2021年10月の投稿[111件]

原題:Shattered Glass
94分

 若くして売れっ子記者として活躍するスティーブン・グラスは、堅苦しくなりがちな雑誌で面白い記事を量産していた。誰もが尊敬し、編集長や同僚までも彼の記事を期待するほどだったのだが、ある記事がきっかけとなり彼の記事は創作ではないかと疑われてしまう。スティーブンは関係者の情報を渡し、身の潔白を証明するのだが……。

 本作は実際に捏造記事を特大ニュースかのように書いては評価を得ていた記者、スティーブン・グラスを映画化したものである。正直な話、彼は最初から最後まで怪しい人物だ。本人は上手く振る舞っているつもりなのかもしれないが、あまりにも雑で考えなしの阿呆としか言えない。同僚たちはなぜ一度も疑わなかったのだろうか。

 大スクープをどこからともなく入手する天才記者の割にどうも薄っぺらく、そんな人物を無条件に信用する彼らは果たして被害者だろうか。記事を裏付ける調査すらも怠り、たった一人の文章を全面的に信用してしまうというのは職務放棄に他ならない。正しい記事を届けるのが記者の仕事だとすれば、彼らも共犯者といえよう。

 これといった捻りもなく、詰めの甘い嘘吐きが大きな嘘を吐いて失脚するだけの映画になっていた。頼りない新編集長が誰よりも真面目で熱意もあった点については意外性もあったが、それだけである。邦題を見て思う。彼は天才か? むしろ馬鹿ではないか? もっと大胆で知的な内容を想像していたせいか、非常にがっかりした。

〔 643文字 〕 編集

原題:Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House
103分

 アメリカで起こった政治的な大スキャンダル、ウォーターゲート事件を題材にした映画。民主党本部での盗聴未遂。その犯人が大統領再選委員会の関係者というだけでも公にはしにくい内容だが、そこに数々の捜査妨害までが加わり、大物の内部告発者まで出てくる。結果的に大統領の辞任といった大きな影響も与えたもので、その展開自体は創作物以上の内容とも言えるだろう。

 さて肝心の映画としてはどうか。リーアム・ニーソンが主演だからと観てみたが、面白いが退屈だった。相反する言葉が並んでいるように見えるだろう。しかし他に表現のしようがないのである。知能犯が活躍する犯罪映画の面白さみたいなものはある。じわじわと追い詰めていく推理映画のような楽しみ方もできる。ただひたすらに静かで、落ち着いた雰囲気のまま終わってしまうのだ。

 登場人物が(やっている内容はともかくとして)いい大人ばかりで、表立って拳銃を打っ放したりすることもない。力で解決させることはできず、地道に証拠を集めたら記者を利用して現場で何が起こっているのかを世間に知らしめる。内容としてはその繰り返しで、眠くなるほど退屈ではないが物足りなさを感じる程度には退屈である。

 娯楽映画ではなく伝記映画なのだから、史実と異なる激しいアクションや衝撃的な展開なんてものを期待してはならない。だが同じくリーアム・ニーソンが主演だった『シンドラーのリスト』はもっと長尺で映画としても楽しめた。個性が不足していたのは仕方ないとしても、もっと見せ方で面白くできたんじゃないかと思ってしまう。面白いが退屈。やはりその一言に尽きる。

〔 750文字 〕 編集

原題:Overboard
112分

 豪華な船で自由気ままに生きるレオナルド。彼は働こうともせず快楽のみに時間を費やしていた。ところが清掃員のケイトと出会ったり、うっかり船から落ちてしまったりと偶然が重なって一緒に暮らすことになる。レオナルドは妻を騙るケイトの夫として。ケイトは復讐のためにレオナルドの妻を演じる日々が始まるのだが、共に生活を送る中で二人の心境も変わっていくのであった。

 むかつく男を懲らしめてやる。ついでにこいつが原因で発生した損害もなんとかしてもらおう! という理由で偽装家族生活が始まるという作品。まあ確かにレオナルドはひどい性格をしている。しかしその振る舞いは性格が悪いというよりも、大人になりきれていないというもの。彼は子供のまま成長する機会がなかったのだ。だからといって横暴が許されるわけもないのだが。

 ケイトもケイトで相手が記憶喪失なのをいいことにやりたい放題である。書類を偽造する時点で危険極まりなく、夫だからと奴隷のようにこき使う。子供もケイトに付き合って家族のふりをするのだから恐ろしい。当然ながらレオナルドも不平不満を漏らすが、納得できなくともケイトや子供に手を出そうとはしない。やはり根はそう悪くないのだ。

 さらにレオナルドは人として成長していく。家事なんてしたこともなかった男が料理に目覚め、子供の成長を手助けする。最初は利用してやろうとしか考えていなかったケイトらも次第にレオナルドという男に惹かれ、家族として受け入れていくのだ。基本的にはコメディのノリで進むものの、ストーリー自体はきちんとロマンスであり、ファミリー映画でもあった。

 とはいえケイトとレオナルドの間に婚姻関係なんてものはなく、彼は記憶喪失のままである。記憶喪失のまま幸せに暮らす……なんて展開を想像する者は居ないだろうから書いてしまうが、彼も記憶を取り戻す時がくる。それがいつなのか。彼らの家庭はどうなるのか。展開はある程度読めるとしても、笑えて泣ける非常によくできた好きな映画の一つだ。

〔 867文字 〕 編集

原題:Ocean's Eight
110分

 オーシャンズのリーダーであるダニー・オーシャンには妹が居た。しかし妹のデビーは罠にはめられて刑務所生活。どうにか刑務所を出た彼女は兄のように大胆で大がかりな計画を考え、仲間を増やしていく。しかし狙っている宝石は非常に高価でセキュリティも厳しく、チャンスも少ない。トラブルに見舞われつつもその度に計画を変更し、ついに計画決行の日を迎えるのだった。

 デビーはダニーの妹ということで、どれだけやれるのかという不安はあった。ところが手際の良さやリーダーシップは兄以上で、誰よりもスマートに大きな犯罪をやり遂げていた。尺稼ぎの余計な小さい犯罪もなく、せいぜい仲間たちの腕前を披露するシーンが挟まる程度であり、宝石を奪うという核となるストーリーに集中できたのは非常によかった。

 けれどもデビーは優秀すぎた。リーダーが淡々と計画を成功させてしまう上に、仲間も意識が高い。もしかしたら失敗するんじゃないかという不安もなく、あっさりと終わってしまう。ファンを楽しませる要素としてはせいぜいイエン(オーシャンズシリーズだけで見る秦少波)が出てくる程度で、面白いが薄味の映画になっていた。

 嫌みはないが癖もなく、これまでの作品から感じられたユーモアのようなものも少ない。地方の名物料理を食べやすくローカライズしたような映画で、万人受けする料理に変わった代わりに中毒性がなくなっている。画が華やかで野性味がないのも善し悪しだろう。シリーズファンというよりは、オーシャンズがどんな映画かを知る作品といったところか。まあ悪くはなかった。#オーシャンズシリーズ

〔 704文字 〕 編集

原題:Ocean's Thirteen
122分

 彼らはそれぞれの生活を送っていたのだが、彼らにとって大切なある人物が騙されてしまう。そのせいでその人物は立場を失い、心身も害してしまった。ホテル王のバンクへの報復を誓い、再びオーシャンズが集結する。確固たる地位を確立したバンクを失墜させてついでに巨額な報酬もゲットすべく、オーシャンズは大掛かりな準備を開始するのであった。

 初代は私怨が大きな目的で、続編はゆすられて仕方なく。そして本作では仲間のためにオーシャンズが活躍する。内容としては初代に近く、一つの大きな計画が描かれる。やはりちまちまとした犯罪よりはこちらの方が見応えもあり、盛り上がる。集大成といった作りで良かったものの、これで終わりかと思うと寂しくもあった。

 オーシャンズらしさは十分あり、登場人物の細かい繋がりなんかに興味がなければ11から13を観れば良い気もする。しかしこの二つを観てから12を観るのもそれはそれで微妙なので、多少合わなくとも順番に観ていった方がいいだろう。物足りないだけで全く面白くないわけではなく、それなりに楽しめるのは間違いないのだから。

 ただ本作は様々な人物が出てきた割に前作のキャストが欠けており、あの人たちはどうなったの? 今は何をしてるの? と思いもする。その辺りは打ち切り漫画のようでどうにかして欲しかった。けれども彼らは有名人なわけで、ちょい役で出して高額なギャラを持って行かれるのも困る。それではその人たちの方がオーシャンズ以上の泥棒になってしまうのだ。

 色々とやらかしながらもうまくいくというストーリーはもはや王道を通り越してテンプレではあるが、キャラクターが立っていたり成長が見られたりと様々な目線から楽しめる。といっても初代の焼き増しという印象は拭い去れず、名作にまではなりきれない。だがもしシリーズではなく一本の映画であれば、その時は名作と呼ばれていたのかもしれない。#オーシャンズシリーズ

〔 845文字 〕 編集

原題:Ocean's Twelve
125分

 うまく大金を手にしたオーシャンズ一行ではあったが、何年も経ってからあの時の犯行が彼らによるものだと判明してしまう。盗まれた金は保険でカバーされているにも関わらず、オーナーのベネディクトは盗んだ金と利子を期限内に払えと迫ってきたのだ。しかし大金が残っているはずもなく、再び彼らは組んでこそこそと金を稼ぐ羽目になるのであった。

 前回に比べると泥棒の規模は小さくなっており、大掛かりな作戦もない。雰囲気もよりコメディ感が強まっている上にメタフィクションや大物ゲストの存在もあり、ファンを楽しませるための続編といった印象が強い内容となっている。それ自体はいいのだが、コメディに舵を切ったせいか個々のプロフェッショナル要素が減り、小者集団のようでもあった。

 これぞ金をかけた娯楽映画といった作りなのだが、海外ドラマでシーズン中盤辺りの話を見ている感覚が強く、一体いつになったらその凄い腕を発揮してくれるんだ? と焦らされるのも事実。やっと動き出したかと思えば再び物語は停滞し、ようやく大きな展開を見せるかと思えばあっさりと終わり、実はこんなことをしていましたと事後報告。がっかりである。

 序盤から中盤にかけてのちょっとしたやりとりも、それぞれのキャラクターを楽しむという目的で見れば価値もある。だがこれは犯罪者集団が凄いことをやらかす映画だと思っていたのだ。その大犯罪がダイジェスト形式ではいくらか不満も残る。ファンには良くて、まあ面白い。しかし物足りなさが後に残る。続編を見たくもなるがその程度。あまりオススメはできない。#オーシャンズシリーズ

〔 709文字 〕 編集

原題:Ocean's Eleven
116分

 服役を終えたオーシャンは、仮釈放中にも関わらず大胆かつ緻密な大犯罪を実行しようと考える。しかし一人ではどうしようもないため、次々と様々な犯罪者を集めて虎視眈々と準備を進める。各計画ごとに適した人材を配置し、後は実行の日を待つのみ……だったが予想外のアクシデントも発生してしまった。それでも彼らは半ば強引に予定通り計画を実行に移すのであった。

 かなり古い映画の『オーシャンと十一人の仲間』をリメイクした作品で、この作品自体ももう今となっては二十年前の旧作となる。それゆえにどちらを先に観るべきかと悩みもした。先に本作を見ればオリジナルが物足りなくなるかもしれないし、オリジナルから観ようにも今となっては退屈かもしれない。とまあ悩みに悩んで気付けば数年の月日が経っていた。

 このままだと一生観ないだろうと判断し、とりあえず本作を選んだ。主要なキャストに好きな俳優が集中していたのが決め手になったのである。それで実際に観た感想はというと良かった。それぞれが持ち味を発揮して活躍するのは『メジャーリーグ』のようで、
完璧な犯罪を見せつけられる知能ドラマとは違った方向で楽しめた。

 残念ながらあっと驚く要素は少なく、カメラの使い方なんかも仕掛けにすぐ気付いてしまった。知能犯罪ではあっても、それは大胆だから気付かれにくいというものばかりで、もし被害者連中に一人でも賢い人物がいれば、ここまでスムーズには終われないだろう。爽快感と達成感はあるが、オチは弱い作品だったように思う。

 様々な要素が何回も出てきたせいでインパクトが弱くなってしまった気もするが、十分面白いのは間違いない。ただこういうストーリーだと大事な要素は出し惜しみしてくれた方がいい。これまた古いが『スティング』を観た時はしてやられたと感心したものである。とはいえ今から続編が楽しみで、明日には観てしまいそうなほどだ。はてどうしたものか……。#オーシャンズシリーズ

〔 850文字 〕 編集

原題:Joker
122分

 アーサーはコメディアンになるという夢を持ち、ピエロの仕事をしていた。しかし若者に襲われてしまい、宣伝用の看板を壊されてしまう。看板を返すようにと上司から言われて説明をしても信用してもらえず、今度は別件でやらかしてしまったせいで仕事を失ってしまった。失うものがなくなったアーサーは再び別の連中から襲われた結果、我を忘れて拳銃を取り出し……。

 『バットマン』シリーズの人気ヴィランであるジョーカーの過去を描いたストーリー……というテイストではあるが、これまでの世界観や設定とは特に関係ない作品。こういう人がこんな扱いを受けたらいつかジョーカーになるんだ、と思いながら観る全くの別物なのである。つまり名前だけ借りた一つの独立作品と考えていいだろう。

 監督はトッド・フィリップスで、『ハングオーバー!シリーズ 』の監督でもある。ひたすらふざけた映画を撮る人かと思いきや、社会的な要素や政治的要素、残酷な描写(これはハングオーバー!でもあったが)もしてしまう多彩な監督だった。ただ本作を観た後だと、じゃああの続編の類いももうちょっと面白くできたんじゃないかと思ってしまう。

 辛い生活に加えて現実と見紛う妄想癖まであり、作中でもどこからが妄想なのか判別が難しく、極端な話をすれば何もかもが妄想なんじゃないかとも考えられる。最初の出来事からしてなかなか捕まらないのが不思議で、あの肉体にしては強すぎると思う場面もあったが、カリギュラ効果がすこぶる元気な映画で意外性こそが本領のような作品でもあった。

 彼は弱者でなければならず、弱者が強者に立ち向かうために最低限の強さと武器が必要になる。それがアーサーなのだろう。日本ではなかなかどうしようもない状況を外的要因で変える異世界転生モノがそこかしこに蔓延っているが、この映画が流行るということはベースをそのままにハリウッドで作り直せば大抵ヒットするんじゃなかろうか。

 小さい突っ込みどころはあるものの、王道で安定した面白い映画だった。

〔 864文字 〕 編集

原題:Skjelvet
106分

 クリスチャンは大災害からどうにか生き延びたのだが、家族とは離れて暮らしていた。あれからもひたすら研究を続ける彼の姿はもはや廃人も同様であり、せっかく娘が来ても予定よりも早く帰そうとしてしまう。救えたはずの命を救えなかったという後悔からの贖罪のつもりなのか、はたまた恐怖か。しかしそんな彼を狙い撃つかのように、今度は大地震が発生するのであった……。

 『THE WAVE ザ・ウェイブ 』の続編ということで今度は少し期待しながら観た。だがそれは失敗だった。色々と力は入っていたものの、映画として見れば微妙だった。微妙だが個人的に名作だった前作の良さが失われているような印象が強い。精神的な問題でパニックになっていたのが前作で、本作は体制的な問題でパニックになっていた。要は災害かつ人災なのだ。

 もしも登場人物が地震大国として様々な想定をしていたら、ここまでの地震が発生する前にある程度避難もできている。ところが彼らは危険を察知する道具を持っていてもきちんと活用しない。何らかの異変があってもそれが地震だとは疑わず、地震を警戒していた者を疑う有様だ。本当に彼らは地震というものを理解しているのだろうか。甚だ疑問である。

 パニックに陥るような状況を迎えて判断を誤るのであればまあいい。冷静なはずの状況で理性を感じさせない判断を繰り返して人々がパニックに陥る……。これでは納得できまい。パニック映画にするべく無能ともとれる行動を繰り返すのはもはやコメディだ。これでは地震に気付いて必死に動き回るクリスチャンの方が滑稽に映る。

 残念な出来になってしまったが、娯楽映画として最低限のレベルには達している。規模はこじんまりとしてはいたものの、映像は前作以上だ。超大作には及ばないが、どこに金を注ぎ込んでいるんだかわからない邦画よりは遙かにいい。だがそれ以外はいまいちだ。彼らの物語は前作で終わらせてしまってもよかったのではないだろうか。

〔 854文字 〕 編集

原題:Survival of the Dead
90分

 『ダイアリー・オブ・ザ・デッド 』の続編らしいということでついでに視聴。続編といっても一部シーンで関わった人たちがその後どう行動したかといった内容で、別に本作から見始めても問題はない。続編というよりもサイドストーリーと言った方がいい気もするが、どんな流れで何が起きたのかという展開を知っておく意味では前作を観ておいた方がいいだろう。

 ロメロのゾンビ作品は三部作にしても続きだなんだとまとめていいのか悩んでしまうもので、本来であれば『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 』から全てのゾンビ作品をシリーズとしてまとめた方がいいのだろう。しかしゾンビの発生した時期を考えると一緒くたにするのも何だか違うなと思ってしまうのだ。だから本作に関してもシリーズとしてはくくらない予定である。

 序盤がある程度お決まりなせいか、のっけからあらすじでもなんでもない文章を書き連ねてしまった。今度はモキュメンタリーではないが、ちょっとした人間同士の対立から始まる。島に住まう者と島を追い出される者の描写から強盗と化した元州兵たち。彼らはどうやってこの世界で生き抜くのか……という映画だと思ったら実はそうでもなかった。

 島を追い出されたパトリックと強盗団のブルーベイカーが主役で、その日を生き抜くという意味ではサバイバルもしているのだが、そこまで苦労している描写もないせいで武器を振り回して自由に生きているように見える。トントン拍子でストーリーも進むため、手軽で画一的なインスタントラーメンのような映画になっていた。

 ラーメンを食べたいという欲求は満たせる。作るのだって簡単で苦労しない。ただお湯を注ぐだけのカップ麺よりは鍋で作るラーメン、もっといえば専門店でじっくり作り込まれたラーメンを食べたい……と考えるのが腹を空かせた客というものではなかろうか。果たしてこの映画はそこまでの味があったのか。まあ微妙なラインだろう。

 終盤のサプライズにしたって、ロメロのファンであれば「まるであのシーンじゃないか!」と思うかもしれない。だがそうでなければそこまでの驚きもないだろう。それどころか「焼き直しじゃねえか!」とネタの使い回しを批難する可能性だってある。確かにゾンビ映画ではあるが、どうせ観るなら『死霊のえじき 』でも観た方がいいかもしれない。

〔 1013文字 〕 編集

原題:Diary of the Dead
95分

 なんとなくロメロ強化週間という感覚で立て続けにロメロ作品ばかり観ているのだが、こちらはなんとドキュメンタリータッチ。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト 』に『テイキング・オブ・デボラ・ローガン 』と私のレビューでは迷作ばかりの表現手法となっている。突如発生したゾンビと人間の愚かさ。毎度お馴染みのテーマがこれまでとは異なる描写で楽しめるようになっていた。

 カメラ越しに化け物と対峙する映画といえば『REC /レック』辺りが目立つだろうか。あちらはカメラを効果的に使っていて、続編では妙なことになってもいたがカメラとホラーの組み合わせとしてはよかった。本作はホラーとして楽しめるかどうかは正直微妙で、カメラ越しの映像作品やホラー作品といったカテゴリーで比較すると負けてしまっているように感じた。

 だがそこはロメロ。中弛みしやすいこのジャンルでもゾンビ映画らしさは健在であり、睡魔に襲われてしまう機会は少ない。どうして撮影を続けるのかという理由一つをとっても、彼らの行動原理にそれなりの設定が用意されている。それでいて映画を通して伝えたい核が定まっているおかげで、軸がぶれずに映像作品としてまとまっていた。

 ロメロはきっとこう言いたいのだろう。ゾンビなんかよりも人間の方がよっぽど化け物だと。伝えたいものだけ伝えたって駄目なんだと。真っ先にゾンビの異変を伝える存在が彼らなのは職業からしても自然で、いきなり犠牲になってしまう存在なのも彼らがそういう職種でそういう仕事をしていたからだ。ロメロは糞を捻り出した本人に糞を投げつけたに過ぎない。

 ストーリーは欠けているかもしれないが、このジャンルで妙にストーリーがあってもフィクション要素が強くなってしまう。監督のファンであろうとなかろうと好き嫌いが分かれる映画だろう。出来に不満を抱えて、監督の名前を間違えたまま連呼するレビュアーが現れるのも致し方ない。なにせ本作の題材は恐怖ではない。人間の醜さと愚かさだ。期待のベクトルが違うのである。

 カメラマンの報道精神が嫌いな人もいるだろう。主要キャラが死んでもそこまで感情移入できず、モブの一人が死んだ程度の感覚しか覚えない人もいるはずである。彼らは映画の主演ではあるが、事故現場でスマートフォンのカメラを向ける人々と何ら変わりないのだ。淡々と迎える世紀末を傍観する人類と、それを眺める視聴者。娯楽映画かは悩むところだが、嫌いじゃない映像作品だ。

〔 1067文字 〕 編集

原題:Land of the Dead
93分

 ロメロが随分と久しぶりに撮ったゾンビ映画。当然のように世界はゾンビで溢れているものの、生き残っている人間もそれなりに頑張っている。ある程度の戦力は確保しているのだが、残念なことに人間は油断してしまう生き物なのだ。うっかりピンチになっては死を招き入れるそんな世界で、チョロやライリーといった傭兵たちはそれぞれの目的を達成すべく、己の意思で突き進んでいく。
 構成としては割と単純で、ゾンビのいる世界でも未だに存在する人間社会のいざこざが物語に大きく絡んでくる。各々の力が弱ければ、ゾンビという共通の敵だけを相手にしたのかもしれない。ただそれでは物語の深みもなく、退屈なシーンばかりになるだろう。ゾンビが居ようと居まいと人間は人間で、自分勝手な生き物。ロメロは毎回そんなことを伝えてきている気がする。
 主役の一人であるジョン・レグイザモは『ER緊急救命室』のクレメンテ、サイモン・ベイカーはといえば『THE MENTALIST メンタリストの捜査ファイル』のジェーンと個人的に好きな海外ドラマで印象に残っているキャストだったのが印象的だ。といってもそれは本編とは何の関わりもなく、もし彼らのファンでゾンビ映画を普段観ない人なら楽しめるだろうという程度だ。
 ホラーやゾンビ映画としては十分満足出来るだろうし、ロメロっぽさも感じられる。だが新鮮味はそこまでなかった。よくある映画にロメロの味付けが加わった程度であり、彼のゾンビ映画を観たいというファン向けの作品に終わっていた。ロメロ作品にありがちな力で引き裂かれるシーンなんかは特にそうだと思う。
 映画としての面白さはある。様々な要素で楽しめるのも確かだ。だがもう一捻り何かが欲しかった。

