に中身なんてものはほぼ無い。どうしようもない大人と下ネタなんてものはそれこそ酒の席でのネタにしかならないものだ。しかし彼らは本気だ。本当にどうしようもなく、だらしないながらも真剣に記憶と花婿を手に入れるべく奮闘する。

 娯楽映画を観たい。B級映画を観たい。これはそんな軽い気持ちで見てはいけない映画だ。私は何も考えずに観てしまったが、この作品を心から楽しんでみたい場合は下準備が必要だろう。まず酒を用意する。ついでに軽食もあればそれも。後は酔っ払う手前まで酒を呑んでから映画を観る。それだけで彼らと同化した気分になれるだろう。素面で観てもいいが、映画に強い拘りを持つ人は止めておいた方がいい。悪酔いするだけだ。#[ハングオーバー!シリーズ]

〔 845文字 〕 編集

原題:The Terminal
129分

 ある目的のためにビクターはクラコウジアからアメリカへとやってきた。しかし本人は何も悪いことをしていないにも関わらず、国の問題でパスポートとビザが無効になってしまう。犯罪行為はしていないのだから逮捕する理由はないが、かといって過剰な特別扱いをしてやる義理もない。彼は少しばかりの優しさと企みによって空港の中での自由を手にするのだが……ビクターと彼を取り巻く問題はそう簡単には解決しないのだった。

 目覚めたら大人になっていたり海老を捕ったりボールに話しかけたり するトム・ハンクスが空港に閉じ込められてしまうという物語。どうしてこの人はこうも変わった人生を歩みがちなのだろうか。普通ではあり得ない運命を辿りそうな顔をしているのか、彼の表情や演技が普通ではないのか。はたまた起用する者が変人ばかりなのか。どの映画も彼はいつも通りで、何故かそれがしっくりくる。不思議だなあ。

 空港の中で一体何が出来るのか……という不安はそこまでない。空港の中で服も買えるし飲食だって可能だ。ただ住所未定だと仕事を探すのに一苦労する。仕事がなければ金もなく、金がなければ腹を満たすことだってできない。モラルがなければここで盗みを働くか、いっそのこと空港を出てしまうだろう。しかしビクターはそんなことをせずに金を稼ぐ。金を稼げずとも人柄のおかげで救われる。それだけ彼は魅力的なのだ。

 空港から出られない。その言葉だけで脱獄を想像し、『ショーシャンクの空に 』や『プリズン・ブレイク』のような地味な脱出から頭を使った手まであれこれ想像をしてしまう人は居ないとは思うが、そんな展開を待っていても描かれるのはビクターと彼らを取り巻く人達の人生模様でしかない。人々からすれば交通機関として活用する場所の一つでしかなくとも、そこで働く者や暮らす者にしてみたら人生の一部だ。

 彼らは空港で笑って泣き、飛行機を乗り継いで別の目的地へと向かうようにそれぞれの人生を進んでいく。空港で何ヶ月も足止めを食らうことがあったとしても、いつかはきっと前へと踏み出す機会を得られるのだ。諦めない心と受け入れる意思。それさえあれば人生だってなんとかなるのだろう。無人島も空港もそこで住みたいとは思わないが、ビクターのように人生を満喫してみたいものである。

〔 985文字 〕 編集

原題:장화, 홍련
115分

 スミとスヨンの姉妹が家に着いたところから物語は始まる。継母のウンジュは冗談交じりに美しく優しく接するのだが、何が気に入らないのか彼女らは殆ど無視ともいえる行動をとってしまう。当然ウンジュは気を悪くするが、それでも2人にあたろうとはせずに優しく振る舞う。どうして彼女は嫌われているのか。再婚が気に入らないのか。そんな謎を残したまま、家の中では原因不明の怪奇現象が起こり始めるのだった。

 それまでと違った環境に怪奇現象。ここまで聞くとトビー・フーパー監督の『ポルターガイスト』を想像しそうなものだが、あそこまでおかしな出来事はそう多くない。序盤では継母との確執や怪奇現象が目立ってはいるが、徐々に恐怖の質が変化していく。インパクトのある見た目や演出で驚かすホラーはなりを潜め、その家と姉妹の抱える闇がその世界を黒く塗り潰していくのだ。