〔 757文字 〕 編集

原題:Day of the Dead
102分

 数少ない人類はゾンビだらけになってしまった世界で地下の施設に籠もって生きていた。生き残りの人類を捜したところで結果は奮わず、現れるのはゾンビばかり。疲れ切った状態でもまた別の仕事をさせられる上に失敗しては殺されかける。そんな極限状態ではまともな話し合いもできずに互いのストレスだけが増えていく。それでもローガン博士は意味があるのかもわからない研究を続け、サラは頭を抱えていた。

 唯一の女性で比較的まともなサラが振り回される描写が目立ち、ゾンビの脅威そのものは比較的抑えめなままストーリーは進む。とりあえず侵入さえ防いでいればなんとかなるゾンビよりも、互いに共同生活を営んでいる人間の方がよっぽど恐ろしいというのはなんとも皮肉な話だが、今の時代でもゾンビ物でそういう描写は多い。きっと人間こそがレジェンド級の化け物なのだろう。

 だが最初は敵ですらない印象を与えていたゾンビも、徐々にその優れた能力を発揮していく。博士の研究は狂っているようにも見えたが、その研究は実を結んでいたのだ。理性や自我を持たず、視界に入ったものを襲うだけと思われていたゾンビが徐々に学び、過去の記憶から行動する。それは信じられない結果であり、恐ろしく不気味なものでもあった。だからこそゾンビを、そんな研究を続ける博士までもを嫌悪する兵士が出てきてもおかしくないのだ。

 最初は思っていたよりもスプラッター要素が少なくて落胆していたが、ゾンビが暴れ出すとそんな気持ちもなくなった。生きたまま焼かれたり体を裂かれたりと血みどろのシーンには否が応でもテンションが上がる。もしこれが善人寄りの人物であれば嫌な気持ちにもなるのだが、酷い目に遭うのは酷い輩ばかりである。憎たらしい人物が苦しむ度についついゾンビの応援をしたくもなるというものだ。

 ただそんなやつらでも最低限の良心は残っているのか、もしくは兵士としての誇りかは分からないが、唯一の女性で顔立ちも整っているサラを襲わなかったという点については評価できる。それに個人的な好き嫌いで出てきた兵士を全員敵視していたが、とんでもなく酷い人物は一人しかいない。まあ彼がヘイトを集めすぎていた気はするが……ゾンビ三部作の中で一番好きなものはと聞かれたら、私は本作を挙げるだろう。

〔 984文字 〕 編集

原題:El hoyo
94分

 男は目を覚ます。そこには無機質な部屋があり、中央には大きな穴が空いている。その穴は天井と床にあり、上下に存在する部屋にも同様の穴が続いていた。この穴は何だろう。どこまで続くのだろう。そんな疑問を浮かべていたが、奇妙な同居人ははっきりとした答えはくれない。同居人は上層から降りてきた食事を平らげながら男に尋ねる。食べないのか? と。

 謎しかないまま進むストーリーで、主人公のゴレンは警戒心が強く気難しそうな男だが同居人のトリマカシとも割とすんなり仲良くなる。ただそれは親しくなっただけで謎は全く解決していない。謎を明かす鍵も特にないまま進むおかげで、この先どんな展開を迎えるのか、何が目的の施設なのかと想像しながら期待以上に楽しめた。

 全く同じとまでは言わないが、個人的に昔考えた企画で似たようなものがあった。それはここまで階層が細かくはなく上中下のたった三層ではあったものの、一定期間ごとの投票形式で住む階層が入れ替わるというものだった。結局面白く描ききることができずに企画自体が無くなったのだが、こういう人間のいやらしさや本能といったものを描けばよかったのだと痛感させられた。

 しかし本作が完璧だったかと言えばそうではない。結局色々と投げっぱなしだった印象も強く、中にはそういう結末が好きだという者も居る。だが伏線やそれまでの出会いが繋がっていくのは非常に良かっただけに、どうしてもそれら全てをまとめ上げて幕を閉じて欲しかったのだ。限りなく名作に近い佳作。雰囲気は最高だった。

〔 671文字 〕 編集

原題:Sully
96分

 バードストライクによってエンジンが停止してしまった飛行機。乗客を乗せた飛行機で不時着陸を試みたが、高度が低くとても空港までは保たない。機長のサリーは陸路を諦め、ハドソン川への不時着水を試みる。機長の判断はうまくいき、犠牲者を出すこともなく飛行機は不時着する。しかし本当に不時着水をする必要はあったのか。乗客を危険に曝し、結果的に助かっただけではないか。大勢の命を救ったにも関わらず、サリーの判断は疑問視されてしまうのであった……。

 実際に起きた『USエアウェイズ1549便不時着水事故』が元となった映画であり、エンジンが故障に至るまでの流れは非常に速い。本作は飛行機の墜落を描いたパニック映画ではなく、誰よりも冷静に対処した機長の正当性とその成果を描いたドキュメンタリーと言える。B級映画なら15分は引っ張りそうな不時着シーンもあっさりと終わり、ストーリーも彼らの会話ばかりで激しいシーンはほぼない。ひたすら大勢の命を救った英雄の栄誉と苦労の物語が待っている。

 大きな事故の裏側を知ることが出来たという点では価値も高く、人間ドラマとしての面白さもあった。ただ残念ながら想像していたよりも飛行機のシーンが短く、感情移入がなければハラハラ感やドキドキ感もないままで、気付けば責任を問われる場面に立たされてしまっていたような心境だった。そのせいか「どうなるんだろう」という展開の期待も「俺が機長なら絶対に意思を曲げないぞ」と意思を固めるよりも先に終わってしまった。良い映画だが何か物足りない。そんな印象だ。

〔 678文字 〕 編集

原題:Night of the Living Dead
96分

 ある車は墓地へと向かっていた。自動車を走らせながら兄のジョニーは愚痴をこぼし、妹のバーバラはそんな兄に少しうんざりしていた。ジョニーは退屈だったのだろう。彼は花を添えるなり、少し離れたところにいた身なりの汚い男を見てバーバラに「襲ってくるぞ!」とからかい始めた。バーバラは兄の子供じみた失礼な言動を詫びようと男に近づいたのだが、その男は本当にバーバラを襲ってきたのだった。

 せいぜい不審者のような見た目の男に襲われる。ここまでは単なる性犯罪者か殺人鬼といったところだ。しかし彼はどうも正気ではなく、今でいうゾンビだった。他のゾンビはゾンビらしい……というとそれはそれでどうだか分からないが、見た目からして普通じゃないように感じられるものが多い。とはいえ夜中だと分かりにくく、会話ができるかどうかで判断するしかないだろう。

 ヒトの形をした化け物に襲われて逃げたバーバラは他人の家に避難するが、放心状態でまともに会話もできない。偶然出会ったベンは冷静に家を補強しつつもバーバラを気にかけるものの、いざ話し始めると今度はパニックに陥ってぶん殴られてしまう。冷静な男と真逆な女。そんな二人にまた別の人物が加わり、この事態に対処しようとあれやこれやと動き回るのが主軸となる。

 ホラーやパニック物ではありがちなトラブルも盛り込まれており、こいつさえいなければもっとスムーズにいくんじゃないかという展開もある。ほぼ一軒家でストーリーが進み、場所も殆ど変わらないのだが個々の衝突もあってか最後まで観ていられる。この辺りの構成や演出からはロメロが巨匠と呼ばれるだけのものは感じられるだろう。

 本作の次に公開されたゾンビ映画の『ゾンビ 』は既にレビューしているが、ゾンビらしさやゾンビっぽい見た目といったものを重視するのであれば、そちらを観た方がいいだろう。ただゾンビに襲われる恐怖感や無力感、それからオチまでを考慮すれば本作の方が面白い。今となっては色々と出来が悪く感じる部分もあるだろうが、王道のゾンビ映画らしさは堪能できるはずだ。

〔 917文字 〕 編集

原題:Get Smart
110分

 スパイ組織で働くマックスウェルは優秀な分析官だ。彼はサポートとして欠かせない存在で頼りにもされているが、現場で活躍するエージェントへの憧れを持っていた。その為の昇格試験も受けており、ようやく昇格試験で受かったのだが分析官として優秀すぎたせいで昇格が見送られてしまう。ところがとある事情から急遽エージェントとして現場に出ることとなり……。

 新米スパイが活躍する映画といえば『SPY/スパイ 』がある。あちらのスーザンは見た目からしてスパイっぽくないが、こちらのスパイ(マックス)は見た目だけなら007シリーズのジェームズ・ボンド役に居そうな雰囲気はある。元々太っていたせいで昇格試験の実技で躓いていた辺り、太ったまま機敏に動けるスーザンの方が実力は上かもしれない。

 主演のスティーヴ・カレルも魅力的ではあるが、相棒でヒロインを演じるアン・ハサウェイはもっと魅力的だ。スパイとしての活躍ぶりにはもちろん、その美貌にも目を奪われる。特に潜入任務での外見は髪型から服装に至るまで何もかもが自分好みで、珍しく何度かシーンを巻き戻してしまった。これからもそのシーンだけは何度か見返してしまいそうなくらいである。

 肝心の内容もコメディ要素の強いスパイ映画ということで、所々下ネタなんかも挟みながらちょっとした笑いとアクションを楽しめるのがいい。これといった捻りはないものの、スパイ映画に求めるギミックや裏切りといったものは十分に含まれており、アン・ハサウェイとスパイ映画が楽しみたい人には良いだろう。他の人はどうだか知らないが、私にとってはバランスの良い作品だった。

〔 712文字 〕 編集

原題:Winchester
99分

 ウィンチェスター社は銃を製造しており、その銃で大勢の人が命を失っている。ウィンチェスター婦人は霊媒師に話を聞き、怨霊の為に改築を行っていた。改築に改築を重ねるウィンチェスターハウスは継ぎ接ぎだらけの異質な屋敷として大きくなり、怨霊が増えるにつれて奇妙な現象の数まで増していく。だがそんな話を信じるわけもなく、そこに精神科医が送られるのであった……。

 どんな映画を観ても良いところと悪いところを考えて感想を書こうと心掛けている。しかし本作は難しかった。強いて言えば一見すると映像が綺麗。それくらいだ。ストーリーもあるが微妙だ。実在する呪われた屋敷が舞台で、その屋敷といえば改築を繰り返した迷路のような構造が魅力だろう。だがこの映画ではそんな描写はほぼ無く、展開に活かされることもなかった。

 てっきり隠し部屋や隠し通路を使って逃げたり、そこを危険人物が利用して危機を招いたりといったサスペンス寄りの恐怖を想像していたのだ。けれども蓋を開けてみれば中身は期待外れの凡作だった。ホラー要素も精神的に恐ろしいものではなく、急に悪霊が映り込んで驚かすというものばかり。この映画がウィンチェスターハウスである必要はあったのだろうか。

 ホラーは観客を驚かせるものであり説明不足でも許されるという風潮もある。だとしても本作は微妙で、終盤の描写もホラーとしての盛り上がりではなくアクション映画のそれであり、ホラー映画好きとしてもウィンチェスターハウスのファンとしても納得できないだろう。外観の描写もワンパターンで物足りず、誰におすすめしたらいいのかも分からない。他に娯楽がなければ観たらいい。

〔 738文字 〕 編集

原題:Bølgen
105分

 地質学者のクリスチャンは大手石油会社に引き抜かれ、今まで働いていた職場を辞めることとなっていた。しかし勤務最終日のデータがどうもおかしく、少し不安を覚えていた。そして迎えた引っ越しの当日。この日も妙な違和感があり、クリスチャンは岩盤や息子のゲーム画面を見て何かに気付く。慌ててフェリー行きの自動車をUターンさせると、クリスチャンは研究施設で働く仲間たちに岩盤の崩落を告げるのだった。

 ノルウェーは岩盤崩落が起きやすい地域で、本作は実際に起きた津波事故に基づいた映画でもあるらしく、災害の恐怖や迫力は確かに感じられる。天災に備えることができても、人はあまりにも無力だ。生き延びる者がいれば息絶える者もいる。最善策も無策も等しくふるいにかけられる。生死さえも運次第でしかないのである。

 主人公のクリスチャンは違和感を無視してすんなり引っ越してしまうこともできた。それでも彼は災害に備えて動き、大勢の命を救うべく働きかけた。もし彼がデータの異変を気にかけていなければ、もし自動車を降りて声を掛けなければ。強靱な肉体こそないものの、彼は誰もが認めるヒーローに違いない。

 こういった映画では筋肉質な主人公が力業で解決するような場面をよく見るが、クリスチャンは常人でしかない。ホテルウーマンの妻も同じく一般人なはずだが妙に冷静で体力もある。ご都合主義で進める為には彼女らが強くなければ話が成立しないのは分かる。ただ個々の資質に頼りすぎているきらいはあった。

 私にとっては名作だが、リアリティを追求する人やパニック時の人々が見せる冷静さに欠いた行動が理解できないような人にしてみたら微妙だろう。それに贔屓目なしに言えば出来映えとしても少し整ったB級映画といったところだ。ただこういう作品を観て自分はどんな時でも冷静に対処できると思っているような人こそ実際の災害では気をつけた方がいいだろう。

 実際の災害でも本来なら助からないであろう場所を選んで生き延びた者もいれば、冷静に対処してそのまま命を落としてしまう者もいる。現実でヒーローと遭遇する機会などそうそうなく、それぞれが限られた時間で少ない選択肢から生存する確率の高い方法を見つけなければならない。私は緊急時でも彼のように振る舞えるだろうか、と考えさせられる映画ではあった。

〔 1000文字 〕 編集

原題:Отрыв
85分

 浮かれた若者らが集まり、もう営業時間外で稼働していないゴンドラリフトに乗ろうとする。しかし当然ながらそのままでは乗れず、賄賂を渡すことでゴンドラに乗せてもらえることになった。ただ運悪く操縦士はおっちょこちょいだった。賄賂につられてしまったせいでうっかり自身も吊られてしまうこととなり、ゴンドラも止まってしまう。高所で箱に閉じ込められてしまった若者らは救助を待つのだが……。

 割とありきたりなシチュエーションホラーまたはスリラー。ほぼ同様の展開を見せる映画としては2010年公開のフローズンがある。こちらはゴンドラですらなくチェアリフトで、もっと危険度が高い。単純な高低差でいえば本作の方が恐ろしいものの、分厚い鉄板に囲まれていると思えば安心感は段違いだろう。そんな違いはさておき、肝心の内容についてはどちらも微妙だ。良くも悪くもB級映画。娯楽重視の低予算映画でしかなかった。

 登場人物は全員どこかおかしいというか、悪い意味で最近の若者らしい性格をしている。危機感もなく自分勝手な振る舞いに無軌道な言動に行動。そりゃ助からんわと納得してしまうような姿ばかり見せられる。主人公でヒロインのカーチャは美人でウェアから伝わる膨らみにもぐっとくる……が、それだけ。魅力的な外見のよくいる女性。それなのにそこら辺の男性より強いんじゃないかと驚く場面が多い。男性ならまだ少しは納得もできるが……。

 寒がっている女性に上着を貸したり、雪山よりも上空にある高所で指は剥き出しのままでも寒さを微塵も感じていなかったり、腕にロープが巻き付いて数人分の体重が掛かっても少し痛そうな表情で済んだり……とまあ彼女は妙に強く冷静である。ところが割と重要な場面で冷静さを欠いて判断を誤ってしまう。そのせいでせっかくのチャンスを無駄にするわ騒動に発展するわで、都合良く脚本通りに動かされているという印象が強かった。

 この映画はわざわざ観なくともいいだろう。どうせ観るならまだフローズンの方を観た方がいい。映画としての面白さでいえばあちらの方が遥かに上だ。まだリアリティもあり、本作よりは人物のやりとりで苛立つこともないだろう。それでも気になるという方がいれば、カーチャの顔や胸を楽しむ映画だと考えておこう。BGMの使い方やあまり効果的といえないカットに苦痛を感じたら止めておいた方がいい。面白い映画はいくらでもあるのだから。

〔 1029文字 〕 編集

原題:Snatch
104分

 あるところでは鮮やかな手口で見事に犯罪をこなす強盗団が居た。またあるところでは素人集団の強盗団がやらかしていた。そしてまた別のところでは恐ろしく強いボクサーがボクシングをしていた。様々な連中が絡み合い、それぞれが自身の目的を果たすために協力し、裏切る。とてつもなくでかいダイヤモンドは血生臭い世界で生きる彼らの世界を映し出す。

 各キャラクターの名前を覚えきる前に気付けば終わっていたような映画だった。こういう映画が好きだという人の気持ちも分かる。だが私には合わなかった。面白い面白くないという話ではなく、2クールのアニメを総集編として再編集したような感覚が強かったのである。それも緩急が極端で、そこに時間を割いてそこは短く済ませてしまうのかと思ってしまうような場面もあり、スピーディーかつ独特なテンポに馴染めなかったのだ。

 キャストは豪華だしグロさは少ないがスプラッター要素もある。おまけに犯罪やコメディまで付いてくる。私の好きな要素がここまで入っていて、ストーリーの流れやラストも嫌いではないのに合わなかった。自分でも不思議である。群像劇も嫌いではないのに何故だろう。自分にとって魅力的なキャラクターが少なかったのかもしれない。だがその程度で大きく変わるとも思えず、やはり面白いんだろうけど合わなかったの一言に尽きる。

 好きなシーンはどこかと聞かれたらぐだぐだな強盗シーンで、好きなキャラクターを挙げるとしてもそこに居た彼らだろう。もしかすると私はパルプ・フィクションのような映画だと思っていたのかもしれない。だからすんなりと進むストーリー展開が物足りず、彼らが関わり合うことで起きる影響も微々たるものに見えてしまったのだろう。映画通なら好きかもしれないが、単なる映画好きの私としてはなんともいえない映画だった。

〔 785文字 〕 編集

原題:Falling Down
118分

 その日はとても暑い日だった。立ち尽くしているだけで汗が纏わり付いてきそうな蒸し暑さの中、ある男は苛立ちに耐えきれず自動車を降りた。自動車は停車していたが、そこは渋滞の道路。後続で待つ運転手からしたらたまらない。自動車を乗り捨てた男は我関せずといった様子でその場を去り、公衆電話を使う。しかし小銭が尽きてしまい、近くにあった商店で両替を頼む。だが断られてしまい、何かを買えと文句を言われる。それがきっかけとなり、男は怒りを抑えきれずに本能の赴くままに暴走していくのであった……。

 夏は年々蒸し暑くなり、様々な要因が重なって失業者も増えている現代社会を過剰に描いたような本作。主人公のフォスターは短気で暴力的な面のある中年男性だが、言ってしまえばそれだけでしかない。ただのオッサンがぶち切れて暴れ回った結果、とんでもない事件に発展させてしまったに過ぎない。色々と偶然が絡み合ったせいで暴走をエスカレートしてしまったわけで、元を辿れば店員がコーラを安く売ればよかっただけなのである。

 両替に応じるか、コーラを安く売る。たったそれだけのことでバットを振り回す男も拳銃を持ち歩く男も現れずに済んだ。オッサンが家に帰る。その途中で幾つかのトラブルに巻き込まれる。それだけのストーリーなのだが、これが不思議と飽きない。フォスターの怒りに共感してしまうからか、はたまた彼のわらしべ長者ぶりがわくわくするのか。映画とは監督と演出次第でどうとでもなるものなのだと実感させられる作品だ。

 主人公をどう思うかで映画の評価も大きく変わる内容なのは間違いなく、怒りっぽい中年男性の姿をひたすら見ているのは辛いという人もいるだろう。だが安心して欲しい。バーバラ・ハーシーにレイチェル・ティコティンといった美人が画面を賑わせてくれる。ディディ・ファイファーもチャーミングでいいが、彼女の出番はとても短い。暴走するオッサンと美しい女優を見たいと思っている方々を満足させるだけの魅力はある一本だろう。

〔 872文字 〕 編集

125分

 家族で引っ越し先へと向かう車の中で、千尋は不満げな表情を浮かべていた。人生で初めて貰った花束。それはとても嬉しかったのだが、引っ越しでお別れになってしまうからという理由で貰ったことが不満だったのだ。引っ越したくもなかったのに引っ越す羽目にもなれば、不満を抱えてしまうのも仕方ない。それでいて両親はやけに好奇心旺盛で、ふと目に入った古い建築物に興味を示してしまう。まさかそれが冒険の始まりになるとも知らずに……。

 これまた少し前にあった、大勢の人が観ている割に観ていなかった映画。様々なメディアで何度も目にしている人も多いだろうが、それでもネタバレに配慮したレビューをする。ついでに評価も先に書いておこう。名作だ。好き嫌いはあるだろうが、これを駄作だの迷作だのという人はそう居ないと思う。日本人による日本を舞台にした日本らしいファンタジー。少女の成長と冒険も描かれており、よくできたアニメである。

 作中の登場人物で常識度ランキングのようなものを実施すれば、千尋の両親はきっと下の方に居るだろう。二人はなかなかにクレイジーで自由だ。よくこんな両親から千尋のような子が育ったものだと驚く。といっても千尋がまともかといえば少し疑問も残る。一言で言えば両親は食欲旺盛な豚だ。食材に大人を刺激する香りや味が含まれていたのかもしれないが、それでもまともな大人は無許可で料理に手を出さない。

 そんな両親の食欲だけは継いでしまったのか、千尋も得体の知れないものを食べようとする辺り片鱗がある。よく分からないものを手にして、それはきっとなんだかよく分からないけど良いものだと思える頭も凄まじい。だが千尋は子供である。大人ほど経験もなく、直感を重視してしまうことだってあるだろう。その点を踏まえても団子を喰らい、喰らわせるというパワープレイは両親に負けないクレイジーっぷりだ。

 そして本編はもちろん、サイドストーリーも魅力的だ。素人童貞が初めての風俗で嬢に優しくされて、貢ごうとする。しかしなかなか喜んでもらえずどうしたものかと悩む。ついには他の従業員に当たり散らして嬢にまで怒りをぶつける。しかし嬢は偽りの優しさをみせずに心から向き合う。その結果、素人童貞はオタクには優しいギャルから必要とされて、自分の生き甲斐を見つける。実にいい話だ。これは単なる比喩だが、大体は合っている。