 新しい家族が増えるともなれば反発する気持ちもあるだろう。しかし彼女はどうしてこうも毛嫌いするのか。彼女が何故箪笥を嫌うのか。そういった疑問が膨らむにつれて映画も物語の核へと踏み込んでいく。かなり内容は脚色されているらしいが、元々は古典的な怪談だという本作。怪談というからにはそれなりの恐ろしさや悍ましさを期待してはいたが、本作はその期待を見事に裏切ってくれた。

 いざ見終わってみれば仕組みは単純でかなり分かりやすい構造をしている。強いて言えば作中では部外者に当たる夫婦が見たものは何だったのか、終盤で目にする物語の起点とも言える箪笥の中身は本物だったのかという疑問は残る。しかしこれはホラーである。ミステリーやサスペンスではない。ある程度の整合性があれば謎を残していても許される。ラストカットは止めなくてよかった気もするが、あれはあれで不気味さや後悔といったものを演出しているのだろう。だが間違いなく丁寧に作り込まれた良い映画だった。

〔 809文字 〕 編集

原題:Cast Away
144分

 人一倍仕事熱心なチャック・ノーランドは誰よりも動き回り、誰よりも生産性の向上に努めている。荷物が届くまでの時間がどれくらいかを伝えるためにカウントしたままタイマーを送ってみたり、作業時間を従業員に意識させるべく何度も残り時間を口にする。また彼を必要とする者からの連絡があり、チャックは貨物機に乗って現地へと向かう。しかし貨物機は墜落してしまい、彼は無人島に漂着するのであった。

 無人島で生きていくのは非常に辛い。もちろんそんな経験はないが、無人島なんてものは今の便利さに満ちた世界とは対極にある世界だ。火も水もなく、満足な食料もない。幸いにもチャックが辿り着いた島にはココナッツがあり、海には魚も居た。しかしそれだけだ。よほどの偏食でなければ満たされることはなく、常に同じものしか食べられないとなれば嫌にもなるだろう。それに全てが生では温もりもありゃしない。

 最後まで火が使えないのかといえばそれは嘘になるが、チャックが満足に火を扱えるようになるまでには少し掛かる。その間は生のココナッツジュースと果肉。それと生の魚にカニ程度なものだ。精神的に強くなければとてもじゃないが耐えられそうにない。サバイバル生活をするベア・グリルスやエド・スタフォードの姿を見ているのは楽しいが、一生同じような生活をしろと言われても困るのだ。恐らく一週間保てばいい方だろう。

 サバイバル映画のイメージだと大半の人は結末で救助を想像するものだと思われるが、本作は救助された後のストーリーまで描かれている。よくよく考えれば当然ではあるが、救助されたからといってその人の人生は終わりやしない。死んだと思われていた状況からの生還。そして社会復帰。墜落前までは当たり前にあった人生の続き。その空白期間に積み上げられた自身の知らない時間を痛感させられてしまうのである。

 元々飛行機よりも新幹線に好んで乗る(景色を見ながら食事を楽しみたいだけだが)身としては、こんな事態に巻き込まれることはないだろう。しかし、それでももし飛行機に乗って墜落し、生き延びてしまうようなことがあれば……その時私は生きる努力が出来るだろうか。ボールが転がっていても蹴り飛ばしてしまわないか。命がある有り難みと、時間への考え方。そして意識の変え方。この映画からは色々と学べるだろう。

〔 999文字 〕 編集

原題: Stranger Than Fiction
112分

 どの作品にも欠かせない存在というものはある。誰もが魅了される愛しいヒロイン? 知恵と狡猾さで観客を苛立たせる憎たらしいライバル? 違う。彼らは存在しなくとも成立する。当たり前すぎて忘れてしまうが、作品に欠かせない存在といえば主人公である。主人公が存在しなければ作品には何の展開もない。ただ地球を写しているだけの映像であれば、主人公は地球そのものだろう。机の上にあるだけのボールペンですらも、そのものを捉えていれば主人公である。