 最後の最後で酷い比喩を書いてしまったが、終始楽しむことが出来た。なんとなく『いのちの名前』はいつどこで流れるんだろうと思っていたら最後まで流れなかったのが残念だが、元々歌詞はないもので作品を彩るテーマソングとのことで納得した。個人的には『いつも何度でも』よりも好きなだけに勿体ないと思いもしたが、随所でこちらが流れても違和感が強そうだ。今さらだが、観ていない人には是非観て欲しい作品である。

〔 1201文字 〕 編集

原題:범죄도시
121分

 韓国には元々韓国系ヤクザと警察が程々の距離感を持って存在していた。大きな事件を起こそうものなら遠慮無く逮捕もするが、些細な事件(街中で刃物を振り回したり暴行事件を起こしたり)程度ならそこまでには至らない。しかしそこに中国からのマフィアが加わり、均衡を保っていた都市が血に染まっていく。しかし警察も黙ってはいられない。恐ろしく強いマ・ソクトが頭も力もフルに活用しながら前線に立って意地を見せるのだった。

 韓国映画の強いオッサンといえばもうお馴染みのマ・ドンソクが主演。それだけでも個人的には興味をそそられるが、更にクライム映画ということで期待値はピークに。悪役の見た目がとあるYouTuberに似ているのが気になったものの、パラメータを悪に振ったらこんな感じだろうなという納得もあり、途中からはそこまで意識しなくなっていた。とはいえ見た目が似ているという印象は変わらず、ふとした拍子で現実に戻ってしまっていた。

 ヤクザとマフィアの抗争にちょこちょこ首を挟む警察といったシーンばかりで、警察側の派手なアクションシーンは思いのほか少ない。それでも重要な場面では圧倒的なパワーで悪役を懲らしめるのだから一定の満足感は得られる。しかし知能犯は一切出て来ないせいか、意外な展開というものを楽しむ余地は少ない。騒ぎが起きてからそこに出向き、アクションが始まる。ほぼ全てのシーンがそれで説明が付くのはワンパターンとも言える。

 ただ元々そんな映画になりそうな気がしていたのか、それとも最初からそうしたかったのかは分からないが、本作には所々で観客を笑わせようとするシーンが含まれている。個人的には黙々とラーメンを食べるシーンがシュールで良かったが、硬派な映画を期待していたらがっかりするかもしれない。犯罪メインというよりはアクションに犯罪が付いたような作品で、とりあえず強い主人公が見たいって人にはおすすめの映画だろう。

〔 826文字 〕 編集

原題:Alibi.com
90分

 アリバイドットコム。その名の通りアリバイを作ることを目的に設立された会社である。社長のグレッグは多くの顧客を抱え、その中には有名人までもが含まれていた。しかしある依頼で引き受けた顧客の娘と偶然知り合い、恋に落ちてしまう。後ろめたさもあり契約の破棄を迫るがうまくいかず、自身の経歴も偽ったままアリバイ作りに加担することとなるのだった。

 邦題にヒャッハーと付いているだけで、立て続けにレビューしている作品との関連性はない。同じ監督で同じコメディグループが前面に出ている以上は続編のようなものと言われても仕方ないが、ストーリーの繋がりは一切無い。これまで以上に人を選ぶネタが強化されているのが特徴で、下ネタが合わない人も多いのではないだろうか。

 トラブルに巻き込まれてどうにかするという展開はお馴染みだが、元々アリバイを偽装するような会社だからかグレッグや周りの仲間は割と色々誤魔化す能力に長けている。それ以上に厄介な欠点が足を引っ張りもするせいで結果的に失敗してしまうのはまあ仕方ない。何もかもうまくいってしまえば嘘吐きがただ幸せになるだけなのだから。

 監督の下ネタがちょっと無理だったという人には見せられないが、逆に下ネタが良かったという人には問題なくおすすめできる。構成も勢い任せのヒャッハーな展開ではなく、そのまま時系列通りに進んでいく。下ネタに抵抗がなければフィリップ・ラショー監督に触れる最初の作品にしてもいいだろう。……本当に。下ネタに抵抗がなければ。

 個人的には名作よりの佳作である。ただ迷作扱いされてもおかしくないとは思っている。長尺のコメディを見せられているだけで、ゲームや映画のオマージュなんてものも分かる人には分かる要素でしかなく、ある場所から飛び降りようとするシーンやあるものを振り回すシーンなんかは、興味が無ければ間延びした無駄に長いだけのシーンとなる。

 この監督は映画やアニメ、ゲームといったものを心から愛しているのはよく分かった。そういうものに触れていればより楽しめるという見方も出来れば、理解しているからこそ各々の拘りによって受け入れがたくなるという見方も出来る。当然ながら知らなければその土俵にすら立てない。勧めたいが勧めにくい。実に癖の強い厄介な監督と映画だ。

〔 1012文字 〕 編集

原題:Babysitting 2
93分

 フランクは恋人のソニアといつもの面々でリゾート地へと向かう。目的地にはソニアの父が経営するホテルがあり、彼はそこでソニアにプロボーズをしようと考えていた。ところが再びトラブルに巻き込まれてしまい、ソニアと別行動をしたままフランクらは行方不明になる。何故かホテルの近くにはカメラが落ちており、その映像を検証するのだが……。

 また同じような展開で進む続編。規模は大きくなったものの、残念ながら二番煎じに終わっている。この辺りも『ハングオーバー!シリーズ 』のようで複雑な心境だ。続編だから仕方ないとはいえ、原題の子守も本作では意味が無い。祖母の子守をしているといえばそうだが、そんな表現でいいものかどうか。サブタイトルの方がよかったのでは? とは思う。

 前回は豪邸と遊園地が主な舞台で、本作は南国の島。必然的にヒロインらは薄着にもなるし、水着姿を惜しみなく披露してくれる。サービス要素は増したと言えるが、おかげでB級の感も強まった。B級映画もそれはそれとして楽しむ身で、エロ要素を歓迎する立場としては臨むところではあった。だが映画のアクセントやスパイスとしての力はなかった。

 最後の最後でうまくいっていい話にまとめようとするのもいい。しかしこれでは前作と変わらない。個人的に好きな映画を作れる監督には違いないのだが、コメディに強くとも独創性は欠けるように見える。続編のような扱いを受けている作品も視聴する予定ではあるものの、同じような構成で変わらない展開の作品になっていないか不安である。#[ヒャッハー!シリーズ ]

〔 699文字 〕 編集

原題:Babysitting
85分

 待ちに待った誕生日。パーティーを目前に控えたその日、フランクは社長から声を掛けられる。さて何かと思えば息子の子守を頼みたいと言う。パーティー当日に子供の面倒なんて……とフランクは断ろうとするが、ある約束と引き換えに子守を引き受けるのだった。しかし息子のレミは今時といえば今時な子供で、割と面倒な性格をしていた。更にただでさえ子守で苦労しているフランクの元にパーティーを強行しようとする友人らが迫り……。

 なんらかのトラブルが起こって、それが何だったのかを振り返る。『ハングオーバー!シリーズ 』を思い出す構成ではあるが、あそこまでぶっ飛んではいない。謎解きのようなものもなく、最後まで観てみれば全く違う映画だと分かる。シティーハンター経由でフィリップ・ラショーに興味を持って見たわけだが、妙なタイトルで敬遠せずに観て良かった。人を選ぶシーンは多いものの、エロにしたってエロすぎない。表現の仕方がマイルドなのである。

 登場人物の癖も控えめで、観ていて疲れる人や現実離れしすぎて興醒めしてしまうような人も居ない。もしかしたらこんなこともありえるかもしれない……? と思える範囲で馬鹿をやっているような映画(とはいっても日本人の持つ海外のイメージだけども)で、笑いを取りつつも家族の絆や愛というものを描いてくれるのは凄い。監督は2人居るとは言え、これが監督デビュー作だというのだから恐れ入る。尊敬どころか嫉妬すら覚えるほどだ。

 フランクも途中でやらかしてはいる。しかし元凶は悪乗りが過ぎた友人たちである。なんとかしようともがきつつも意中の人と愛を育みたいフランク。父にもっと構ってもらいたいレミ。物語の鍵となる人物の根がまともで色んな意味で良い性格をしているおかげで、多少妙なことになろうともどこか清々しく、視聴後の爽快感や充実感にも繋がっている。割とおばかでちょっと感動な本作は、ちょうど今のような蒸し暑い時期に観て欲しい。#[ヒャッハー!シリーズ ]

〔 865文字 〕 編集

原題:Nicky Larson et le Parfum de Cupidon
93分

 何でも請け負う優秀なスイーパーの冴羽獠(またはニッキー・ラーソン)は今日もライフルを構え、標的(トレーニング中の女性……の胸)を見つめていた。せっかく一流の腕があっても仕事をしなければ稼ぎもない。そんな状況を何とかする為にも相棒の香(あるいはローラ・マルコーニ)は美女の依頼だと偽って依頼を受ける。簡単に終わる依頼だと思っていたが、そこには同じく一流のファルコンが現れてしまう……。

 シティハンターの大ファンである監督が脚本も主演も担当し、またよく分からない実写化作品が出たと不安視されていた話題作である。しかし本作は作品への愛とリスペクトに満ちており、元の作品を知らずとも楽しめる娯楽映画として仕上がっていた。実写化作品は原作を重視しすぎて現実離れした作品になりすぎてしまったり、原作を軽視しすぎて得体の知れない何かになってしまったりするのだが……本作は実に良かった。

 原作やジャンプ作品、吹き替え版であれば出演声優の知識等があれば笑えるような人を選ぶ小ネタがさり気なく挟まれており、そういった知識がなくとも楽しめる小ネタもある。終始ふざけた雰囲気はあるがシリアスな場面では気にならず、そのシリアスさを利用したシュールな笑いも含まれている。それでいてアクションシーンの迫力も十分でアクション映画としての魅力も強い。これは手放しで面白い映画と断言できる。

 ただまあこれが嫌いだと言う者も居るだろう。元々が古い漫画作品ではあるわけで、今の差別だ権利だのと個々の主張が強い世の中では人を選ぶ表現が多い。女性を性的な対象として見ただけでクレームだろうし、穿った目で見る人からすれば香の扱いは足手まといの役立たずにも見えるだろう。そこには彼なりの愛があるわけだが、そういう人にそんなものは通用しない。それに下ネタというだけで無理な人も居るだろう。

 原作ファンには色眼鏡をへし折ってからとりあえず冒頭だけでも見て欲しい。ファンじゃなくともアクション映画や娯楽映画の良作を探しているのなら最後まで楽しんでもらいたい。実写化作品だからと侮ってはいけない。監督の愛は強い香水でも嗅いでしまったかのように強烈で、この映画を見ればその世界観に惚れ込んでしまうはずだ。

〔 1007文字 〕 編集

原題:Profondo Rosso
126分

 テレパシーが使えるというヘルガ・ウルマンの講演には半信半疑の観衆が集っていたのだが、能力を疑う人らの前で彼女は所持品や名前を見事に言い当てる。もちろん事前に仕込んでいれば誰にでもできるテクニックではあるが、その場に居る者は彼女の力を信用する。しかし講演の途中で彼女の様子がおかしくなり突然妙なことを口走る。それだけで済めば良かったのだが、ヘルガは何者かに殺されてしまうのであった……。

 邦題にサスペリアと付いてはいるが、続編ではない。それどころかサスペリアよりも前に作られている。監督は同じダリオ・アルジェントだが、日本での公開はサスペリアの後だった。沈黙シリーズのように配役と展開で勝手にシリーズ化したものとは少し違うが、監督が同じで先に公開した映画が話題になったからと安直な理由で名付けられたのだから似たようなものではある。

 最初は邦題のせいであまり期待していなかったのだが、サスペリアとは関係なくよくできた映画だという情報も目に入ったことで観てみようと思えた。だがはっきり言って眠かった。サスペリアよりも退屈な印象を受けた。しかし徐々に引き込まれていき、今となっては有名な伏線にも驚かされた。人の視覚や記憶力というものは想像以上に雑な作りで誤魔化されやすいものなのだ。

 凄い映画である。とはいえ眠気を誘う内容なのも事実で、サスペリアでもあったゴブリンの曲が良くも悪くも特徴的。それにピアニストのマークがピアニストである意味はほぼ皆無な上に指の扱いが雑で驚く。凝っているが詰めが甘いとでもいうべきか、その面白さに触れるまでの待ち時間が長いのが難点だ。退屈でも耐えて、何の意味もなさそうな場面までしっかり目を通しながら違和感の正体を考えて楽しもう。

〔 767文字 〕 編集

原題:Suspiria
99分

 バレエの名門校に入学すべくスージーはアメリカからドイツまでやってきた。何故かその地に着いてから妙な感覚や気分の悪さに悩まされており、遂には体調不良で気を失ってしまう。奇怪な事件に奇妙な出来事は連日続き、スージーもさすがに何かおかしいんじゃないかと考える。しかし想像を遥かに超える真相に近付き……。

 ホラーが好きなのに観ていないのか、という声があり本作に目を通した。主題歌とタイトルは知っていても具体的にどんな映画なのかは知らなかったので、余計な知識がないまま色々と想像する機会が得られたのは非常に良かったと思う。けれども不条理が許されるホラーと、トリックや動機が重視されるミステリーやサスペンスの混ざり合った作風は個人的には微妙だった。どちらかに集中して欲しかったのである。

 人が死ぬシーンはどちらでもそれなりに満足できる。ホラーっぽくもあり、誰かが仕組んだトリックのようにも見えるのだ。ただあまりにもあっさり人が死ぬ。その死に呪いであったり儀式であったりと法則性や関連性が色濃く出ていれば、考える楽しみから真相に触れる喜びにも繋がっていた。だが本作にはそれほど深い理由はない。誰かにとって都合が悪いから死ぬ。ただそれだけなのだ。

 ホラーやスプラッター要素を重視して、もっと血を増やすか超常現象のようなものを増やしてくれたらよかった。謎は謎のままにしてくれた方がホラーとしてはぐっとくる。謎が明らかになった瞬間に落胆したのは私だけではないだろう。ジェシカ・ハーパー演じるスージーの魅力が乏しければ途中で諦めていたかもしれない。世間的にはホラーの名作でも、個人的には気合いの入ったB級ホラーだった。

〔 728文字 〕 編集

原題:In the Line of Fire
128分

 警護官のフランクは大統領の護衛に失敗してしまう過去を持つ。それからというもの彼の人生は歯車が狂い、あまり良い人生は送れていなかった。年老いた今も現役で捜査官として働いている彼は、ある通報がきっかけで大統領を狙う暗殺者と接触する。姿も分からず、電話から聞こえる声だけしか知らない男を追い、過去の未練を断ち切るかのようにフランクは相棒のアルと捜査を進めるのであった。

 シークレットサービスのエージェント。ベテラン。そして相棒。見ただけでわくわくするような言葉が並ぶ映画な上に、主演はクリント・イーストウッド。いつか観ようと思いつつも放置していた作品に気付いた私は、よく分からないB級映画とは違って期待しながら視聴を始めた。それでもがっかりすることなく楽しめたのだから、さすが名作である。

 序盤から中盤までは相棒との掛け合いや暗殺者との親しげな会話が中心だが、フランクは途中から真面目になり、暗殺者は恐ろしさを見せていく。そこに至るまでの変化が良いバランスで描かれており、ひたすらシリアスな作品ほど気張らずに最後まで観ていられるだろう。ある銃の作りや弾丸の隠し方なんかはスパイ映画のようでぐっとくるのも良い。

 間違いなく好きな映画ではある。しかし具体的な舞台背景というべきか、時代がはっきりとはしていないのだがとあるシーンでは少しもやもやする場面もあった。それは暗視装置の有無だ。近代的な武器や兵器が誰よりも早く手に入りそうな組織だというのに、なぜそれがないのか。まだ試作すらもない頃であれば仕方ない。だが最初の暗殺事件から経過した時間を考えると……無い方が不思議だろう。

 娯楽映画にリアリティを求めるのはナンセンスで愚かだ。私もあまりそんなことはしたくない。けれども現実を絡めた映画になってしまっている以上は、どうしても細かい点が気になってしまう。かといって暗視装置に頼り、あっさり終わってしまうのも困る。難しい問題だ。最後にケチを付けてしまったが、良い映画には違いない。

〔 886文字 〕 編集

原題:The Amityville Horror
90分

 どこかから聞こえる声に導かれて、その男は自宅で家族を惨殺してしまう。それから月日が流れ、事件現場となった豪邸をある一家が購入する。住み始めた直後から不思議な現象は起きていたが、ジョージとキャシーは現実に目を背けながら新たな生活を送っていた。しかし狂気はじわじわとジョージの心を蝕んでいくのであった……。

 1979年に公開された作品のリメイクであり、実際に起きた殺人事件を基にしている。といっても実際はここまでオカルティックな出来事はなかったらしく、そういうことにしたかった殺人鬼や監督の思惑でなんでもありなホラーに仕上がっている。ホラー映画だからと受け入れれば気にもならないが、これで現実がどうのと言われたら興ざめだ。

 ホラー映画に必要なものが意表を突いた演出やスプラッター要素に未知の恐怖だとしたら、この映画は一定値の評価を得るだろう。だがそれまでだ。終盤の展開は妙に急ぎ足で、急に映画のエンタメ要素を見せつけられるのもよく意味がわからない。静かに足下から静かに歩み寄るホラーなのか、ひたすらドッキリで驚かせるホラーなのか。監督は一体どういう映画にしたかったのか。私には理解できなかった。

 ホラーにエロは付き物だが、本作におけるエロ要員と思われるベビーシッターのリサもすぐに居なくなってしまう。その家は何かおかしいと説明する役割と、実際におかしいんだと伝える役割としては価値もあったが、彼女である必要はなかった。監督がおねショタのようなものを撮りたかっただけじゃないかと勘ぐってしまうほどだ。もっと扇情的なシーンを入れるか、いっそ出さないでほしかった。

 静かなままぞっとする映画で終わらせるか、中盤からあの激しいシーンの連続にしていれば佳作にもなったかもしれない。ところがそうはいかなかった。途中から監督を交代したかのような変化に戸惑うばかりで、ジョージの葛藤は説明不足だわピンチらしいピンチは少ないわで物足りなかった。こういう映画を作れば客は満足でしょ? という驕りで作られたかのような感覚もあり、消化不良の一言に尽きる。

〔 909文字 〕 編集

原題:A.I. Artificial Intelligence
146分

 未来の世界ではロボットが一般的となり、社会に溶け込んでいた。ある製造会社で働く家庭にも最新の少年型ロボットが送られることになり、その夫婦は戸惑いつつも彼――デイビットを受け入れる。しかし本当の息子が不治の病から快復し、お互いに母であるモニカの愛情を欲するようになる。より人間らしさを追求した結果の行動ではあったが、人間らしくなるにつれてトラブルにも巻き込まれやすくなり、棄てられてしまうのだった。

 人間となって人間のように愛されたいロボットがどうやったら人間になれるのかと考え、行動する。ロボットを題材として扱う作品としては普遍的なテーマではあるが、退屈でありきたりな展開はそう多くない。眠たくなるようなシーンは序盤程度で、人によっては試練のようにも思えるだろう。けれども序盤のシーンを乗り越えれば後は目まぐるしく移り変わる映像や展開を楽しめる。

 キューブリックらしい内容は個人的にも嬉しいのだが、監督はスピルバーグ。だからか所々の表現はマイルドになっている気もするし、映像の美しさも若干物足りなく感じる。映像も演出も悪くない。名作だと断言もできる。だが違う。私が求めているのはキューブリックが撮ったA.I.だった。しかし彼じゃなかったからこそ、多くの人から好かれる映画にもなれたのだろう。彼の才能を知らしめる作品としての価値は高い。

 登場人物自体はそれなりなものの、主要人物は少ない。セクシーでキュートなジュード・ロウが演じるジゴロ・ジョーが目立つせいか、登場人物(どちらも人間ではないが)は2人だけだったんじゃないかという気さえする。それでも飽きずに見ていられるのは監督の実力だろう。キューブリックじゃないのは残念だが、代わりに監督をしたのがスピルバーグで良かったと言える。愛について思うところがある人にぜひ一度観て欲しい。

〔 814文字 〕 編集

原題:El laberinto del fauno
119分

 軍人に囲まれてどこかへ向かう少女と身重の母。そんな状態で荒れた道を進んだせいだろう。母は気分を悪くして車を止めさせる。少女――オフェリアは車中で夢見がちな本を母から馬鹿にされたこともあり、車を降りた後も不満げに辺りを見回していた。そこで足元にあるものに気付き、それをある場所へと戻した。すると妙に大きく存在感のある虫が現れ、オフェリアは驚く。しかしその場では特に何も起こらず、再び車へと戻り目的地へと向かうのであった……。

 正直に話すと私はファンタジーをあまり観ない。別に嫌いではないのだが、他に観たい映画があればそちらを優先してしまうのだ。それというのもどちらかといえば本作の母親に近く、あらゆるものを空想よりも現実を重視して判断してしまうせいである。ゲームだと気にせず買うが、映画は2時間程度の時間に全力を注いだ究極の作り物だと考えており、ファンタジー映画は作り物の中の作り物という感情を抱いてしまうのである。

 ただの偏見には違いないが、そんな私でもふとファンタジーに興味を抱く瞬間はある。美しい映像や魅力的なキャラクター。そして凄惨な表現。本作にはその要素が全て含まれていた。3DCGがお粗末(時代を考えれば仕方ないのかもしれないが)なのは気になるが、全体的に好みではあった。ただ、それでも名作とは言えなかった。オフェリアの扱いがどうもご都合主義というか、演出にしても説明不足な印象を受けたからだ。

 彼女の気力や豪胆な性格は場面によって変わっているように見える上に、ピンチを招いてもよく分からないチャンスを与えられる。作中屈指の悪人についてもそうだ。彼は警戒心があるのかないのか。短いシーンで変化に気付き、何も怪しまずに手を伸ばす。よくそれまで生きながらえてきたものだと感心する。尊敬はできないが。

 内戦だのダーク・ファンタジーだのと作風やテーマ、表現のせいで単なるファンタジー好きにはオススメできないが、普段から血にまみれた作品を観ている層にはオススメできる。その傷で断面も生々しいのになんで血が止まってんだ、針くらいで急にガーゼを染めるほどに出血するのは何故だ! と突っ込みたくなるシーンもあるが、十分面白い映画だった。細かいことは考えず、映像に酔いしれよう。