 この作品における主人公はハロルド・クリック。規則正しい生活を送る一人の人物でしかない。彼はいつも通りに生活していたが、ある時からふと声が聞こえるようになる。その声が自分の行動を細かく描写することに気付き、彼はこの声の正体を突き止めようとするが……聞きたくも無かった言葉を聞いてしまい、自分の運命から逃れようと奔走する。

 私たちは意思を持ち、自身の選択によって行動するだろう。空腹だと思えば食事を……いや、あえて空腹のままでいるかもしれない。トイレに行きたくても我慢する人だっているだろう。誰がどう選択しようと、それは当人の自由である。勤務中に仕事をしなければ注意もされるだろうが、休暇中に遊んでいようが何も言われない。私たちは人生を送り、道を選び続けるのだ。

 だがもし、自分の行動が誰かの意思によって決められていたら。そう考えるとぞっとしてしまう。なんとなく選んだ珈琲も、誰かがその珈琲を飲むように仕向けたのかもしれない。自分の意思で諦めた道も、本当は諦めなくて良かったのかもしれない。そこに自分の意思はなく、誰かの筋書きで動かされているのだとしたら……そう思うと、何もかもが信じられなくなる。

 本作の主人公は声に気付き、自分の運命を知った。だからこそ自ら運命を切り開こうと今までに無い行動を取り始めた。ナレーションと主人公の行動。同じようなテイストのゲームに『The Stanley Parable』というものがある。こちらはナレーションと違う行動をとると天の声が牙を剥く。本作とは無関係だが、興味があれば是非遊んでみてほしい。

 この感想を読んでいる者も、恐らくは自分の意思で文章に目を通しているのだろう。けれどもそれを保証する者はおらず、確信を抱くのも難しい。今文章を認めている私自身ですら信用は出来ない。考えれば考えるほどに恐ろしくなる、主人公である自分自身の人生。果たしてその人生は誰が描くものなのか。決まり切った人生に疑問を抱いた時、この作品に触れてもらいたい。

〔 1102文字 〕 編集

原題:Exam
101分

 色々と謎が多い企業の就職試験会場には8人の男女が集まっていた。試験監督が口を開き、彼らは試験に備えて集中していくが……いざ試験用紙を捲るとそこには何も書かれていなかった。白紙の試験と制限時間。彼らは試験監督の言葉を振り返り、問題を見つけようとする。ルールは何か。ルールの真意とは。ある受験者がルールの意味を理解したところで物語は動き出す。

 限られた舞台、決まったシチュエーションでの映画はそれなりに存在する。棺桶に閉じ込められて土の中に埋められた男が主役の『リミット』や、電話ボックスを舞台に口先だけでなんとか事態を乗り越えようとする『フォーン・ブース』は個人的にも気に入っている。ただ本作の場合はそれらの作品とも違い、部屋を移動しない『キューブ 』といった方が分かりやすい。

 どうにかして試験に合格し、高額な報酬を手に入れたい。だからこそ仕方なく協力しあうのだが、採用予定の人数はすでに決まっている。お互いの本質を露わにしながらも目的の為に行動し、裏切る。彼らがどういう立場で問題が何なのかといった点は割と分かりやすいが、個性が絡み合って退屈させない作りになっている。人間ドラマファンのみならず、脱出ゲームやひらめきを重視するクイズ番組辺りが好きな方におすすめしたい。

〔 559文字 〕 編集

原題:Identity
90分

 死刑執行の前夜になっての再審議とモーテルでの殺人事件。物語は同時進行で進み、観客は二つの出来事の関連性を見出そうとするだろう。そして関連性を見つけた時、ふと勘違いに気付く。しかし勘違いはそれだけでは済まず……。この作品はサスペンスだが、単に犯人を当てるだけでは終わらない。モーテルに集まった人々の共通点とは何か。何故カウントダウンされていくのか。どうして鍵があるのか、誰なら出来るのか。整合性を意識しすぎず、どうやったらこうなるのか……と考えれば真相に気付けるかもしれない。二転三転と裏をかかれる構成は巧みで、最後のシーンは色々と考えさせられる。ガチガチのミステリーやサスペンスは好まず、普段はファンタジーやクライム映画を観るような方におすすめしたい。