〔 986文字 〕 編集

原題:Yes Man
104分

 自ら退屈な日々を選択するかのようにノーと言い続けたカールが怪しいセミナーに参加し、今度はなんでもかんでもイエスと言うようになる。たったそれだけで人生は大きく変わり、様々なチャンスに恵まれる。しかしいつまで経ってもそれで通用するとは限らず、カールはイエスが引き金になってピンチも迎えてしまい……。

 ノーと言えない日本人という表現がある。これは心優しいのか自分の意思というものがないのか、知らず知らずにイエスマンになっている日本人の国民性を現したものだ。ノーと言える外国人が日本人さながらにイエスと言えばどうなるか。その模様を描いたのがこの映画だろう。彼の場合は極端だが、まあこんなものかもしれない。

 率直な感想としては、こんな展開あり得ない。しかし本当にそうだろうか。自分の常識というものに囚われてはいないか。あり得ないとは言ったが、どれも不可能というほどではなかった。運良く偶然が重なれば昇進もするだろうし、運悪く偶然が重なれば警察に睨まれることだってあるだろう。これは一つの可能性を描いた映画なのだ。

 人生が失敗続きで何もかも上手くいかない。何の意味も見出せない日々を過ごしていれば死にたくもなるだろう。そんな人生を変える切っ掛けがカールにとってのイエスだった。言葉一つ、行動一つ変えてみれば世界が変わる。怪しいセミナーじみてはきたが、そういう人生の変え方について教えてくれるのが本作である。

 人生が上手くいっている人からすれば、本作は退屈な映画にもなりえる。なにせ退屈な人生からようやく抜け出して、これから面白くなっていくというところで映画は終わってしまうのだから。何か思うところがあって考え方を変えたいという人にはいいだろう。良い作品だが、打ち切りのような印象もあるのが少し残念なところだ。

〔 795文字 〕 編集

原題:챔피언
108分

 遠い異国でマークは用心棒として働いていた。ある日、彼がかつては腕相撲のチャンピオンを目指していたことを知る男――ジンギがクラブ内の腕相撲に参加するよう迫る。その腕相撲は賭け事の対象であり、取り仕切っている人物はマークの雇い主でもある。ここは空気を読んで負けるべきだがマークは勝利し、仕事を失ってしまうのだった。

 転職を余儀なくされたオッサン(マ・ドンソク)が祖国に帰って腕相撲をする。一言で言えばそれだけのストーリーだが、ベタベタな王道ストーリーが見事にはまっている。ぶっちゃけるとマ・ドンソクのアクションが見たいという動機だけで本作を選んだ。ところが思いのほか良かった。真新しさはなく意表を衝く展開もない。だが楽しめた。

 随所に挟まれるコメディ自体はそこまで面白くない。爆笑とまではいかず、ああここは笑いを取る場面なんだなと分かりやすく、息抜きができるようなものばかりだ。マ・ドンソクのアクション要素自体は控えめで少しがっかりしたものの、普段いかついオッサンが見せる笑みや楽しそうな表情を味わえるのはいい。彼だって怪物ではなく人なのだ。

 お涙頂戴とまではいかない家族愛にコメディとスポ根。それぞれがバランスよく組み合わさっており、くどさとしつこさのないちょうどいい映画に仕上がっている。主役だけではなく脇役もキャラが立っており、大物と小物の比較を楽しむのもまた一興か。本気に見えないだろうが、本作はスポ根と可愛いオッサンが見たい人にオススメしたい。

〔 653文字 〕 編集

原題:Liar Liar
87分

 フレッチャーは有能な弁護士だ。しかし優れた父親ではなかった。妻とは別れ、子供のマックスを溺愛しているものの仕事を優先して約束を破ってばかりいる。マックスも父親を愛しているのだが、誕生日までそれでは納得できない。そこで彼は「パパが嘘をつきませんように」と祈る。するとその願いは叶ってしまい、フレッチャーは嘘をつくことができない状態で嘘まみれの浮気女の弁護に向かう……。

 嘘を吐けない。たったそれだけの要素でキャラクターとストーリーが出来上がっている。監督と役者の演技があってこその映画で、同じ脚本があったところでこれだけ楽しめるかは微妙だろう。基本的にはコメディだがホームドラマでもあり、家族の素晴らしさを堪能できる。嘘自体は簡単だしうまく使えば役にも立つ。けれどもそれに頼ってばかりでは幸せになれない。フレッチャーはたった1日でそのことを理解する。

 嘘を吐かずに危機を乗り越える方法というものはなかなか見つからない。トラブルに巻き込まれてもっともらしい言い訳をする機会を期待するか、自身の成長で乗り越えるしかないのだ。そこで彼はトラブルを演出し、嘘を吐かずに切り抜けようとする。その光景を見ていれば頭の問題だと判断されて切り抜けられる気もするが、彼はどうにかこうにか乗り越えてみせる。ここに見た目とは裏腹な優秀さを感じ取ることが出来た。

 そんな人物でも嘘という武器を奪われるだけでとんでもない苦労をしてしまうのだ。もし優秀でもなんでもないいわゆる普通の人から嘘を取っ払ってしまったら……きっと人生は酷いものになるだろう。ERで知られるモーラ・ティアニーの愛らしさも魅力的だが、マックスを演じるジャスティン・クーパーもいい。ワガママさが不足しているものの、子供の魅力を全身から伝えてくれる。これは嘘吐きにこそ観て欲しい名作だ。

〔 797文字 〕 編集

原題:Search Party
93分

 結婚式を控えて騒ぐ3人の男達。不安からか花婿から本音が漏れてしまい、あろうことかその時の愚痴を結婚式で暴露されてしまう。花嫁は逃げ出すわ結婚式は台無しだわで散々な結果に終わる。それから時は流れたある日、花婿は何故か全裸で見知らぬ土地にいた。親友2人は彼を助けに自動車を走らせるのだが……。

 タイトルや冒頭のテイストは『ハングオーバー!シリーズ 』を思わせるが、別にシリーズの続編でもなければスピンオフでもない。ハングオーバー2作目の脚本家(の1人)が監督を務めたオリジナル映画で、原題もそこまで寄せていない。ただまあ……そうでもしないと誰も観ないんじゃないかという気はする。本作は掴みが弱いのだ。

 いまいち盛り上がる展開もないまま進み、ちょっとしたスパイスが出てくる程度で退屈な印象を受ける。サメ映画からサメを抜いたB級映画のようなもので、大パニックが起こる前の小パニックをひたすら見せつけられる作品である。イケメンもいなければ解き明かす謎もない。本家も娯楽に振り切ってしまうとこうなるのだろう。

 序盤の辺りを乗り切ることができれば最後まで視聴することも可能だが、序盤で合わないと感じた人はその場で視聴を止めてもいい。Scarborough Fairの使い方に少し笑い、Rosa Salazarをずっと映してて欲しいなあと思ったりしたくらいで売りはよく分からない。本家が胃もたれしてしまう人はちょうどいいかもしれない。

〔 661文字 〕 編集

原題:The Hangover Part III
100分

 大きなトラブルを巻き起こして父親を疲弊させ、脳か心臓かはたまた血管に負担を掛けさせてしまったアレン。哀れにも父親は命を落としてしまい、家族はアレンを何とかしようと画策する。ところが治療するために病院へと連れて行くことになり、自動車を走らせていると酔ってもいないのに得体の知れない集団に襲われてしまう。彼らは何なのか。アレンはまともになれるのか。今までとは異なる展開で物語が動き出すのであった。

 タイトルはこれまで通りのハングオーバーということで、そのまま訳せば二日酔いである。しかし今回は二日酔いではない。素面のまま身に覚えのないトラブルに巻き込まれる形でストーリーは進む。だがトラブルの原因には深く関係しており、今彼らが置かれている状況は二日酔いが招いたものである。二日酔いからのスタートという定石からは外れたが、二日酔いで何かが起きて解決するという流れは本作でも健在である。

 まさかお前がずっとレギュラーなのかという驚きや、お前はもう出ないのかよという突っ込みが出そうになるが、これまでの活躍ぶりを見ればこの人選になってしまうのも仕方ない。彼がいなければ最初の大事件も発生せず、彼と関わっていなければ以降のシリーズも産まれない。真の主役は彼だ。それが良いか悪いかは別として。興行収入も評価も下げてしまったのは彼が出しゃばりすぎたせい……かどうかは分からない。

 相変わらずのテンションでお馴染みの流れ。しかし勢いは落ちていくばかり。娯楽作品だから雰囲気を楽しめたらそれでいいって人にはいいが、とりあえず映画として完結させましたという印象が強く、ハングオーバーは3部作になってしまっただけのシリーズとも言える。1作目でそのまま終わっていた方が良かっただろう。蛇足に蛇足を重ねては地を這うのにも不便で、足も揃わない。迷走してしまうのも致し方ないのだ。

 それでも佳作にしてしまうのは、こういう馬鹿馬鹿しい娯楽映画そのものが好きだからである。マンネリを何とかしようとしている努力は見えたわけで、随所で笑いを取ろうとしているシーンもあった。最後の最後でまたお馴染みの流れを繰り返すのも作品そのものへの愛を感じられる。娯楽を作り、完成させようとした者が居た。その事実だけで嬉しくもなる。馬鹿馬鹿しい映画を観たい。そんな人だけが観ればいいのだ。#ハングオーバー!シリーズ

〔 1038文字 〕 編集

原題:The Hangover Part II
102分

 仲良く酔っ払って酷い目に遭ったフィル達はまた懲りもせず二日酔いでよく分からない状況に陥っていた。どうしてそこに居るのか、何故彼はいないのか。1作目と変わらない展開のまま、また彼らの記憶を振り返るストーリーが始まる。

 率直に言ってしまえば前作が全く合わなければ今作も合わないだろう。一部は前作以上のインパクトもあるが、前作ほどの新鮮味はない。酔っ払う直前までのストーリーを観た後で二日酔い後の朝。それから数少ないヒントを頼りにあちこち飛び回る。大筋がここまで変わらなくても許されるのはコメディだからだろうか。だが批評家は厳しく、評価も低い。興行収入が少なければここで終わっていてもおかしくなかったのである。

 ところが不思議なことに私は前作よりも今作の方が合っていた。スプラッター要素の増えたこの映画が趣味に近かったのだ。確かに小休止のようなギャグは物足りなかった。それにアランの性格が極端に悪くなり、それを帳消しにする大活躍をする機会もないせいで単なる嫌なやつになってしまっている。その辺りを考えると、前作への思い入れが少ない人の方が楽しめるのかもしれない。

 オリジナルを超えられる要素が作れなくて過激さを足した可能性はあるが、その過激さが人を選ぶ要素になってしまっているのは残念だ。酒を呑みながらだらだら観ようと思っていた人が気分を悪くして視聴を諦める展開もあり得る。ただ名作かといえばそうではなく、迷作でもない。馬鹿騒ぎをするだけの悪くない映画。果たして最終作はどちらに転ぶのか。不安を抱えたまま、今日か明日には観てみようと思う。#ハングオーバー!シリーズ

〔 744文字 〕 編集

原題:De toutes nos forces
90分

 ジュリアンは障害を持って生まれてきた。彼の父親であるポールが失業してしまい、久しぶりに帰宅したものの親子の会話といったものはない。ポールはジュリアンとの接し方が分からなかったのだ。気不味い雰囲気のままずるずると日が過ぎ、母親のクレールもストレスを抱えてしまう。ある日ジュリアンはポールの古い写真を目にして、彼が昔はトライアスロンに出場するほどのスポーツマンだったことを知る。ジュリアンはポールに近付いていくと、トライアスロンに出たいと宣言し……。

 障碍者の子と元トライアスロン選手が親子でトライアスロンに挑戦するという映画だが、ジュリアンは走ることも泳ぐこともできない。陸では車椅子に乗り、海ではボートに乗る。つまり父親のポールが車椅子を押し、ボートを引っ張ることになる。もしジュリアン自体が障害を乗り越えて地面を蹴り、波を掻き分ける姿を期待している人には視聴を勧められない。映画の主役はジュリアンとポールだが、トライアスロンの主役はポールだけだと考えても問題ないだろう。

 とはいえ屈強なスポーツマンでも脱落してしまうような競技のため、ジュリアンにとっては相当きつい。日差しは体力も水分も奪ってしまい、熱中症の危険も付きまとう。おんぶにだっこでただ競技に参加しているだけの存在にも見えてしまうだろうが、体自体をまともに鍛えにくいジュリアンが脱落しないだけでも十分に凄いのだ。たとえ我が儘な駄々っ子に見えても、騒げる体力があるだけ普通ではないと言える。

 と、ジュリアンのフォローをしてみたものの、やはりこの映画で凄いのは父親のポールだ。ポールは最初から最後まで重りを背負って参加しているようなもので、いくら元々トライアスロンに出場していたといってももうオッサンである。それにトレーニング期間も短く、1人で完走できるかどうかも怪しい。そんな人がひたすら泳ぎ、漕ぎ、走る。一体どうやったらこんなオッサンになれるんだろう。

 ポール役のジャック・ガンブランにはマッツ・ミケルセンのようなセクシーさもあり、頑張るオッサンの姿が妙に美しく感動的に見える。ちなみにこの映画、トライアスロンのシーン自体はそう長くない。終盤はひたすら競技シーンを見る羽目になるが、序盤から中盤にかけては親子の仲が深まっていく様子が描かれる。スポーツによる感動作というよりは、家族愛による感動作の方が正しいのかもしれない。

 良い映画だとは思うが、あらすじや予告から想像できる通りの物語といったところ。何の捻りもなく、これといった驚きもないままあっさりと終わる。親子愛や感動といったものを求めていればある程度満たされるだろうし、そうでなくとも駄作とまでは言い切れないだろう。映画というよりもやや演出過剰なドキュメンタリーのようなものと思えばいい。日常の延長線上にある幸せを噛み締めたい人に見て欲しい。

〔 1239文字 〕 編集

原題:The Hangover
108分

 結婚式を控えた男とその友人たち。彼らは独身最後の夜を楽しむためにラスベガスでバチェラー・パーティーを行う。パーティーは大いに盛り上がり、素晴らしいひとときを過ごした……のかどうかも分からぬままに夜が明けると、そこに花婿の姿はなかった。何があったのか考えようにも部屋の中は荒れ放題。トイレには虎が居るわ赤ちゃんが泣いているわで何が何だか分からない。謎と赤子を抱えたまま、彼らは花婿を探すのだった。

 二日酔いで登場人物たちの記憶ははっきりしないまま、一体何があったのかをひたすら調べ回る。終始それだけの映画である。記憶を探る映画といえば何らかのサスペンスやミステリーを想像してしまいがちだが、この映画にそんなものはない。ふざけた大人が暴れ回るだけだ。下ネタに抵抗がなければ気楽に楽しめるコメディ映画で、それ以上でもそれ以下でもない。ピンチを迎えてもあっさり解決するからはらはらもしない。

 息を呑みながらこれからどうなるんだろう、という楽しみ方を求めている人には全く薦められないどころか止めておけとも言いたくなる。身も蓋もない言い方をすればこの映画に中身なんてものはほぼ無い。どうしようもない大人と下ネタなんてものはそれこそ酒の席でのネタにしかならないものだ。しかし彼らは本気だ。本当にどうしようもなく、だらしないながらも真剣に記憶と花婿を手に入れるべく奮闘する。

 娯楽映画を観たい。B級映画を観たい。これはそんな軽い気持ちで見てはいけない映画だ。私は何も考えずに観てしまったが、この作品を心から楽しんでみたい場合は下準備が必要だろう。まず酒を用意する。ついでに軽食もあればそれも。後は酔っ払う手前まで酒を呑んでから映画を観る。それだけで彼らと同化した気分になれるだろう。素面で観てもいいが、映画に強い拘りを持つ人は止めておいた方がいい。悪酔いするだけだ。#[ハングオーバー!シリーズ]

〔 845文字 〕 編集

96分

 チープなゾンビ映画を撮る集団が撮影をしていると、なんと本物のゾンビと遭遇してしまう。カメラマンはカメラを置くこともなく、監督の意向に沿ってカメラを回し続けるのだが、次々と被害者は増えていくのだった……。

 かなり今さらな気はするものの、一昔前の話題作を遂に観てしまった。低予算インディーズ映画でありながらも大きな話題となり、予算の100倍を超える興行収入を得たというのだから恐れ入る。仕掛けは単純でジャンルとしてはゾンビというよりはファミリー映画。感動とまではいかないが家族愛を感じられる……要素がある。

 ただ正直に言えば映画としての面白さは微妙だった。裏でのやり取りが分かりやすすぎたのと、本編を含めて全体的にチープすぎたのが合わなかった。彼らが次の指示を待っていると分かるシーンが多ければ多いほど劇中劇の作り物感は増す。しかしプロフェッショナルらしさは減ってしまい、いくらなんでも対応力不足では? と思ってしまう。お芝居を見せるお芝居を見せられているというややこしさが戸惑いを生む。

 彼らはこういうものを作ろうとしています。そうして出来上がったのがこちらの作品です――という流れ自体には何の不満もない。ただ先述した通りチープすぎた。意図的に分かりやすく、そこかしこにヒントをばら撒いている。こういった作品の入門用とでもいうか、子供向け作品のような極端にシンプルな作りと過剰な演出が重なり、B級映画ファンとA級映画ファンの両方を遠ざけているように感じてしまうのだ。

 なんかおかしいな、で留めていれば驚きや納得もあっただろう。馬鹿らしさに突っ切ったせいかもしれないが、観客を驚かせたいのか家族を描きたいのかテーマを絞って欲しかった。それでも本作はヒットしたし、面白かったという声も多い。納得していない者も多いが、それはこの作品の何を見ているのかにも寄るのだろう。

 面白い映画を観たいという者からすれば、本作は微妙だろう。ソンビもパニックも作り物。人によっては耐えられないほどの退屈な時間を抜け出したかと思えば映画の裏側。ここでそうなっていたのか、と初めて気付いて驚く楽しみもあるかもしれない。やはりそういう裏事情があったのか、と確信して楽しむのもアリだろう。けれどもそれは最初のチープな映画自体に興味を持てないといけない。ここが最初で最後の難関だ。

 ちなみに私は『the FEAR』という古いゲームを思い出しながら映画を観ていた。そのゲームでは番組撮影のカメラマンとして主人公を操作し、ハプニングに巻き込まれる。そちらもなかなかチープ感が強いものの、恐ろしいことに驚くような仕掛けはない。カメラは止まらず、現実離れした出来事と遭遇して悲惨な目に遭う。それはそれは凄い仕上がりなのだが……これはこれとして楽しめた。さて、この違いはなんだろうか。

 私が思うにこの映画は娯楽を追求しすぎたのだ。一方で先述したゲームはゲームとしての楽しみをある程度理解していた。可愛いタレントとちょっとした謎にホラー。映画監督役の彼ではないが、顧客が望むそこそこのラインを維持していたのだ。「これはこういう娯楽映画だ!」とごり押しされて受け入れられる人なら面白い。「ゾンビは?」「話題になってた要素はこれ?」と別方向に期待してしまっていた人には物足りない。

 だらだらとよく分からないことをうだうだ書いてしまったが、決して面白くないわけではない。上質なホラー映画を観たい気分の時に上質なミステリー映画を観てしまったようなものだ。悪くはないが、これじゃない。ただこういった映画が大衆に受けるというのは素晴らしいことだと思う。作り上げる楽しみと感情の共有。それが面白いという感想に繋がるのだとすれば、大勢と創作の楽しみもわかり合えるのだ。

 普段映画を観ないで、文化祭で盛り上がるのが好きだという人にはおすすめだろう。

〔 1626文字 〕 編集

原題:Escape Room
81分

 謎の密室で必死に箱を開けようとする男が居た。彼は叫びながらもどうにか箱を開けると、中に入っていた鍵を鍵穴へと挿した。しかし何かを間違えていたのか、太い針が飛びでてきてしまい、彼は手に傷を負ってしまう。針には毒でも塗っていたのだろう。彼は次第に様子がおかしくなり、息絶えてしまった。場面は変わり、誕生日に浮かれる男女が映し出される。彼らは脱出ゲームに参加することになるのだが……。

 この書き出しで大体の人は「ああSAWとかキューブ みたいなやつかな?」と考えるだろう。その発想自体に間違いはなく、正解と言える。しかしなかなかメインの謎解きは始まらず、割と退屈な時間(というか尺稼ぎにしか思えないシーン)が続く。それからようやく謎解きが必要なシーンへと切り替わっていくのだが、観客へのヒントは少ない。どんな謎解きだろうと考えていたら謎を解かれてしまうような印象を受けた。

 これは例え話だが壁に二足歩行の人間と四足歩行の馬が描かれていたとする。そして扉には四桁の数字を入力するパネルが付いていた。そんなシーンが映し出されたら観客はまず数字の意味を考える。四桁になるものは何か。ヒントはあったか。そこで壁の絵に気付き、人間と馬の違いについて考える。「そうだ、人間は手と足。馬は全て足だ。2と4。これを絵の順でそのまま入力すると0204だ!」といったところか。

 この閃きまでの時間とヒントが欠けているというか、見せ方が地味すぎるとでもいえばいいのか……彼らが謎を解いていってもいまいちしっくりこないのだ。それぞれの得意分野があり、個々に活躍の場面がある程度設けられているのも悪くない。しかしそのせいで全員が普通の人とは違う特殊な人に見えてしまい、割と脱出ゲームが始まった直後からどこか醒めた目で彼らの姿を俯瞰していた。

 謎解き自体は悪くない。展開もまあいい。少しばかりのグロとエロも魅力がないわけじゃない。内容は尖っているが、どれもこれもよくて70点といったところで売りが欠けていた。顧客の要望を満たした最低限販売可能な商品とでもいうべきか、何かを切り捨ててでももっと独自性を出すべきだったとでもいおうか……なんともまあ残念な作品である。例えるなら本作はお湯を入れすぎたカップ麺だ。ジャンキーだが味は薄い。

※追記
 同名の映画が3本あり、この映画は恐らく一番微妙な映画だろう。もっとも古く(2017年)、B級要素が強い本作。翌年の2018年に公開されたのは死刑囚が主役の作品。そして最も評価が高く、続編も作られているのが2020年のエスケープ・ルーム。どれも脱出ゲームだが、どうせ観るのなら評判が少しでもいい方を観た方がいいだろう。

〔 1152文字 〕 編集

原題:Spy
120分

 どこか抜けているが一流のスパイであるファイン。彼をオフィスからサポートするのがスーザンの仕事だった。幾つかの不満も抱えたまま仕事をそれなりにこなしていた彼女だったが、ある日ファインが射殺されてしまう。彼女は内勤という立場でありながらも自ら志願して現場へと出向き、ファインを射殺したレイナへと接近する……。

 スパイではない人物がスパイとして活躍するコメディといえば、小説家がスパイになってしまう『なりすましアサシン 』を思い出す。しかし実はこちらの方が公開は古い。それにあちらはコメディを重視しているが、こちらは意外にもスパイ映画としても練り込まれている。それにスーザンは仮にもスパイ。体型で誤解されがちだが身体能力も高く、ただ現場に出ていないだけの一流スパイとも言えるだろう。

 登場人物の大半がコメディのノリで、真面目な人物は敵の組織やモブくらいなものだが、残念なことにシリアスな振る舞いを見せる人物は死にやすい。彼らは本作においてはハードル走のハードルでしかないのだ。立ち塞がって邪魔をするが、あっさりと跳び越えられる。ハードルに引っかかってもすぐに立ち上がり、次へと進む。敵は観客を楽しませる要素の一つに過ぎず、スリルなんてものとは無縁である。

 本作を本格的なスパイ映画として紹介するわけにはいかないが、面白いスパイ映画としてなら紹介してもいいだろう。主役ではないがジュード・ロウとジェイソン・ステイサムは頼れるスパイの姿を見せてくれる。スーザンを演じるメリッサ・マッカーシーだってそうだ。その見た目からは想像できない動きで敵を倒してみせる。娯楽としてスパイ映画を探している人がいれば、是非こちらの映画をオススメしたい。

〔 740文字 〕 編集

原題:Titanic
194分

 氷山に衝突してしまい沈没してしまったタイタニック号。沈没船には非常に価値の高い宝石も眠っているとされ、そのお宝を狙って調査を行う者たちがいた。ようやく見つけた金庫を開けてみたものの、そこに宝石は見当たらず浸水して判別不可能になった紙の束しかなかった。それでも紙を洗浄してみると、宝石の手がかりとなりそうな絵画だと判明する。その絵をテレビで放映してみたところ、ある老人が電話を掛ける。タイタニック号の生き残りだという老婆は、当時の出来事を語り始めるのだった。

 今さら説明する必要もないような有名作品だが、ちゃんと観たことはなかった。それというのもある程度古く、もはや古典作品とも言える映画だからだ。とはいえ古いから観たくないというものではなく、誰しもが知っている名作なおかげでそこかしこにネタバレが蔓延っており、大体の流れを知っているせいで観る気になれなかったのだ。だがそれだけの名作なら観ておきたいという気持ちもあり、今回勢いで観ることにした。

 ネタバレは避けるといってもタイタニック号といえば沈没した船である。元となる出来事が存在し、その船が沈むのは運命だと定められている。そこまでは周知の事実と認識してしまってもいいだろう。あとはそれ以外の何がネタバレになるのか。それはやはり主人公たちの過程や結末だ。沈む船とパニックに陥る人々の姿が描かれる映画だ、といってもここまでなら何の問題もない。それでは何を語ろうかと考えたところで少し頭を抱えてしまう。結末が見えているせいで表現上の制限が多いのだ。

 なるほどこれはネタバレをしてしまいたくなるのも仕方ない。それでも回避して魅力を伝えようとすれば、身分の違う者同士の恋愛模様だろうか。本来であれば言葉を交わすはずもない相手と出会い、恥を掻かされそうになるがうまく立ち回る。周囲の声や態度はお構いなしに距離を縮めていき、船の事故に直面する。果たして助かるのか、どう立ち回るのか。恋と命の行方をはらはらどきどき楽しむのが一番だろう。

 ただ誰がどうやって生き残るのか、どうなるのかといった続きが気になる演出に拘るのであれば、金庫の中から日記が出てくるような展開でも良かったんじゃなかろうか。老婆が思い出を語る展開から物語が動き出す以上は、この人物が誰でどうやって何をしたのかまでは分からなくとも生死については理解してしまう。言ってしまえばこの作品のネタバレを主要キャストが伝えてしまっているようなものなのである。

 とはいえ過去からストーリーを初めて冒頭の電話を終盤に持ってきたらありきたりな映画になってしまい、インパクトのようなものは薄れる。映画として本作を仕上げようとした際に、彼女が誰であるかという謎よりも彼女自身が何をしてどう決断したかという意思が重視されたのだろう。どんな人物がどういう人生を送り、何を選択したか。もし正体を隠したままだと焦点が合わず、映画そのものはぼやけてしまう。

 長尺は人を選ぶが、名作と言われるだけのことはある素晴らしい映画だった。

〔 1288文字 〕 編集

原題:The Terminal
129分

 ある目的のためにビクターはクラコウジアからアメリカへとやってきた。しかし本人は何も悪いことをしていないにも関わらず、国の問題でパスポートとビザが無効になってしまう。犯罪行為はしていないのだから逮捕する理由はないが、かといって過剰な特別扱いをしてやる義理もない。彼は少しばかりの優しさと企みによって空港の中での自由を手にするのだが……ビクターと彼を取り巻く問題はそう簡単には解決しないのだった。

 目覚めたら大人になっていたり海老を捕ったりボールに話しかけたり するトム・ハンクスが空港に閉じ込められてしまうという物語。どうしてこの人はこうも変わった人生を歩みがちなのだろうか。普通ではあり得ない運命を辿りそうな顔をしているのか、彼の表情や演技が普通ではないのか。はたまた起用する者が変人ばかりなのか。どの映画も彼はいつも通りで、何故かそれがしっくりくる。不思議だなあ。

 空港の中で一体何が出来るのか……という不安はそこまでない。空港の中で服も買えるし飲食だって可能だ。ただ住所未定だと仕事を探すのに一苦労する。仕事がなければ金もなく、金がなければ腹を満たすことだってできない。モラルがなければここで盗みを働くか、いっそのこと空港を出てしまうだろう。しかしビクターはそんなことをせずに金を稼ぐ。金を稼げずとも人柄のおかげで救われる。それだけ彼は魅力的なのだ。

 空港から出られない。その言葉だけで脱獄を想像し、『ショーシャンクの空に 』や『プリズン・ブレイク』のような地味な脱出から頭を使った手まであれこれ想像をしてしまう人は居ないとは思うが、そんな展開を待っていても描かれるのはビクターと彼らを取り巻く人達の人生模様でしかない。人々からすれば交通機関として活用する場所の一つでしかなくとも、そこで働く者や暮らす者にしてみたら人生の一部だ。

 彼らは空港で笑って泣き、飛行機を乗り継いで別の目的地へと向かうようにそれぞれの人生を進んでいく。空港で何ヶ月も足止めを食らうことがあったとしても、いつかはきっと前へと踏み出す機会を得られるのだ。諦めない心と受け入れる意思。それさえあれば人生だってなんとかなるのだろう。無人島も空港もそこで住みたいとは思わないが、ビクターのように人生を満喫してみたいものである。

〔 985文字 〕 編集

原題:Predestination
97分

 事故と火傷。人によっては直視しがたい場面から物語は始まる。男は手術によって一命を取り留めるが顔は火傷が酷く、まるで別人のような顔を与えられる。彼は当然変化に驚くが、受け入れて任務に向かう。なんとこの男の正体はタイムスリップをして犯罪を未然に防ぐ秘密裏の組織の一員だったのである。彼は連続爆弾魔を捕まえるべく正体を偽り、ある相手と接触して会話を交わす。すると相手は昔話を始めるのだった……。

 タイムスリップという単語からも分かるように、本作にはSF要素がある。というか要素どころか物語の展開も核も何もかもがSFで構成されている。連続爆弾魔は誰か? 逃げた男は? 組織とは? SFといえば作品によっては小難しい言葉と設定で訳が分からなくなることもあるが、こちらの映画は比較的優しい方だろう。分かりやすく、それでいて面白い。タイムスリップを軸に置いた映画としてはトップクラスだろう。

 過去に『LOOPER/ルーパー 』の感想を書いたが、こちらは逆に分かり難く物足りなかった。登場人物の行動原理や目的といったものの差がはっきりしており、もやもやしたものを抱えたまま終わったルーパーに対し、本作はすっきりとした気持ちでスタッフロールを眺めることができた。内容としてはルーパー以上にややこしいこともしているのだが、伏線の張り方と見せ方がうまく、パズルのピースがぴたりとはまっていく感覚が得られる。

 この作品は面白い。手放しで褒めよう。SFというジャンルではなく、映画という娯楽の中でも上位に位置する。タイムスリップや犯罪ドラマ、哲学といったものに興味があれば間違いなく楽しめるだろう。ややこしい上に難しい内容ではあるが、しっかり話を追えば理解できる。だが、一つ文句を言わせてもらう。どうしてこんな名作が既にあるんだ? こういう作品はいつか自分の手で作り上げたかった。その才能には嫉妬を覚える。

〔 832文字 〕 編集

原題:Horrible Bosses 2
108分

 モンスター上司から解放された3人はふとした思いつきからかちっぽけなアイデアを頼りに起業してしまう。しかしアイデアだけでは事業として成立せず、試作品を商品化してくれる企業や融資または出資辺りが必要となる。そのためにもまずは注目を集める必要があるのだが、彼らは運良くテレビで宣伝する機会を得た。するとこれまた運良く大企業から声が掛かる。ところがそうそう上手くいくわけもなく……。

 上司から解放された彼らは自分達なら良い上司になれると考えていた。ついでに金を稼げるとも。それで安定を捨てて起業したがやはり相手に恵まれない。いつも決まったメンツで集まっているせいか相談しようにも相手が居らず、頼ってはいけない相手に相談までしてしまう。だが、これもコメディの面白みだろう。

 セルフパロディの傾向が強く、起承転結のパターンは前作と変わらない。しかしお色気要素は減り、下品な台詞も少し減ったように思う。その代わりに開始早々で何かを勘違いさせるようなシーンが含まれているのだが……あれは軽いジョブ程度だろう。中心となる人物らは同じで展開も似たり寄ったり。それでも笑えるのだからよくできている。

 ジェイミー・フォックス演じるMFの出番も増えており、ただの面白い登場人物の1人から格上げしているのも実にいい。あの極端なキャラクターをそのまま捨て去ってしまうのは勿体ないし、強みのようなものを見てみたいとも思っていた。だからこそ終盤では喜び、その手で掴み取った結果にも割と納得してしまっている。彼だけが得しているようにも見えるが、3人も救われればそれでいいのだ。

 分類上は佳作にしてしまったものの、限りなく名作に近い佳作といったところだろう。どうして名作にしてしまわなかったのかと問われれば、この面白さは前作ありきだからと言える。前作を観て、続きまで観る。そこまでしてようやく完成するのだ。言わば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の2と3である。1に当たる入り口としての作品が最初にあれば、もしかすると全てが名作扱いだったのかもしれない。#モンスター上司シリーズ

〔 916文字 〕 編集

原題:Horrible Bosses
98分

 仕事は嫌いではないが上司に恵まれなかった3人の男たち。彼らは上司さえ違えばと頭を抱えていた。度重なるストレスに限界を迎えた後、3人は犯罪者風の男にけしかけられて上司の始末を決意する。しかし杜撰な計画のせいで失敗してしまい、挙げ句の果てには大きなトラブルの原因を招いては酷い現場を目撃する。それでもモンスターのような上司をなんとか始末するため、彼らは協力しあうのだった。

 ブラックコメディということでなかなかに下品だったりやりすぎな面もあったりするが、ノリとしては小学生の悪ふざけに近い。だがお色気シーンはジェニファー・アニストンの演技とスタイルのせいもあってか、もうポルノ扱いになりそうな気もする。しかしこんな上司が日常的にいやらしい仕草や姿を見せつけていてよく耐えられるものである。本人は嫌でも周りからすれば羨ましいという感想を抱いてもおかしくない。

 ケヴィン・スペイシー演じる上司はハラスメントが日常的で憎たらしく、コリン・ファレルの演じる麻薬常習犯の上司は思考回路が滅茶苦茶で一緒に居ると疲れるだろう。前者は『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の手段を選ばない議員そのままで、個人的に抱いていたイメージそのままだった。しかし後者に関しては『フォーン・ブース』とはイメージが違いすぎて、やはり俳優は凄いなと感心させられた。

 ちょこちょこ挟まれるお色気要素と頻繁に出てくる下品な表現は人を選ぶものの、映画は娯楽だと考えて許容できる人からすれば面白い映画だろう。ただ残念なことに面白いだけで、あっと驚く仕掛けや伏線といったものはない。馬鹿なことをしている大人の姿を見せられるだけである。といっても先述したとおりで、娯楽とはそんなものだ。頭を使わずに笑っていられる。そんな映画も良いものだろう。#[モンスター上司シリーズ]

〔 799文字 〕 編集

原題:Split
117分

 運悪く誘拐されてしまった女子高生3人は仲良く閉じ込められてしまう。リーダー格のクレアは根拠の薄い自信でなんとかしようと考え、腰巾着のマルシアはその意見に乗っかる。しかしケーシーは乗らず、悲観的で現実的な案を出そうと頭を働かせる。けれども解決策は浮かばずに鍵穴から部屋の外を覗いていると、そこには誘拐犯とは違う服装と声色の誰かが現れた。当然彼女らは助けを求めるのだが、扉を開けて姿を見せたのは女装して別人を演じる誘拐犯の姿だったのだ。

 物語が誘拐から始まれば、もちろん多くは誘拐の解決を求める。誰がどうやって誘拐犯の足取りを掴み、彼女達を救うのか。そんな視点で物語を楽しむものだろう。ところが本作にはそういった要素はほぼ無い。誘拐はきっかけにすぎず、この物語の本質ではないのだ。だから警察や特殊部隊が活躍する様もなく、誘拐犯と女子高生――ケーシーのやり取りが肝となる。アクションではなく、人間心理を楽しむのが正解だろう。

 この誘拐犯は解離性同一性障害(多重人格といった方が馴染みがあり、理解もしやすいだろうか)であり、作中でも語られるが解離した人格にはそれぞれ異なる特性を持っている。それは単なる性格や口調のみならず、時にはその者の構造そのものも変えてしまう。極端な話をすればパン屑が付いた服を見るだけで嫌悪する潔癖症な人間にも、散弾銃で撃たれても効かないような人間にもなれるのだ。

 本作は割と前に公開された『アンブレイカブル』の流れを組んでいるとのことで、個人的にはかなり期待していた。しかし全体の流れは良かったものの、オチの弱さがどうも気になってしまった。こちらからまた続いている『ミスター・ガラス』も観てみたいのだが、果たして期待していてもいいのだろうか。M・ナイト・シャマラン監督は当たり外れの差が激しい気がしているのだ。だが、それでも次を期待してしまう。不思議だ。

〔 814文字 〕 編集

原題:장화, 홍련
115分

 スミとスヨンの姉妹が家に着いたところから物語は始まる。継母のウンジュは冗談交じりに美しく優しく接するのだが、何が気に入らないのか彼女らは殆ど無視ともいえる行動をとってしまう。当然ウンジュは気を悪くするが、それでも2人にあたろうとはせずに優しく振る舞う。どうして彼女は嫌われているのか。再婚が気に入らないのか。そんな謎を残したまま、家の中では原因不明の怪奇現象が起こり始めるのだった。

 それまでと違った環境に怪奇現象。ここまで聞くとトビー・フーパー監督の『ポルターガイスト』を想像しそうなものだが、あそこまでおかしな出来事はそう多くない。序盤では継母との確執や怪奇現象が目立ってはいるが、徐々に恐怖の質が変化していく。インパクトのある見た目や演出で驚かすホラーはなりを潜め、その家と姉妹の抱える闇がその世界を黒く塗り潰していくのだ。

 新しい家族が増えるともなれば反発する気持ちもあるだろう。しかし彼女はどうしてこうも毛嫌いするのか。彼女が何故箪笥を嫌うのか。そういった疑問が膨らむにつれて映画も物語の核へと踏み込んでいく。かなり内容は脚色されているらしいが、元々は古典的な怪談だという本作。怪談というからにはそれなりの恐ろしさや悍ましさを期待してはいたが、本作はその期待を見事に裏切ってくれた。

 いざ見終わってみれば仕組みは単純でかなり分かりやすい構造をしている。強いて言えば作中では部外者に当たる夫婦が見たものは何だったのか、終盤で目にする物語の起点とも言える箪笥の中身は本物だったのかという疑問は残る。しかしこれはホラーである。ミステリーやサスペンスではない。ある程度の整合性があれば謎を残していても許される。ラストカットは止めなくてよかった気もするが、あれはあれで不気味さや後悔といったものを演出しているのだろう。だが間違いなく丁寧に作り込まれた良い映画だった。

〔 809文字 〕 編集

原題:Zoo
95分

 あまり関係がうまくいっているとは言えない夫婦が居た。夫にはまだ幾らかの愛を感じられるが、妻にはそんなもの感じられず、離婚まで考えている。それもそのはずで彼らには互いに抱えた苦しみがあり、その苦しみから逃れきれずにいるのだ。愛は冷え切っているがなくならず、とりあえず続いている夫婦生活。しかしそんな日にも変化が訪れる。謎の感染症が原因で世界はゾンビで溢れかえってしまったのだ。

 よくあるゾンビものと一緒で最初は彼らにとっての日常生活が描かれる。その後ゾンビが出てくるわけだが……この作品にとってのゾンビはそこまで大きな意味を持たない。ゾンビ映画だと思ったら人間同士で殺し合っている海外ドラマ、ウォーキング・デッドみたいなものを想像するといい。しかし本作は更にゾンビ要素が薄く、ホラー映画のエロシーン程度の頻度でしかゾンビが出てこない。

 ちなみに本作のタイトルはゾンビと銘打ってあるが、原題はといえばズー。動物園である。ゾンビが出てくる以上はこれでもいいのだろう。しかし内容を考えると分かりやすいが微妙だ。電車男が流行っていた頃にDVDが販売された『バス男(現在は改題されてナポレオン・ダイナマイト)』をご存じだろうか。あれは主人公がバス通学をしていただけで流行に乗っかった酷い邦題だった。本作もそれと同等である。

 『世界の中心で、愛をさけぶ』という話題作があり、あれは恋人の死をテーマにしていた。つまり話題作のタイトルと話題になりやすいテーマを一緒くたにしてしまったのがこのタイトルとなる。なかなかにぶっ壊れている夫婦が籠城生活をする映画にも関わらず、タイトルは曲がりなりにも感動作風。はてさて展開はどうかと尋ねられれば……強いて言えば感動作といったところか。感動できるゾンビ映画という紹介をするのは難しい。

 ゾンビだらけの世界で物資が不足している。しかも建造物の中は封鎖されている。買い物にはいけないが住民の居ない部屋ならある。もしそんな状況になれば大抵の人は物資を盗み、生き延びようとするだろう。この夫婦だってそうだ。そして生きていれば他に生き延びている者も当然のように出てくる。助けたいと思ったところで物資には限りがあり、分け与えれば自分達の生命にも危機が迫るだろう。

 比較的まともな性格である夫と正反対な妻。彼らがどう生きて、どう対処していくのか。そんな姿をひたすら垂れ流しにしているような映画で、面白いところはどこかと聞かれても私には答えにくい。想像の範疇を超えることはなく、想定外の出来事でパニックになる人達もいない。まだ笑いがある分、ドラマではあるが『サンタクラリータ・ダイエット』の方が楽しめる。久しぶりにイマイチな作品だった。

〔 1158文字 〕 編集

原題:Cast Away
144分

 人一倍仕事熱心なチャック・ノーランドは誰よりも動き回り、誰よりも生産性の向上に努めている。荷物が届くまでの時間がどれくらいかを伝えるためにカウントしたままタイマーを送ってみたり、作業時間を従業員に意識させるべく何度も残り時間を口にする。また彼を必要とする者からの連絡があり、チャックは貨物機に乗って現地へと向かう。しかし貨物機は墜落してしまい、彼は無人島に漂着するのであった。

 無人島で生きていくのは非常に辛い。もちろんそんな経験はないが、無人島なんてものは今の便利さに満ちた世界とは対極にある世界だ。火も水もなく、満足な食料もない。幸いにもチャックが辿り着いた島にはココナッツがあり、海には魚も居た。しかしそれだけだ。よほどの偏食でなければ満たされることはなく、常に同じものしか食べられないとなれば嫌にもなるだろう。それに全てが生では温もりもありゃしない。

 最後まで火が使えないのかといえばそれは嘘になるが、チャックが満足に火を扱えるようになるまでには少し掛かる。その間は生のココナッツジュースと果肉。それと生の魚にカニ程度なものだ。精神的に強くなければとてもじゃないが耐えられそうにない。サバイバル生活をするベア・グリルスやエド・スタフォードの姿を見ているのは楽しいが、一生同じような生活をしろと言われても困るのだ。恐らく一週間保てばいい方だろう。

 サバイバル映画のイメージだと大半の人は結末で救助を想像するものだと思われるが、本作は救助された後のストーリーまで描かれている。よくよく考えれば当然ではあるが、救助されたからといってその人の人生は終わりやしない。死んだと思われていた状況からの生還。そして社会復帰。墜落前までは当たり前にあった人生の続き。その空白期間に積み上げられた自身の知らない時間を痛感させられてしまうのである。

 元々飛行機よりも新幹線に好んで乗る(景色を見ながら食事を楽しみたいだけだが)身としては、こんな事態に巻き込まれることはないだろう。しかし、それでももし飛行機に乗って墜落し、生き延びてしまうようなことがあれば……その時私は生きる努力が出来るだろうか。ボールが転がっていても蹴り飛ばしてしまわないか。命がある有り難みと、時間への考え方。そして意識の変え方。この映画からは色々と学べるだろう。

〔 999文字 〕 編集

原題:Bride of Re-Animator
96分

 ハーバート・ウェストとダンは戦地に赴き、治療をしつつ相変わらず実験を続けていた。そろそろ自分達の命も危ないというタイミングで帰国すると、彼らはまた同じようにいつもの場所でいつもの実験を再開する。今までは死体を蘇生するというテーマで活動していたウェストだが、死体を組み合わせて蘇生するというとんでもない実験まで行うようになり……。