〔 354文字 〕 編集

原題:Mulholland Drive
145分

 殺されそうになった人物が幸いにも交通事故によって助かり、記憶喪失になりながらもなんとか生きながらえて新生活をスタートさせる。冒頭はこんな展開で、どうして殺されかけたのか? この鍵は何だ? と小さな謎が襲いかかる。しかしそれらは小さな謎どころではなく……。どう説明したら良いものか悩む上に、どう解釈したらいいのか正解が分からない作品でもある。夢と現実が入り乱れ、時系列までもがふらふらと彷徨っている構成となっており、見返してみても「多分こうじゃないかなあ?」と思うのが精一杯だろう。考察する趣味が無ければ駄作にもなり得るが、謎解きや女優同士のポルノシーンに興味のある方にはおすすめしたい。

戯言(ネタバレ含む)
 あれやこれやと考察しても記録すらしなければ、それはいつしか記憶の片隅からも消え去ってしまう。それはなんだか寂しく、勿体なくもあるので手短に個人的な追記を残しておく。

 この映画を語る記事を見ると、先述したように夢と現実がキーワードとして登場する。演出の方法からしても、それは間違いないのだろう。しかしそれでは面白くない。というよりも、何もかもを夢と決めつけてしまうのも悔しいのだ。 ジャケットからしてもベティあるいはダイアンが主人公で、彼女の夢と現実がこの物語なのだと言われている。だが、私はあえてカミーラの夢と現実こそがこの物語なのだと思いたい。

 時系列で言えば前半と後半は逆で、夢破れた生活を描いた現実と夢を叶えた世界。一人の田舎娘の哀しい人生を、彼女の視点で描ききったものとなる。そこまでは私も同意しているが、捻くれ者だから納得しない。「これはダイアンを死なせてしまったカミーラの懺悔なのだ!」と断言したい。まあ断言したいだけでこれが正解ですよと言い切るつもりもないのだけれど。

 こじつけではあるものの、そう断言したい理由はいくつかある。まず冒頭のベッド。ここでは誰も写らない。誰かが寝ているだけである。全てのシーンを見た上で改めて見ると、「これは夢の暗示だ。ここで眠っているのはダイアンだ」となる。しかし彼女だと確信を抱かせるだけのものはない(ダンスのシーンからは目を背けつつ……)。

 他にもとある人物とカミーラが唇を重ねるシーン。これは彼女がダイアンのような女性を好んでいるというヒントだと考える。それに死体を見て取り乱したシーンは、かつて愛していた女性の死体を目にしてしまったからこそのパニックだと判断したい。どうも訳が分からなくなってきたので、個人的な解釈に基づく展開を以下に記そう。

 カミーラがダイアンと出会う(その出会い自体は描かれていないものとする)。カミーラはダイアンのことを好んでいたが、本気では無かった。あろうことかカミーラはダイアンを置いて結婚を決意し、目の前で他の子と接吻をしてしまう。そのことにダイアンは酷く傷付き、どうせ結ばれないのならとカミーラの殺害を決意する。

 しかし殺害は失敗(冒頭の事故)してしまい、カミーラは生き延びる。カミーラは記憶を失ってしまったが、最愛の女性とそっくりなベティに惹かれる。彼女との蜜月を堪能しつつも自分の正体が気になり、二人は例の家へと忍び込む。そこはかつてカミーラがダイアンと共に過ごしていた家で、カミーラを殺してしまったと考えていたダイアンは自ら命を絶っていた。

 ダイアンの死体を見たカミーラは全てを思い出し、過去の自分がしでかした振る舞いがフラッシュバック(ダイアンの夢だとされている全てのシーン)する。何もかも思い出してしまったが故にカミーラの頭は後悔に嘖まれるようになり、毎夜悪夢に悩まされることとなる……。