 展開は前回同様で実験の成功と判断の過ちによる失敗を繰り返すもの。新鮮味は一切無いものの、彼らのおかしな行動はコミカルで笑える。基本的にはどの登場人物も目的を見失っているようで、どうしてそこでその行動を取ってしまうのかと思ってしまう。それにウエストはもう少し自分の性格を理解すべきだ。指の固まりにせよ詰めが甘い。

 序盤はおどろおどろしい気もするが終盤に向かうとコメディ色が強くなり、Happy Tree Friendsのような不条理でグロいギャグを見ている気分になる。実験がうまくいくのかどうかという観点では見ることができず、実験の失敗がどう繋がるのかという展開を期待してしまうのである。つい彼ばかり注目してしまうが、ダンもダンだ。

 前作のラストが出来心なのは分かる。今回も愛故の暴走だとは思う。しかし余りにも意思が弱い。全くストッパーになれていない。コミュニケーション能力に欠けるウェストの代わりに存在するだけの立場になっている。なんと地味なキャラクターだろうか。ERのジョン・カーターみたいな外見と性格だが、彼には根っこがない。薄っぺらいのだ。

 本作はサービスカットも控えめで、個人的には前作よりスプラッター要素が抑えられていたように感じた(配信でカットされているのかもしれないが)。デッドプール2同様に売りが弱くなっている印象を受けたのだ。ところがそんな内容でも2003年には続編が公開されている。今度こそはと期待して観てみたいが、現時点では配信タイトルに存在しない。いつか観る機会があれば気楽な気持ちで観てみたいものだ。#死霊のしたたりシリーズ

〔 888文字 〕 編集

原題:Re-Animator
85分

 ハーバート・ウェストは非常に優秀な科学者である。どこでどうやってそんな知識や技術を身に付けたのかは不明だが、彼は死者を蘇生させる血清を作り上げてしまったのだ。もちろん彼を信じるのは難しく、ダンも信じてはいなかった。しかし実際に死体を蘇らせてしまう姿を見てしまい、ダンも興味を抱いてしまう。猫だけで済めばまだ良かったのだが、幸か不幸か彼らの身近にはいくつもの死体があり、実験には最適な環境が揃っていた。

 死んだ生物をもう一度生き返らせる。そんなファンタジーを題材にした本作はB級でありコメディでもある。けれどもジェフリー・コムズ演じるハーバート・ウェストには狂気と普通ではない雰囲気が出ており、馬鹿馬鹿しさと共に妙なリアリティが生まれている。きっと現実でマッドドクターのニュースが出る度に、私は彼の顔を思い浮かべてしまうのだろう。真面目そうでまともじゃないオーラを纏う不気味な笑顔を……。

 B級スプラッターとしては文句の付けようがない映画で、割と可愛い女優の裸体が出てくる辺りもそれらしい。しかしウェストは色々と勿体ない男だ。実験第一で物事が見えなくなるのは仕方ないが、彼にはイフを考える力が欠けていた。頭なら頭だけ、体なら体だけと実験対象は分けておくべきで、それぞれと真正面から向き合うべきだ。好奇心に負けて死体から目を背けてしまったばかりに苦労してしまった。

 本作はクトゥルフ神話で知られるラヴクラフトのホラー小説が題材となっているが、そちらには目を通していない。元々彼はどこか抜けている人物なのか、それとも映画の展開を考えるにあたって隙を作ってしまったのか。そこだけでも知りたいのだが、そのためだけに中途半端な巻からラヴクラフト全集を買うのも微妙だ。果たして彼は希代の天才か、または奇跡を起こした馬鹿か。しばらく悩みは尽きそうにない。#[死霊のしたたりシリーズ]

〔 825文字 〕 編集

原題:Deadpool 2
120分

 最愛の恋人と再会したウェイドは幸せな毎日を送っていた。しかし恋人のヴァネッサが殺されてしまい、自暴自棄になってしまう。しかし超人になってしまったせいで自殺を図るも死にきれず、コロッサスからはしつこく勧誘を受ける。X-MENに見習いとして参加した最初の任務ではミュータント孤児のラッセルと出会う。ラッセルのためにデッドプールとして好き勝手な振る舞いをしてしまうのだが……。

 幸せを掴んだかと思いきや不幸な世界へと転がり落ちてしまったデッドプールはどこか覇気が無く、前作と比べたら勢いがなかった。その代わりに運の良さと意外にも高い身体能力が目立つドミノが活躍していたように思う。前作の暴走ぶりが10だとすれば、本作はせいぜい6といったところだろう。終盤では暴走ぶりも見られるものの、そこまでの控えめな面が長く印象に強い。物足りないというやつだ。

 アクションはあって随所の演出もそれらしい。本人が言っていたようにファミリー向けの映画といったらいいのか、せっかく良い豆を使って苦く香り高い珈琲を淹れた後で安いミルクをどばどばと投入したようなものになっていた。それはそれで美味しいのかもしれないが、珈琲とカフェオレは別物の飲み物だ。きっとこのデッドプールを求めている者も居るのだろう。だがイレギュラーな存在を求めていた私は落胆した。

 ここまで文句ばかり並べ立ててしまったが、本作も個人的には好んでいる。アクションが見たい。スプラッターも見たい。ついでにジョークや下ネタもあれば娯楽としては良い。そんな私の欲求を詰め込んであった。ところが残念なことにその引き出しは鍵が掛かっていた。いや、奥で何かが突っかかっていただけという可能性も考えられる。とにかく良い題材は眠っていたが、引き出しきれずに仕舞われてしまった。惜しい作品である。#マーベルシリーズ #デッドプールシリーズ

〔 816文字 〕 編集

原題:Deadpool
108分

 末期癌で死を待つ身となってしまったウェイドは藁にもすがる思いで怪しい男に連絡をする。おかげで癌は寛解どころか完治し、おまけに信じられないほどの能力を手に入れる。それはあらゆる怪我をすぐに治してしまう能力だったが、代わりに醜い外見となってしまうのだった。ウェイドは赤い衣装で身を包み、自身の外見を変貌させた者への復讐を誓って武器を手に取った。

 普段はマーベルどころかアメコミ全般を観ないのだが、それでもやはり話題作や注目作ともなれば耳にも目にも入る。アクション映画そのものは好きで勧善懲悪だって悪くない。だが、マーベルはヒーローが多すぎる。ちゃんと観ようと思えば時系列順か公開順に目を通さなければ、細部での謎を残したまま見終わってしまうのである。

 それでも何かしらは見ておきたい。そう思った時にちょうど良かったのが、コメディ色の強い赤くて変態で自分勝手なデッドプールだった。実際に映画を視聴してみてその選択に間違いは無かったと確信した。彼は私が思うよりもコメディリリーフ色が強く、下ネタが多く、私利私欲で好き勝手に動き回ってくれた。それはもう素晴らしいくらいに。

 アクションも演出もカメラワークも何もかもが好み通りで、好きな映画だと言える。今年観た映画で何かオススメを聞かれたら、パリの恋人と答えるだろう。……パリ? デッドプールは? と思ったかもしれない。そこにももちろん意味はある。何も考えずに楽しむ映画としては満点だろう。血や欠損といった表現が苦手でなければだが。

 彼は王道から外れたヒーロー(本人はヒーローではないと言っているが)で、正に邪道と呼ばれる存在だろう。作中でも彼の暴れっぷりは十分に伝わっている。しかしストーリー自体は想像の範囲にすっぽり収まってしまう程度には王道だった。もっと最後の最後で自身が物語のキャラクターだと理解した強みを発揮して欲しかったのだ。

 どう足掻いても勝てない相手に絶望してみたり、脚本を書き換えてその存在自体を無かったことにしてみたり。私が彼に求めているのはヒーローらしくないヒーローを上回る存在、もはや映画監督そのものとして暗躍する姿だったのだ。そんな物足りなさは残るが、面白い映画ではあった。引き続き続編にも目を通してみようと思う。#[マーベルシリーズ] #[デッドプールシリーズ]

〔 999文字 〕 編集

原題:The Lost Weekend
101分

 売れない小説家のドン・バーナムは重度のアルコール中毒だった。どうしても酒が呑みたいという理由で酒を窓の外に隠すほどだが、それも兄に見つかってしまう。兄と恋人は彼を心配しているのだが、彼は酒を呑めないストレスで苛立ってばかりいる。この物語は中毒症状の男がひたすら酒を求め、泥沼に沈み、道を踏み外す描写が続く。起承転結で言えば承のまま続き、静かな転換を迎えて結末へと繋がるのだ。

 最近はなるべくネタバレにならない範囲で少しばかり文字数の多い感想を心掛けていたものだが、この映画はあっさりした説明でもネタバレになってしまう。キーアイテムを触れればそれが全てに影響し、印象的な台詞がどこかへと続く。ビールでも呑まないとタイプ音も重く、さてどこをどう伝えたものかと悩んでしまう。

 アルコール中毒の症状が悪化していく過程と彼の静かな変化。時折入る回想と変わらない姿。人が駄目になっていく様子を描いた作品としては良いのかもしれないが、ひたすら悪路を突っ走っていく主人公を見ているのは辛くもある。作中の曲もおどろおどろしく、これはもはやホラーではなかろうか。

 この映画を楽しめる人は、様々な展開を思い描ける人だろう。ここでもし彼が酒を断っていたらという前提で未来を想像したり、ここまで悪化する前に彼女がなんとかできていたらと考えてみたり……しかしどれもこれも結局は酒である。要はこの作品にとって酒は切り離せず、主人公自体を代えるしかないのだ。なんとも哀れである。

〔 663文字 〕 編集

原題:기생충
132分

 その一家は半地下のアパートに住み、堕落しきった生活を送っていた。金もないのに内職の収入しかなく、煙草や酒を買うろくでもない日々だ。けれどもある日、ギウの友人で名門大学に通うミニョクが現れて家庭教師の仕事を紹介してくれる。採用されたギウは会話の中で家族のギジョンを紹介し、そのギジョンは父のギテク、ギテクは妻のチュンスク……といったように身分を偽って数珠繋ぎで家族全員が終結していくのであった。

 嘘で塗り固められた一家が金持ち一家にしがみつき、豊かな生活を送る。その様は正にパラサイトであり、よくもまあここまでやれるものだと思う。韓国映画には利益の為なら何でもやるような凄まじい人物が割と多い。その中でも凄まじさを煮詰めた人々が集結しており、彼らの姿を見ているからこそ終盤の展開や結末にも納得できる。1人だけかわいそうな気もしたが、悲惨な目に遭わせてしまうのも特有の展開といえよう。

 やっていることは非道で非常。どんな目に遭おうが因果応報ではあるのだが、所々で人間性が見え隠れているせいか比較的善人でも悪人に見える時はあり、反対に悪人が善人……または被害者のように見える機会もある。こうなっても仕方ないと思う反面で、ここまでいくのはどうだろうと味方になってやりたくもなるのだ。だがまあ近付きたくはないし、これはあくまでも傍観者としての見解に過ぎないだろう。

 実際に見て一番に思ったのは、人間のいやらしさがよく出ているといったところだろうか。前評判やそれまでのイメージ(とりわけ日本版の映画ポスター)から想像していた内容とは少し違った。てっきり最初から最後まで地下生活を送る一家の物語だと思っていたのだ。冒頭でいきなり出鼻をくじかれてしまったわけだが、起承転結をしっかり描こうとすれば避けられないのも事実。あれは回想で描いても地味で退屈だ。

 いつも通り洋画を観るつもりで映画を漁っていて、ついうっかりNetflixに追加されていたからなんとなく観てしまったが、思いのほか悪くなかった。ぶっちゃけた話をすると、数々の受賞歴も信用していなかったのだ。唐揚げやモン何とかセレクション、吹奏楽部の金賞並に一定水準を満たしたものを評価するものと同等に考えていた。その考えを良い意味で裏切ってくれて、時間を割くだけの価値はあったと思わせてくれた。

 ……とまあ、ここまでは割と良い部分について語ってみた。しかし個人的に名作ではない。思っていたよりは良かったが、そこで評価は止まっている。色々とご都合主義な面もあり、説明不足に感じる部分もあった。そしてなによりも展開が分かりやすすぎた。蛇口を捻れば水道水が流れ、コップに入らなくなれば溢れる。自然の摂理をそのまま表現したシンプルなストーリーが合わなければ迷作にもなりうる一本だろう。

〔 1193文字 〕 編集

原題:내가 살인범이다
119分

 チェ・ヒョングは連続殺人犯の事件を捜査していたが、危うく殺人犯に殺されかける。しかし命までは奪われずに、その恐ろしさと強かさを宣伝する広告塔として生かされることとなる。それから17年の月日が流れ、ある日真犯人を名乗る男がメディアに姿を現して事件内容を赤裸々に描いた本を出版するという。当然ヒョングは画面に映る男を睨み付けるが既に事件は時効を迎えており、彼を逮捕することは不可能だった……。

 チョン・ジェヨンが演じる野性的でワイルドな刑事のヒョングと、パク・シフのクールで謎めいた姿が対照的な殺人犯のイ・ドゥソク。2人のやりとりが主軸であり、どちらかの性格や外見が合わなければ恐らく映画自体もいまいち楽しめないだろう。個人的には本作のジェヨンが昔働いていた会社の社長にそっくりで、「社長すげえ!」「社長強い!」と変な感覚を抱きながら観ていた。そういえばあの社長も酒浸りだったなあ。

 ちなみにこの映画、韓国で実際にあった未解決事件からインスピレーションを得ている。その事件を題材にした他の映画としては『殺人の追憶』というものがあり、こちらも気になってはいるが観ていない。他にも本作をリメイクした邦画に『22年目の告白 -私が殺人犯です-』もある。評判は悪くないが、リメイクということでどちらかを見たらどちらかを純粋に楽しめなくなる。残念ながら邦画は観ないまま終わるだろう。

 それでは感想に戻ろう。はっきり言うと最初は単なる刑事の復讐劇と思っていた。しかしそれぞれの思惑やストーリーが絡み合って深みのある展開が待っており、想像以上に丁寧な脚本を楽しめた。随所に入るアクションもそれなりに見応えがあり、コメディ要素は良くも悪くも印象的だった。『コンジアム 』でつのった不信感を払拭するだけの力はある。それに『新感染 ファイナル・エクスプレス』よりは人に勧めやすい。

 余談だが社長に似ているという私の感想は共感を得られないだろうが、真犯人を名乗る人物の姿がお笑い芸人の誰かさんに似ているという感想は共感を得るかもしれない。途中まではぎりぎり別人に見えていたのだが、生物としての気持ち悪さが強く出始めると髪型と表情が気になり始め、私もラッセンが好きだと余計なことを口走りそうになった。癖の強い女学生もタンポポを思い出してしまい、妙な気持ちになる。

 アジア映画だから日本人の誰かに似ているという感想を抱いてしまうのが欠点ではあるが、映画そのものは純粋にエンタメとして、サスペンスとしてもしっかり楽しめる。思いのほかアクションが多く、引きでピンボケ気味に写せばいいものをしっかり写すせいで違和感の目立つ3DCGも気になるが、そこはもう目を瞑るしかない。どんな駆け引きを経てどう結末を迎えるのか。その一点に集中しよう。

〔 1185文字 〕 編集

原題:Jungle
115分

 人は未知の存在に恐怖する。しかし同時に興味も抱いてしまう。好奇心とは常に未知というスパイスを孕んでいるものなのである。主人公のヨッシー・ギンズバーグは現地で知り合った友人2人にガイドの1人を加えた4人でジャングルの奥地へと進む。だが、ジャングルには彼の想像を遥かに上回る危険と恐怖が潜んでいた……。

 魔法を使っている子役のイメージがしばらく付き纏っていたダニエル・ラドクリフがジャングルを舞台に生きる。最初は顔を見る度に妙なイメージがちらついていたものだが、物語が進むにつれて彼はヨッシーにしか見えなくなっていく。こう書くとそれはそれでまた違った意味に受け取られかねないが、心配は杞憂に終わったのだ。

 主な登場人物は4人と少ない上に、終盤はほぼ1人で演出や演技が重要になる展開が続く。このような内容だと俳優によっては間が持たず、演出によっては退屈な時間にもなりやすい。けれどもダニエルの演技は見る者を引き込み、極限状態の人間が見てしまうものを表現することで観客を飽きさせず、より作品の魅力を引き出している。

 作品としては面白く、実話が基になっているとは思えないほど単体の映画として昇華されている。個人的にはおすすめしたいところだが、割とスプラッターな要素もある。未開の部族と『グリーン・インフェルノ』のような展開はないが、動物が悲惨な目に遭うのは間違いない。そういったものへの耐性があり、サバイバルが好きな人には見てほしい。

〔 655文字 〕 編集

原題:Peppermint
102分

 ライリー・ノースには大切な家族が居た。金持ちの主婦からは馬鹿にされ、娘の誕生日パーティーを台無しにもされた。けれどもめげず、家族で楽しもうと外出する。それは確かに楽しい時間で、後になって振り返ればきっと良い思い出になる。誰もがそう思っていたが、幸せなひと時は麻薬密売組織の襲撃によって打ち砕かれてしまうのだった……。

 この作品の主人公は主婦だ。とびきり優秀な外交官 ですらない。そんな主婦が生き残り、復讐を決意することで物語が始まる。しかし彼女はいきなり復讐を実行するのではなく、確実に復讐を完遂することを考えて自らを鍛え上げた。5年もの月日は彼女を優秀なソルジャーへと鍛え上げ、恐ろしいまでの強さを発揮していく。

 少しは危険な目にも遭うが、彼女が桁外れに強いおかげで緊張感は特にない。安心して見ていられるアクション映画と言えるだろう。それもそのはず、監督はピエール・モレルなのだ。リーアム・ニーソンが敵を圧倒する『96時間 』の監督と考えれば、主人公が強くとも違和感はない。むしろ弱い方が強い違和感と動揺を誘うだろう。

 ジャンルとしてはスリラー映画、またはスリラーかつアクションらしいがスリラー要素はほぼ無い。最初から最後まで分かりやすく大味なアクション映画だ。一体誰が内通者でライリーは大丈夫なのか? とはらはらさせてくれたらよかったのだが、内通者として疑える候補がそもそも少なく、ライリーは極端に強すぎた。

 映画に小難しい説明はいらない。面白ければそれでいい、という方には十分楽しめる作品だとは思う。復讐劇のアクション映画としては名作だと言う方も中には居るだろう。ただ個人的にはいくら鍛えたとはいえ、ただの主婦がここまで強くなれるのかと気になる。ついでに強くなるまでの描写が薄く、説得力は正直弱い。

 平凡な主婦から強靭な女戦士へと変化するライリーを演じたのはジェニファー・ガーナー。特に何の意識もせずにこちらの映画を観たのだが、奇しくも昨日レビューした『ザ・コンサルタント 』で主役を演じたベン・アフレックの元奥さんである。いっそのこと二人が互いに親権を争うアクション映画を観てみたいと思うのは悪趣味だろうか。

〔 956文字 〕 編集

原題:The Accountant
128分

 どうみても強そうな会計士が優秀な仕事ぶりを発揮しながら迫りくる障害を跳ね除けていく。たったこれだけの文章で説明できる作品だが、いわゆるセガール作品や私が愛してやまないリーアム・ニーソンの映画よりはいくらか背景や目的、伏線といったものが用意されている。まあ最後まで安心して見ていられるのは前述した作品と変わりない。

 会計士がなんで強いんだと思われそうなものだが、きちんと説得力があり納得もできるだろう。彼にはそういう仕事を選ぶ理由があり、強くなれたのも鍛錬に因るものだ。家の中で暴れているシーンの時点で力はあるのだから、順当に鍛えて腕を磨かれたらそりゃ誰も敵わない。対抗できる人物が限られるのも当然だろう。

 作中だと主人公の抱える発達障害が問題として顕現する機会は殆どないが、もし彼に何もなければ知能も人並みになり、体を鍛えることもなかったかもしれない。この辺りの設定や背景の作り方はうまく、見事に活かしきっている。展開についても語りたいところだが、語ると楽しめなくなる恐れもある。これは主人公が極端に強い作品の宿命といえる。

 ちなみに以前別の感想でも書いたが、いくら内容が気になっても決して某百科事典を見てはいけない。こちらもせっかくの面白い要素をあけすけに書かれてしまっている。あらすじ本来の意味が作品の起承転結を表現するものだとしても、こういった作品のあらすじは予告程度に留めてもらいたい。ああいうものは日記帳にでも書いた方がいいのだ。

〔 661文字 〕 編集

原題:Blade Runner 2049
163分

 映画やSFが好きな者であれば、きっと『ブレードランナー』や『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』というタイトルを知っているだろう。本作は『ブレードランナー』の正当な続編であり、前作に出演した俳優も登場する。ファンからすれば続きを楽しめるだけでも嬉しいものだろう。映画自体が丁寧に作られており、ちゃんとした内容の正当な続編ともなれば当然評価も高くなりやすい。しかし30年以上の月日は長かった。

 私も前作は観ており、原作も読んでいる。好きか嫌いかと問われれば好きだと言おう。あまりSFを積極的に嗜む方ではないが、それでも名作と聞かされたら興味を抱く。前作を楽しんで、今作も楽しんだ。だが、正直に言おう。既に前作の知識はほぼ失われている。ぼんやりと浮かび上がる蜃気楼のような記憶をたよりにストーリーの繋がりを考え、これはどういうものだったかとたまに困惑しながら観てしまった。

 映画自体は面白く、わざわざ前作を見直さなくとも本作だけで楽しめる。前作を見て、より理解を深めてからだと更に楽しめるだろう。問題は私のように、中途半端な記憶がある者だ。妙な先入観と記憶が邪魔をしてしまい、せっかくのエンターテインメントを台無しにしてしまう。前作を映画館で観たわけではないが、それにしたって観たのは随分と前だ。いっそ記憶がなければ、それか見直していれば純粋に楽しめていたに違いない。

 本作は期待も大きかった分、色々と力を入れている。関連した短編作品が3本も作られており、現在もYouTubeで視聴可能である。時系列順でまずは『ブレードランナー ブラックアウト2022』を観てから、『2036: ネクサス・ドーン』『2048: ノーウェア・トゥ・ラン』と続けて観るとより楽しめるだろう。本編を観る前に映画1本、短編作品を3本も観るのはなかなかにハードルは高いが、映画を全力で楽しみたい者は観ておいた方がいい。

 もはや映画そのものではなく前作や関連作の話題ばかりになってしまったが、興味を抱いた者からすれば期待通りの内容を楽しめる。ロボットやアンドロイド、近未来といったものが好きであれば見る価値がある。別に興味がなくともアクション映画を求めている者にもマッチしている。ついでに言えばアナ・デ・アルマスは可愛く、シルヴィア・フークスは美しい。好みの女優目当てに観てみるのもいいかもしれない。

〔 1034文字 〕 編集

原題:Inception
148分

 夢には突拍子もなく奇妙な展開を見せる荒唐無稽なものから、いやに落ち着いていてそれが現実ではないかと錯覚するようなものまであり、夢か現実かをはっきりと自覚するのは難しいだろう。夢の中で夢と気付き、自由に動き回る明晰夢というものもあるが、この映画ではその明晰夢をより複雑に、自在に扱えるようにしたような潜在意識の世界を舞台とする。もっと簡単に言えば、頭の中でディカプリオが好き勝手に動き回る話だ。

 ディカプリオ演じるコブは産業スパイである。といっても現実で会社に忍び込んで情報を盗むのではなく、好みの異性を送り込んで傀儡にしてしまうというものでもない。特殊な技術を用いて脳内へと入り込み、頭の中で情報を得たり植え付けたりしてしまうのだ。潜在意識の中でそうした操作が加えられたとしても、大半の人物は気付くはずもない。無意識のままに情報を漏らしてしまい、意図的な行動を無意識のままにとってしまうのだ。

 しかし今回の相手はそう単純ではなかった。色々と手を打ったにも関わらず、コブ自身の問題もあり失敗してしまう。そこでどう対処していくのかという流れになるわけだが……これがまた地味にややこしい。夢は多層構造になっているという設定だけでも参るが、そこに時系列の問題まで絡み、何が何やら分からないままに終わってしまったという者も居るだろう。だが、それでも映画自体は面白く感じたという者はもう一度最初から映画を見直して欲しい。

 順を追って疑問点を解決していけばそこまで難しくもないだろう。冒頭とラストの共通点は何か。どこからどこまでが何層での出来事か。その世界は何だったのか。夢か、それとも現実か。明確な答えはないが想像する余地ならいくらでもある。考察が好きだという方はぜひ一度、いや、二度三度と目を通してもらいたい。ちなみに某百科事典にはクソみたいな粗筋が載っている。ストーリーが気になってもそちらは見ない方がいいだろう。

〔 837文字 〕 編集

原題:Looper
119分

 あらすじ(この場合は内容の全体像ではなく、冒頭に触れるものとして扱う)というものは重要である。それがどんな作品なのかを判断する大切なポイントで、あらすじの時点で気にならない作品を手に取る者は居ないだろう。この作品を見ようと思ったキッカケは間違いなくあらすじだが、どうもあらすじの表現が過剰演出だったように感じる。それだけ私は落胆したのだ。

 未来にはタイムマシンがある。犯罪組織はタイムマシンを悪用して、標的を過去に送り込んでルーパーという暗殺者たちに殺させる。ルーパーには任期のようなものがあり、最後は自分で未来の自分を殺さなくてはならない。主人公であるジョーにも未来の自分を殺す日が訪れてしまい、殺し損ねてしまう……という一連の流れが物語の動き出すターニングポイントである。

 短くまとめてしまえば、ついに自分を殺す日が来たけど動揺して逃しちゃった。うむ、なんて情けない説明だろうか。確かにあらすじで表現を盛りたがる気持ちもわかる。しかしそのあらすじで私は、「これは近未来を舞台にしたサスペンス・アクションか?」と思ってしまった。ところが蓋を開けてみればサスペンス要素はかけらもなかった。

 映画自体は分かりやすく適度に面白いとは思う。ただ色々と気になる点もある。タイムマシンを悪用するにしても、わざわざ本人を送り込んで過去の暗殺者に始末させ、わざわざ大金を払うのはどうなのか。幼い本人を直接その時代で殺すよりはいいとはいえ……なにか他に良い方法はないのか。他にもっと便利な道具は出来ていないのか? 暗殺が雑じゃないか?

 ハードSFを好むガチガチのSFファンがターゲットではないのだろうが、軽いSFにしたってもう少し説得力や科学っぽさを見せて欲しかった気はする。深く考えず、ちょっと変わったアクション映画として見ればある程度は楽しめるだろう。決してタイムマシンやSFといった言葉、あらすじに期待しすぎてはいけない。B級映画と思って楽しもう。

〔 856文字 〕 編集

原題:Funny Face
103分

 世の中には平々凡々とした生き方を選ぶ者が多い。それには芸能界のような華やかな世界にはついていけないと思ったり、元々そういった世界に興味がなかったりとそれぞれの理由がある。この作品の主役であるジョーは自分が芸能界でやっていけるとは思っておらず、そういった職業自体に興味を抱いていない。しかしひょんなことから大役のモデルを任されてしまう。

 ジョーを演じる女優はオードリー・ヘプバーン。作中ではメイクをしてからその美貌を誰もが認めるのだが、本屋で働いているただの店員として登場した瞬間から誰よりも輝いている。この美貌に気付かない連中に一体何が分かるのかと文句を言いたくもなるが、もちろんその魅力に気付く者がいるおかげでモデルへの道が拓けるのだ。

 モデルになったジョーと写真家のディック。そして編集長であるマギー以外は目立たないが、コミカルな動きのミュージカルと合わせて終始心地よい気持ちで三人の姿を見ていられる。展開はありきたりとも言われそうなものだが、無駄のない演出と地味になりがちな箇所でのミュージカルが飽きさせない。特にカフェでのダンスは色々な意味で凄い。

 脚本の面白さに加えてミュージカルの楽しさ。オードリー・ヘプバーンの美しさにフレッド・アステアのダンスと本作の魅力は多い。ケイ・トンプソンもありがちな作品ではひたすら性格の悪い役になりがちだが、少し癖が強いだけで良い性格をしている。魅力的な三人の異なる個性は相乗効果を産み出し、良質な世界観を作り出す。間違いなく今でも楽しめる良い作品である。

〔 682文字 〕 編集

原題:The Killing
85分

 独創的な映画ばかり作る印象のある監督といえばスタンリー・キューブリックだろう。そんな彼がハリウッドで最初に作ったのがこちらの作品である。内容は手っ取り早く大金を手にしたい連中が計画を練り、競馬場の金を狙うというもの。計画実行までの人間性が際立つドラマパートにスマートさの光る強盗パート。そして結末が待ち構える。

 計画自体はよくできているが、何故そこにその人物を選んだのかという疑問点は残る。ああいう性格だから利用しやすいと考えるべきか、あるいは他がまともだったから彼しかいなかったのか。何にせよ計画に欠かせない人物ではある。きっと他に誰もいなかったのだろう。ついでに他の疑問点もある。それはある人物らとの交渉シーンである。

 その計画には協力者が必要で、協力者には詳細を明かすわけにはいかない。もし彼らが手にする大金の額を知ってしまえば、多額の報酬を要求してくる可能性が高いのだ。それで協力者には詳細を隠し、彼らからすれば大金(強盗で得る額からすればはした金)を支払う。詳細は明かさない。その代わり協力すればこれだけの金をやるぞ、と。

 もちろん彼らは食いつく。しかし彼らも馬鹿ではない。何故この程度の協力で大金を得られるのだろうか、と疑問を抱くのだ。この程度の内容なら自分である必要はない。それにもっと安く済む。さてはもっと大金が手に入るのだろうと。そうと分かれば彼らも黙ってはいない。協力はする。その代わりに分け前をよこせ。これは当然の流れで、これまた当然の要求である。

 ここで私は口約束をして反故にするのか、過少申告して少ない分け前を与えるのか……と考えていた。しかし彼らはごねる割にあっさりと引き下がる。依頼内容を怪しむ者が居るのはいい。誰も疑わないのは不自然だろう。けれどもこうさっぱりしていると違和感がある。これならもういっそのことごねる展開は不要だったのではないだろうか。

 最後に疑問点を書いてしまったが、全編通して気になった箇所といえばそれくらいのものである。彼が仲間でなければ最後の展開には至らないわけで、いささか不自然ではあるものの協力者が納得しなければ計画もうまくいかないだろう。演出はキューブリック監督らしく、いやに人間らしい彼らのやりとりもうまい。フィルム・ノワールに興味があれば是非観てほしい。

〔 998文字 〕 編集

原題:Survivor
97分

 優秀な外交官であるケイトは日々職務を全うしている。その日も彼女は怪しい人物を見つけては本当の目的が何かを突き止めようとするのだが、同僚に邪魔されてしまう。彼女が疑い深いだけで何も問題はない――と思われたが、ケイトの直感は当たっていた。その人物を疑い、調べてしまったがためにケイトは命を狙われる羽目になってしまう。

 命の危機に曝されつつもなんとか生き延びて、ケイトは一人で行動していた。しかし運悪く容疑者の濡れ衣を着せられてしまい、着々と悪人へと仕立て上げられていく。けれども彼女はそこら辺の警察ではとても太刀打ちできない。何故なら彼女は優秀だからである。……そう。いくらなんでも優秀なんて言葉では説明できそうにないが、そう説明するしかないのだ。

 いっそスパイであって欲しいくらいに優秀な外交官と、噂の割に女一人仕留められない伝説的な暗殺者。もう少し設定はなんとかならなかったのだろうか。多少のパニックはあっても冷静になるのが早すぎる気もするし、暗殺者はヘマが多すぎる。最後の方も容疑が晴れていない割にあっさり和解しすぎというか……。脚本に難はあるが、娯楽映画としては悪くもない作品だろう。

〔 522文字 〕 編集

原題:The Foreigner
110分

 テロに巻き込まれて娘を失ってしまった中華料理店の経営者クァン。彼は首謀者への復讐を考え、名前を知りたがる。しかしそう簡単に名前を教えてもらえるはずもなく、クァンの行動は過激になっていく。観客も途中から明らかに普通じゃないと気付き始め、なんだこの老人は……と思い始めたところで正体を知る。ネタバレではあるが、彼がただの経営者だとは思えないだろうから書いてしまおう。クァンは元工作員だったのだ。

 ここまで書いてしまえば映画好きなら想像できる通り、クァンは年齢を感じさせない身体能力と知識で恐ろしいほどの行動力を発揮する。テロの首謀者が誰なのか。クァンはこのままどこまで暴走してしまうのか。彼がやられてしまう展開は一切想像できないまま、物語は複雑そうに見せて意外にもシンプルな構造のまま進行していく。

 色々と捻ってはいるものの、アクション映画の枠からは出ないまま本作は終わる。何らかのはっきりした結末を求めている者には物足りないまま幕を閉じてしまうので、消化不良だのなんだのと文句を言いたくもなるかもしれない。007シリーズで知られるピアース・ブロスナンと、アジアのアクション映画では説明不要のジャッキー・チェン。彼らの演技を楽しむのが本作の醍醐味ではないだろうか。残念ながらアクション要素はジャッキー・チェンにしかないが……。

 ちなみに本作で登場する組織や名称等には実在するものがあり、恐らくはそういった歴史的背景を知っていれば更に深く楽しめるだろう。とはいえそこまでの知識がない私でもアクション映画として楽しめたのだから、わざわざ調べて知識を身につける必要もない。どちらかの俳優が好きで、アクションが観たい。そんな理由でもいいから、気負わず楽しんで欲しい一本だ。

〔 773文字 〕 編集

原題:The Taking of Deborah Logan
90分

 アルツハイマーの老婆を取材していると様々な恐怖に襲われる作品。老婆の演技やちょっとしたグロ表現はホラー映画としてはそれなりだが、恐怖心を煽る手法がベタな上に音やカメラの揺れといったものに頼りすぎている印象を受ける。ドキュメンタリーらしさとホラーらしさを追求しすぎたのか、結局これは何だったのかと首を傾げてしまう。ちょっとしたグロ要素やモキュメンタリーを求めていれば悪くないのかもしれないが、ターゲットがよく分からなかった。

〔 266文字 〕 編集

原題:Good Will Hunting
127分

 大抵の人は優れたものを欲しがる。それは外見であったり、誰もが舌を巻く頭脳であったり、誰からも愛される人柄であったりと様々なものがある。本作の主人公であるウィルは外見も頭脳も優れており、本気になれば大抵の夢を叶えられるだろう。しかし彼は定職にも就かずに清掃員として働き、端から見れば非常に勿体ない生き方をしていた。

 もちろん彼がそんな生き方を選んだのには理由があり、自身の考えから今の人生を歩んでいた。才能を活かさない日常を送り続けるつもりだったが、彼も好奇心には勝てなかった。ある日の清掃中につい数学の難問を解いてしまい、お節介な教授に目を付けられてしまうのだ。そのせいでウィルの人生まで少しずつ変化していくのだが、性格まではそうそう変えられない。

 厄介な理由からこじれてしまった性格で様々な人に迷惑を掛けながら、彼は心を開ける相手を見つける。決まった時間の限られたコミュニケーション。長い時間を掛けて積み上げられた高く堅牢な壁にも小さな穴が空き、その穴は少しずつ拡がっていく。その穴から光が差したその時、ウィルはようやく本当の自分を曝け出すことになるのだった……。

 頭の良い非行少年の成長記。本作を一言で表現するとしたらそんなところだろう。しかし丁寧に練られた脚本と憎い伏線は、たとえ分かっていたとしても涙を誘う。道を間違えた時に正す存在ではなく、道を照らしてくれる存在。それに心から成功を願ってくれる親友。人と共に生きる難しさや喜び。本作を観れば大切な人と生きる日々の美しさを知ることができるだろう。

〔 705文字 〕 編集

原題: Stranger Than Fiction
112分

 どの作品にも欠かせない存在というものはある。誰もが魅了される愛しいヒロイン? 知恵と狡猾さで観客を苛立たせる憎たらしいライバル? 違う。彼らは存在しなくとも成立する。当たり前すぎて忘れてしまうが、作品に欠かせない存在といえば主人公である。主人公が存在しなければ作品には何の展開もない。ただ地球を写しているだけの映像であれば、主人公は地球そのものだろう。机の上にあるだけのボールペンですらも、そのものを捉えていれば主人公である。

 この作品における主人公はハロルド・クリック。規則正しい生活を送る一人の人物でしかない。彼はいつも通りに生活していたが、ある時からふと声が聞こえるようになる。その声が自分の行動を細かく描写することに気付き、彼はこの声の正体を突き止めようとするが……聞きたくも無かった言葉を聞いてしまい、自分の運命から逃れようと奔走する。

 私たちは意思を持ち、自身の選択によって行動するだろう。空腹だと思えば食事を……いや、あえて空腹のままでいるかもしれない。トイレに行きたくても我慢する人だっているだろう。誰がどう選択しようと、それは当人の自由である。勤務中に仕事をしなければ注意もされるだろうが、休暇中に遊んでいようが何も言われない。私たちは人生を送り、道を選び続けるのだ。

 だがもし、自分の行動が誰かの意思によって決められていたら。そう考えるとぞっとしてしまう。なんとなく選んだ珈琲も、誰かがその珈琲を飲むように仕向けたのかもしれない。自分の意思で諦めた道も、本当は諦めなくて良かったのかもしれない。そこに自分の意思はなく、誰かの筋書きで動かされているのだとしたら……そう思うと、何もかもが信じられなくなる。

 本作の主人公は声に気付き、自分の運命を知った。だからこそ自ら運命を切り開こうと今までに無い行動を取り始めた。ナレーションと主人公の行動。同じようなテイストのゲームに『The Stanley Parable』というものがある。こちらはナレーションと違う行動をとると天の声が牙を剥く。本作とは無関係だが、興味があれば是非遊んでみてほしい。

 この感想を読んでいる者も、恐らくは自分の意思で文章に目を通しているのだろう。けれどもそれを保証する者はおらず、確信を抱くのも難しい。今文章を認めている私自身ですら信用は出来ない。考えれば考えるほどに恐ろしくなる、主人公である自分自身の人生。果たしてその人生は誰が描くものなのか。決まり切った人生に疑問を抱いた時、この作品に触れてもらいたい。

〔 1102文字 〕 編集

原題:The Blair Witch Project
81分

 今となってはそこまで珍しくもないモキュメンタリー・POVの大ヒット作。ドキュメンタリー映画を撮影しに、伝説の魔女がいるという森の中へ向かい、そのまま失踪してしまった学生たち。彼らのビデオ映像を編集し、そのまま映画化した――という内容になっている。正直に言ってしまうと企画や話題性ありきで、今見ると驚きはない作品だろう。

 学生という設定もあり、彼らのインタビュー映像やふざけている姿は洗練されていない。ひたすら他人のホームビデオを見せられているような気分にもなるが、その素人臭さがなければこの作品は成り立たない。もしこれが事実だとしたら、これには一体どんな理由があったのか……と考えるような、陰謀論や考察が好きな者には今でも面白い映画なのかもしれない。

 もし本作がヒットしていなければ、今頃はB級映画ファンがたまに思い出す程度の扱いだったかもしれない。ただ本作はヒットした。ヒットしてしまったおかげで記憶に残り、ヒットしてしまったせいで一定の評価も得てしまった。決して悪い映画ではないが眠気を誘い、ホラーを期待して肩透かしにもあう。話題作だからと期待せずに、軽い気持ちで観た方がいいだろう。

〔 547文字 〕 編集

原題:Exam
101分

 色々と謎が多い企業の就職試験会場には8人の男女が集まっていた。試験監督が口を開き、彼らは試験に備えて集中していくが……いざ試験用紙を捲るとそこには何も書かれていなかった。白紙の試験と制限時間。彼らは試験監督の言葉を振り返り、問題を見つけようとする。ルールは何か。ルールの真意とは。ある受験者がルールの意味を理解したところで物語は動き出す。

 限られた舞台、決まったシチュエーションでの映画はそれなりに存在する。棺桶に閉じ込められて土の中に埋められた男が主役の『リミット』や、電話ボックスを舞台に口先だけでなんとか事態を乗り越えようとする『フォーン・ブース』は個人的にも気に入っている。ただ本作の場合はそれらの作品とも違い、部屋を移動しない『キューブ 』といった方が分かりやすい。

 どうにかして試験に合格し、高額な報酬を手に入れたい。だからこそ仕方なく協力しあうのだが、採用予定の人数はすでに決まっている。お互いの本質を露わにしながらも目的の為に行動し、裏切る。彼らがどういう立場で問題が何なのかといった点は割と分かりやすいが、個性が絡み合って退屈させない作りになっている。人間ドラマファンのみならず、脱出ゲームやひらめきを重視するクイズ番組辺りが好きな方におすすめしたい。

〔 559文字 〕 編集

原題:Soylent Green
97分

 人口は増え続ける一方で食品は枯渇し、今まで一般的だった食品の価値が高騰した未来。職も安定せず、そのままでは死ぬしかないような人々も多い。しかし彼らには食べ物があった。ソイレント社が作る味気ない食材――ソイレントである。ソイレント・イエローにレッド。新しく作られたグリーンと種類もあり、原料もそれぞれ異なるがどれも美味しいという声はきかない。

 現代の人からすれば人らしからぬ生活を送る貧民達の姿が目立つが、富裕層は対照的に恵まれた生活を送る。ある高級住宅街にも他人が羨む日々を送る者が居た。その者は暗殺者に命を狙われるが抵抗もせず、死を受け入れる。彼はどうして抵抗しないのか。死を決意するほどの何を知ってしまったのか。物語は彼の死から大きく動き出すことになる。

 彼の死を担当した優秀な刑事ソーンが事件を調査するシーンが殆どであり、激しいアクション要素もそう多くない。どこか薄暗い空気のまま、じわじわと真相に近付いていく。どうしてその秘密を知った者は死を選ぶのか。何故他の人にまでその選択は伝染してしまうのか。その世界にあるものは何か。ソイレントとは何であるか。恐ろしい世界を観てみたい方におすすめしたい。

〔 539文字 〕 編集

原題:Identity
90分

 死刑執行の前夜になっての再審議とモーテルでの殺人事件。物語は同時進行で進み、観客は二つの出来事の関連性を見出そうとするだろう。そして関連性を見つけた時、ふと勘違いに気付く。しかし勘違いはそれだけでは済まず……。この作品はサスペンスだが、単に犯人を当てるだけでは終わらない。モーテルに集まった人々の共通点とは何か。何故カウントダウンされていくのか。どうして鍵があるのか、誰なら出来るのか。整合性を意識しすぎず、どうやったらこうなるのか……と考えれば真相に気付けるかもしれない。二転三転と裏をかかれる構成は巧みで、最後のシーンは色々と考えさせられる。ガチガチのミステリーやサスペンスは好まず、普段はファンタジーやクライム映画を観るような方におすすめしたい。

〔 354文字 〕 編集

原題:Ascenseur pour l'échafaud
92分

 ある目的の為に準備をしてきた男が計画を実行し、成功する。しかしお粗末な後処理のせいで現場に戻ることとなり……。展開としてはよくあるサスペンスだが、事前準備に力を注いでいたくせにどうしてそれを忘れるのか? と首を傾げてしまうストーリーは賛否両論だろう。動転していると言えばそれまでだが、ある場所から出る為に試行錯誤する様もスマートには見えない。視点が変化しながら様々な姿が映し出される演出が目立ち、気付けば主役も代わっている。面白いのは確かだが、色々と理不尽で納得しにくい箇所はあった。悪くはないものの、サスペンスに完璧さを求める者には物足りない作品だろう。

〔 324文字 〕 編集

原題:Brazil
142分

 一見少し物騒なだけの未来。しかしその世界は監視社会であり、もし何らかの違反行為をしようものなら捕まってしまう。それだけで済めばいいが、取り調べでうっかり殺されてしまうこともある。現代社会なら法廷で解決できそうなものだが、この世界ではそうもいかない。不都合なものを見てしまい、強く訴え出ようとすればやはり捕まる。しかし誰しもが監視しあっているような世界にも見えず、権力者が極端に優遇されているのを実感する程度である。本作の主人公は、そんな窮屈な世界で夢に見た女性と遭遇し、共に暴走する。終始やっていることはめちゃくちゃで不可解な上に所々ユーモアが挟まれる。しかしそれが独特な世界観に繋がっていた。もしその辺りの演出がなければ眠たいだけの凡作になっていただろう。どこかでありそうなリアリティと、浮世離れしたシュールレアリスム。一風変わった作品を探している方におすすめしたい。