 ……という展開だったらどうだろうか。「じゃあこのシーンは?」「この行動は何の意味があるの?」と疑問を抱く者も居るだろう。しかし口を噤むべきだろう。私は捻くれているだけであり、そこまで深く考察していない。こうだったら面白いかもしれない、という安直な発想のもとで生まれたのがこの解釈である。できれば与太話の一つとして楽しんで欲しい。畳む

〔 1725文字 〕 編集

原題:Taken
93分

 娘を愛する元CIA工作員が圧倒的な力で何とかする爽快アクション。こう書いてしまうとスティーヴン・セガールをイメージしてしまうが、彼ほど圧倒的ではない。しかしたとえ絶望的な状況になっても「こいつなら大丈夫だろ」と思える。アクション映画として、そして主演のリーアム・ニーソンが好きな私からすれば間違いなく迷作。残念ながら評価は割れてしまっているが、続編が二作も出ていることを考えれば好きな人は好きな作品であるに違いない。強いおっさんが好きな人は是非観て欲しい。#[96時間シリーズ]

〔 259文字 〕 編集

原題:La habitación de Fermat
88分

 タイトルと原題の違いで疑問を抱いた方もいると思う。そしてその疑問はきっと正解へと繋がる。こちらの映画はキューブシリーズのようなタイトルだが、全く関係ない。原題を直訳すればフェルマーの部屋で、内容もそのまま。フェルマーに招待された者たちが小中学生レベルのような問題をひたすら解かされるというもの。問題はそこまで難しくもなく、グロもなければキューブらしさのかけらもない。しかしシナリオ自体はそう悪くなく、紅一点のヒロインが気に入れば暇潰しに観るのもいいだろう。

〔 270文字 〕 編集

原題:Cube 2: Hypercube
95分

 キューブの続編だが、正直に言うとこちらは観なくてもいい。キューブの何がよかったかといえば、それは演出とキューブの仕掛けだろう。しかしこちらは演出も手堅くまとまっているだけで面白みに欠ける。キューブの仕掛けもいまいちで、非現実的な要素が加わるのは構わないが、その要素に頼りすぎていた。グロ要素も殆ど無く、むしろこれがキューブを作る為の練習作だったと思いたい。映画として駄作と言い切るほどではない。けれどもキューブを好む層向けの作品とは言いがたい。#キューブシリーズ

〔 265文字 〕 編集

158分

 人類滅亡を描いたパニック映画。マヤ、ノアの箱舟といった言葉でわくわくする人にはちょうどいい映画ではなかろうか。なるべく現実的に、起こりうる展開を描いた作品のようだが私には他の人類滅亡物との違いが今ひとつ分からなかった。すごくきれいですごく壮大。観終わった時の感想はそれだけだった気がする。ただ違いを理解できなかっただけで、映画として面白くなかったかといえばそうではない。十分に楽しめたし、尺が長い割には最後まで視聴できた。もっと様々な知識を持った人からすれば、より素晴らしい映画だと思えるのかもしれない。

〔 264文字 〕 編集

原題: Memento
113分

 新しい記憶が10分程度しか保てない男がある男を殺す。何故その男を殺したのかという経緯を逆さまの時系列から辿り、徐々に謎が解けていく構成は実に見事。主人公のような状況に至りたいとまでは思わないが、記憶を消してもう一度最初から観てみたいとは思えた。伏線やミスリードを学べる良い映画だ。

〔 164文字 〕 編集

■全文検索:

複合検索窓に切り替える

■複合検索:

  • 投稿者名:
  • 投稿年月:
  • #タグ:
  • カテゴリ:
  • 出力順序:

■説明

 洋画中心。最低でも週に一本はレビューするつもりで定期更新。

 レビューを書き始める前に観た映画の一部リストはこちら。好みの参考にどうぞ。趣味が合う人は名作を、趣味が合わない人は迷作をチェックすると好きな映画が見つかるかもしれません。


にほんブログ村 映画ブログへ

編集

■最近の投稿:

▼現在の表示条件での投稿総数:

26件