〔 411文字 〕 編集

原題:The Shawshank Redemption
143分

 生きるとは何か。命とは何か。幸いにも現代の世の中では、あまり深く考えてこずとも人が人らしく生きる権利を持って生まれる機会が多い。漠然としたビジョンすらも無いまま、人生というものを享受している者が殆どだろう。この作品に出てくる彼らは罪を犯している。主人公にしたって、彼の妻からしたら何らかの不満があり、それは一つの罪であろう。しかし罪の重さを自覚した者達は、長い刑務所での生活によって変わる。ところが彼らは塀の中しか知らず、塀の外を知らない。これまでの常識が通用しない世界に出ても戸惑い、苦しんでしまう。それでもどうにか生きていく為に必要なもの――希望の大切さを学ばせてくれる。自分の人生に絶望している方や、今をなんとなく生きている方々に。人生を考えるきっかけとしておすすめしたい。

〔 386文字 〕 編集

原題:Mulholland Drive
145分

 殺されそうになった人物が幸いにも交通事故によって助かり、記憶喪失になりながらもなんとか生きながらえて新生活をスタートさせる。冒頭はこんな展開で、どうして殺されかけたのか? この鍵は何だ? と小さな謎が襲いかかる。しかしそれらは小さな謎どころではなく……。どう説明したら良いものか悩む上に、どう解釈したらいいのか正解が分からない作品でもある。夢と現実が入り乱れ、時系列までもがふらふらと彷徨っている構成となっており、見返してみても「多分こうじゃないかなあ?」と思うのが精一杯だろう。考察する趣味が無ければ駄作にもなり得るが、謎解きや女優同士のポルノシーンに興味のある方にはおすすめしたい。

戯言(ネタバレ含む)
 あれやこれやと考察しても記録すらしなければ、それはいつしか記憶の片隅からも消え去ってしまう。それはなんだか寂しく、勿体なくもあるので手短に個人的な追記を残しておく。

 この映画を語る記事を見ると、先述したように夢と現実がキーワードとして登場する。演出の方法からしても、それは間違いないのだろう。しかしそれでは面白くない。というよりも、何もかもを夢と決めつけてしまうのも悔しいのだ。 ジャケットからしてもベティあるいはダイアンが主人公で、彼女の夢と現実がこの物語なのだと言われている。だが、私はあえてカミーラの夢と現実こそがこの物語なのだと思いたい。

 時系列で言えば前半と後半は逆で、夢破れた生活を描いた現実と夢を叶えた世界。一人の田舎娘の哀しい人生を、彼女の視点で描ききったものとなる。そこまでは私も同意しているが、捻くれ者だから納得しない。「これはダイアンを死なせてしまったカミーラの懺悔なのだ!」と断言したい。まあ断言したいだけでこれが正解ですよと言い切るつもりもないのだけれど。

 こじつけではあるものの、そう断言したい理由はいくつかある。まず冒頭のベッド。ここでは誰も写らない。誰かが寝ているだけである。全てのシーンを見た上で改めて見ると、「これは夢の暗示だ。ここで眠っているのはダイアンだ」となる。しかし彼女だと確信を抱かせるだけのものはない(ダンスのシーンからは目を背けつつ……)。

 他にもとある人物とカミーラが唇を重ねるシーン。これは彼女がダイアンのような女性を好んでいるというヒントだと考える。それに死体を見て取り乱したシーンは、かつて愛していた女性の死体を目にしてしまったからこそのパニックだと判断したい。どうも訳が分からなくなってきたので、個人的な解釈に基づく展開を以下に記そう。

 カミーラがダイアンと出会う(その出会い自体は描かれていないものとする)。カミーラはダイアンのことを好んでいたが、本気では無かった。あろうことかカミーラはダイアンを置いて結婚を決意し、目の前で他の子と接吻をしてしまう。そのことにダイアンは酷く傷付き、どうせ結ばれないのならとカミーラの殺害を決意する。

 しかし殺害は失敗(冒頭の事故)してしまい、カミーラは生き延びる。カミーラは記憶を失ってしまったが、最愛の女性とそっくりなベティに惹かれる。彼女との蜜月を堪能しつつも自分の正体が気になり、二人は例の家へと忍び込む。そこはかつてカミーラがダイアンと共に過ごしていた家で、カミーラを殺してしまったと考えていたダイアンは自ら命を絶っていた。

 ダイアンの死体を見たカミーラは全てを思い出し、過去の自分がしでかした振る舞いがフラッシュバック(ダイアンの夢だとされている全てのシーン)する。何もかも思い出してしまったが故にカミーラの頭は後悔に嘖まれるようになり、毎夜悪夢に悩まされることとなる……。

 ……という展開だったらどうだろうか。「じゃあこのシーンは?」「この行動は何の意味があるの?」と疑問を抱く者も居るだろう。しかし口を噤むべきだろう。私は捻くれているだけであり、そこまで深く考察していない。こうだったら面白いかもしれない、という安直な発想のもとで生まれたのがこの解釈である。できれば与太話の一つとして楽しんで欲しい。畳む

〔 1725文字 〕 編集

原題:The Last Emperor
163分

 清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀がどんな生き方をしたのか。また、どう去って行ったのか。壮大な歴史を壮大なスケールで描いた歴史映画。とはいえ歴史をそのまま表現したノンフィクションではなく、映画としての魅力が増す為の創作が随所に練り込まれている。どこがどう脚色されているのかは歴史に明るくなければ分かりにくいだろう。しかし登場人物が終始英語を話しているというのはどうも違和感が強く、なんとも複雑な心境になってしまう。これといって派手などんでん返しや演出も少なく、ただただ壮大で偉大な世界観に圧倒される。どこがどう面白いと伝えるのは難しいが、もし誰かに勧めるとしたら「とにかく凄い」の一言に尽きる。

〔 330文字 〕 編集

原題:Awakenings
121分

 いつも通りの日常が永遠に続くとは限らない。ふとした拍子に環境が変わることもあれば、自分自身が変化してしまうこともある。本作に登場するのは、病気によって日常が失われた患者と医者達だ。主人公はこれまで研究に没頭していた医者だったが、臨床医として勤務することになる。戸惑いながらも患者を診ている内に、研究熱心な性格からか特定の患者に共通した反応があることに気付く。様々な方法を実践し、実際に効果も出始める……。舞台やテーマからすれば退屈な展開が続きそうなものだが、主人公の静かな変化と患者の劇的な変化で飽きずに鑑賞できる。切らない(血の出ない)医療物を探している方がいれば、この作品をおすすめしたい。

〔 325文字 〕 編集

原題:Die Hard
131分

 パーティーに参加する予定だった刑事が悲惨な目に遭うアクション映画。武器も揃えた犯罪者集団と刑事一人ではどう足掻いても勝てっこないが、不運にもその刑事は常識が通じない相手だった。うっかり危ない目にも遭うが、主人公は持ち前のセンスでどうにか切り抜ける。その姿は逞しく、あまりにも強い。後にシリーズ化されるだけあって一方的な強さを見せつけるだけではなく、意外にも丁寧な伏線が用意されている。アクション映画の面白さとストーリーの面白さがきっちり両立されていて、爽快感を味わいたい方には手放しでおすすめできるだろう。強いて言えば一部の方々は国民の命を守る意識が薄く、何の為に存在するのかと疑問が残る箇所もある。その辺りについては、爽快感からはほど遠いかもしれない。#[ダイ・ハードシリーズ]

〔 366文字 〕 編集

114分

 ちょっとした切り傷や擦り傷程度であれば、大抵の人は軽く水洗いをして放置することも多い。しかし運が悪いと細菌に感染してしまう場合もある。身近にあって死亡率も高い破傷風。この感染症の恐怖を教えてくれるのがこの作品だ。映画を通して観れば、確かに恐ろしさも人間の弱さも描かれている。ところがホラー要素を重視しすぎたのか、色々と理不尽な(あるいはご都合主義とでもいうか)描写も見受けられる。ストレスによるパニックを表現するための発狂は問題ないが、破傷風の患者をあの病室に入れるのは意味が分からない。誰も破傷風について詳しくないという想定で撮られていれば、そういう時代だったのかもしれないとは理解できる。けれども作中で音と光に対する影響が語られている以上、納得できる者は居やしないだろう。驚くような展開はなく、先述した通りで粗もある。それでも視聴者を引き込む力はあり、機会があれば観て欲しい一本だ。

〔 405文字 〕 編集

原題:Shutter Island
138分

 連邦保安官の主人公はある人物を探しており、別の名目で島を訪れる。なにやら色々と怪しい場所で妙な者達と邂逅しながらもどうにか捜査を進めるのだが……。捜査自体も裏の目的も同時に進行し、そこまで派手さはないものの次々と様々な出来事が起こる。中にもラストへと繋がる演出の数々はそれが何を表しているのかと考えさせられる。しかしその演出が過剰すぎるせいか、真実を理解しやすくもなっていた。それにこういった映画では付き物で、見た瞬間に何もかも理解してしまうようなコピーもご丁寧に添えられている。面白いが、色々と残念な印象ばかりが残ってしまう一作だった。

〔 306文字 〕 編集

原題:The Commuter
105分

 いつも通りの日常を送り、いつも通りの電車に乗る。そんな日々が急に終わりきな臭い出来事に巻き込まれてしまう。主演がリーアム・ニーソンということで評価は甘め。そもそもよほどのことがなければ名作か佳作。会社をクビになってから大金が貰えるとなれば、主人公のような行動をとってしまうのもおかしくはない。誰が重要な人物なのか、という推理要素は少しあるもののそこまで難しくない。要注意人物とミスリードさせたい人物はさらに分かりやすく、やっぱり売りはアクション。しかしアクションは少なめで、やや消化不良か。推理要素とアクションが欲しい人の欲求には応えてくれるだろう。

〔 309文字 〕 編集

原題:곤지암
94分

 曰く付きの精神病院跡地で生配信をして視聴者数を稼ごう! という現代ならではのストーリー。もちろん彼らは怪奇現象に襲われる。怖いか怖くないかと言われたら確かに怖い。しかし残念ながらどれもこれも予定調和のままで、よく言えば王道的な展開。悪く言えばありきたりな展開が続く。せっかくのPOV形式も生配信というスタイルも味付け程度にしかなっておらず、色々と勿体ない。展開としてのホラー要素は物足りないが、SEや視覚的なホラー要素は強い。

〔 232文字 〕 編集

原題:Click
107分

 多くの人は楽を望み、時には思い悩み後悔する。そんな人としての良い面から悪い面までうまく表現したのがこの作品だろう。主人公が手にするリモコンは時間を早めたり止めたりできる。しかし過去を振り返ることはできるが、時間を巻き戻して選択をやり直すことだけはできない。それと返品ができない。これだけならそう苦労しないようにも見えるのだが、二つの欠点が主人公を苦しめていく。終盤に掛けては辛い展開ばかりかもしれないが、コメディ要素のおかげで最後まで観ていられるだろう。もしも昨日が選べたら、君はリモコンを使う?

〔 275文字 〕 編集

原題:Overdrive
94分

 高級クラシックカーを盗む兄弟が繰り広げるアクション物。彼らがやっている行為は強盗でしかないが、意外とそれなりに体術にも優れていたり、荒っぽいだけかと思いきや手口が鮮やかだったりと感心しそうになる。ただのクライムアクションかと思えば伏線もあり、そのままぼんやり観ていたら思いがけない展開もあるかもしれない。モチーフがモチーフなだけに作中でも様々なクラシックカーが登場する。車好きでアクションも好きな人は一度観ておこう。

〔 234文字 〕 編集

原題:Taken 3
109分

 うっかり三作目にまで到達してしまった相変わらずの爽快アクション。これまでの感想を観たら分かる通り、実は感想らしい感想を書いていない。それというのもアクションが中心すぎて、ストーリーに触れすぎると展開や伏線をあまり楽しめなくなるせいだろう。冒頭がこうで、途中がこうで……と書いてしまえば、アクションを観るだけになる可能性だってある。相変わらずリーアム・ニーソンは魅力的で、サブキャラの魅力を含めて個人的には満足できた。続編は作れそうなものの、さすがに主演の年齢がネックでアクションも不安が残る。続編は観たいが、ここで終わっても仕方ないだろう。#[96時間シリーズ]

〔 311文字 〕 編集

原題:Taken 2
91分

 前作で殺した相手の家族から命を狙われるけどやっぱり圧倒的な活躍を見せちゃう爽快アクション。前作は娘で今作は元妻が拉致されてしまうのだから、なかなかついてない。個人的な好みで名作扱いにしているものの、やってることは大して代わり映えしない。つまり前作が気に入って、同じノリを期待している人向けの作品となる。逆に前作の時点で物足りなかった人には向いていない。そういう人からすれば、この作品は佳作どころか迷作にもなり得る。しかし私はこれでいい。リーアム・ニーソンの活躍を観たいのだから。#[96時間シリーズ]

〔 278文字 〕 編集

原題:Taken
93分

 娘を愛する元CIA工作員が圧倒的な力で何とかする爽快アクション。こう書いてしまうとスティーヴン・セガールをイメージしてしまうが、彼ほど圧倒的ではない。しかしたとえ絶望的な状況になっても「こいつなら大丈夫だろ」と思える。アクション映画として、そして主演のリーアム・ニーソンが好きな私からすれば間違いなく迷作。残念ながら評価は割れてしまっているが、続編が二作も出ていることを考えれば好きな人は好きな作品であるに違いない。強いおっさんが好きな人は是非観て欲しい。#[96時間シリーズ]

〔 259文字 〕 編集

原題:La habitación de Fermat
88分

 タイトルと原題の違いで疑問を抱いた方もいると思う。そしてその疑問はきっと正解へと繋がる。こちらの映画はキューブシリーズのようなタイトルだが、全く関係ない。原題を直訳すればフェルマーの部屋で、内容もそのまま。フェルマーに招待された者たちが小中学生レベルのような問題をひたすら解かされるというもの。問題はそこまで難しくもなく、グロもなければキューブらしさのかけらもない。しかしシナリオ自体はそう悪くなく、紅一点のヒロインが気に入れば暇潰しに観るのもいいだろう。

〔 270文字 〕 編集

原題:Mein Blind Date mit dem Leben
111分

 人は夢を抱く。その夢を実現すべく神頼みをしたり努力をしたり……とにかく前を向いて一歩進む。しかしもしその目が見えなくなったら。人の顔色を窺い、様々な場所へと動き回る必要のある仕事であったなら。この作品は、ホテルマンを目指していたが視力の95%を失ってしまった者の実話をもとにした物語である。これだけでも困難が伴うが、その男は自身の抱える問題を隠したままホテルマンになってしまう。人々の優しさや努力する姿の美しさは、視聴者の視界をも奪ってしまうかもしれない。

〔 292文字 〕 編集

原題:2001: A Space Odyssey
141分

 当時の人々にとって宇宙は決して身近な存在ではないだろう。宇宙がどんなものであるかもわからず、ただぼんやりとしたイメージを抱いていたのではなかろうか。しかしこの映画は恐ろしい。誰しもが想像する宇宙というイメージを魅力的な映像で表現している。序盤は退屈……いや、もしかすると終始退屈に感じるかもしれない。しかし考察する趣味を持ち、映像に惹かれて見始めた者であればとんでもない傑作だろう。とはいえ気軽には薦めにくく、人を選ぶ作品なのも間違いない。

〔 262文字 〕 編集

原題:Cube 2: Hypercube
95分

 キューブの続編だが、正直に言うとこちらは観なくてもいい。キューブの何がよかったかといえば、それは演出とキューブの仕掛けだろう。しかしこちらは演出も手堅くまとまっているだけで面白みに欠ける。キューブの仕掛けもいまいちで、非現実的な要素が加わるのは構わないが、その要素に頼りすぎていた。グロ要素も殆ど無く、むしろこれがキューブを作る為の練習作だったと思いたい。映画として駄作と言い切るほどではない。けれどもキューブを好む層向けの作品とは言いがたい。#キューブシリーズ

〔 265文字 〕 編集

原題:Cube
90分

 目を覚ますとそこは見知らぬ立方体の部屋。何故そこにいるのか。誰がどんな目的でこんな空間を用意したのか。そういった疑問は最後まで解決されないが、誘拐と見知らぬ相手との協力。そして死の恐怖といった要素は後々の作品へと大きな影響を与えた。もはや改めて紹介する必要はないが、密室ホラー(?)の原点としてはよく出来ている。謎を残したまま終わるのもホラーだからこそといえる。決して投げっぱなしではない。#[キューブシリーズ]

〔 225文字 〕 編集

158分

 人類滅亡を描いたパニック映画。マヤ、ノアの箱舟といった言葉でわくわくする人にはちょうどいい映画ではなかろうか。なるべく現実的に、起こりうる展開を描いた作品のようだが私には他の人類滅亡物との違いが今ひとつ分からなかった。すごくきれいですごく壮大。観終わった時の感想はそれだけだった気がする。ただ違いを理解できなかっただけで、映画として面白くなかったかといえばそうではない。十分に楽しめたし、尺が長い割には最後まで視聴できた。もっと様々な知識を持った人からすれば、より素晴らしい映画だと思えるのかもしれない。

〔 264文字 〕 編集

原題: Dawn of the Dead
127分

 言わずと知れたロメロのホラー映画。現在主流となっているゾンビの生態や特徴は本作で確定したと言っても過言ではない……が、ゾンビ自体の設定はもっと古くから存在する。昨今のゾンビ映画と比較するとそこまでの恐怖感は無いものの、人類の無力さや絶望感は味わえる。また、あるゾンビの行動原理について考えるのも実に面白い。

〔 185文字 〕 編集

原題: 127 Hours
94分

 岩に腕を挟まれたまま、飲まず食わずで生き延びるという実話を元にした話。引き込まれて同じ状況に陥ったらと恐怖する感情になり、終盤のグロ描写では目を背けたくなる。ホラー映画やスプラッタ映画を好んで観る趣味だが、本作終盤でのグロ描写は特に痛々しい。映画自体は非常に良いのだが、その描写に迫力がありすぎて薦めにくいのが難点か。

〔 185文字 〕 編集

原題: Lights Out
81分

 暗闇でしか姿を維持できない化け物に怯えるホラー映画。元は動画共有サイトで公開されている短編作品であり、下手に尺を伸ばしても蛇足にしかならない逆境を見事乗り越えている。日常と状況の変化、設定の掘り下げによって世界観は深まり、闇が広がる恐怖を味わえた。ただ、ベタではあるがオチの恐怖(化け物にも見える影がちらつく等)も欲しかった。

〔 191文字 〕 編集

原題: The Birds
119分

 襲いかかる鳥の恐怖に怯え、逃げ惑う姿を描いたパニック映画。メイン寄りの人物には鳥が苛立つ(仲間を食べていたり雑に扱われたり等)理由もあるが、襲う理由が明確には明かされていない。ただ、理由もなく襲いかかる方がより恐怖を感じる。ホラーとしてはそれでいい。人の弱さと動物の強さ。身近で起こりえるかもしれない恐怖は背筋を冷たくさせる。

〔 186文字 〕 編集

原題: Memoirs of an Invisible Man
99分

 偶然にも事故に巻き込まれてしまった主人公が透明人間となって苦労する話。透明人間に逃走劇という題材が組み合わさっただけで、一風変わった内容に仕上がっている。その体を悪用しようともせずに、ただ人であろうとする姿は観ていて色々と考えさせられるだろう。透明人間になって悪さをしたいと考える方に、是非一度は観て貰いたい。

〔 198文字 〕 編集

原題: THE EXORCIST
132分

 言わずと知れたオカルト映画。結局悪魔は何だったのか、何故彼女なのか。そんな疑問が浮かんでも悪魔だからとしか言えない。様々な謎は残るが、悪魔を題材にした映画としては満足できる。しかし動(恐怖や激しいシーン)が少なく静の場面が多い作りは人を選ぶだろう。尺の長さもあり、怖い映画を観たいだけの人には期待外れかもしれない。

〔 188文字 〕 編集

原題: Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb
93分

 スタンリー・キューブリックが描くブラックコメディ。登場人物はどいつもこいつも狂っていて、自分のことしか考えていない。こうしたい。こうなって欲しい。こういう時はこうするべきだ。彼らのそんな考えが妙に絡み合った結果、人類にとっては酷い結末を迎える。あくまでコメディだが、人類が滅亡するとしたら案外キッカケはこんなものかもしれない。

〔 284文字 〕 編集

原題: John Wick
101分

 引退した殺し屋が飼い犬を殺されたのがきっかけで復讐をする。字面だけだと癇癪持ちが暴走するだけの展開に見えるが、人を殺し始める動機付けはきちんとある。愛があって命の重みを知っているからこそ主人公は復讐をした。決して癇癪持ちでは無く、むしろ心が広い。ほぼアクションシーンしかないという清々しいまでのアクション映画だった。#[ジョン・ウィックシリーズ]

〔 203文字 〕 編集

原題:San Andreas
114分

 恐ろしく優秀なレスキュー隊員の主人公が活躍する映画。家族が大災害に巻き込まれてしまい、救う為に次々と乗り物を強奪しながら何とかするという内容で、災害の恐怖と強い主人公の王道ストーリーが待っている。主人公が抱えていたトラウマを克服するシーンもあり、ただのパニック映画では終わらないデキだった。

〔 179文字 〕 編集

原題: True Memoirs of an International Assassin
98分

 小説家が命を狙われる羽目になってしまうというとんでもない内容。彼らの行動は現実離れしていて、にわかには信じがたい。しかし、細部の人物設定や分かりやすくも丁寧な伏線が生きている。現実ならあり得ないと断言出来るシーンにも、この人物なら出来るかもしれないと思える説得力がある。王道で馬鹿らしくもありながら、十分に楽しめる娯楽映画だった。

〔 227文字 〕 編集

原題: Memento
113分

 新しい記憶が10分程度しか保てない男がある男を殺す。何故その男を殺したのかという経緯を逆さまの時系列から辿り、徐々に謎が解けていく構成は実に見事。主人公のような状況に至りたいとまでは思わないが、記憶を消してもう一度最初から観てみたいとは思えた。伏線やミスリードを学べる良い映画だ。

〔 164文字 〕 編集

■全文検索:

複合検索窓に切り替える

■複合検索:

  • 投稿者名:
  • 投稿年月:
  • #タグ:
  • カテゴリ:
  • 出力順序:

■説明

 洋画中心。最低でも週に一本はレビューするつもりで定期更新。

 レビューを書き始める前に観た映画の一部リストはこちら。好みの参考にどうぞ。趣味が合う人は名作を、趣味が合わない人は迷作をチェックすると好きな映画が見つかるかもしれません。


にほんブログ村 映画ブログへ

編集

■最近の投稿:

▼現在の表示条件での投稿総数:

111件